【西暦2307年】名無し氏



西暦2307年、ソレスタルビーイングによる「武力による戦争の根絶」という宣言から翌日、ゼノン・ティーゲルは仏頂面で歩いていた。
「艦長、司令のお話はやはり」
「ああ、フレイ君の予想は当たっているよ」
「ソレスタルビーイング、『天上人』…ですか」
「―――彼らと行動を共にし、その活動を支援せよ―――か。コズミック・イラの時といい、まったく何を考えているのか分からんよ」
「得体の知れない組織ですからね」
「……すまんな。本当なら半舷休息中のところを秘書の真似事などさせて」
「構いませんよ。こういうのも新鮮ですし」
ゼノンと一緒に歩いている若い女性はフレイ・リーゼンシュタイン。彼が指揮を執る艦でオペレーターを務める彼女についてきてもらったのは、この任務に対する愚痴をすぐにでも誰かに聞いてもらいたかったから。一緒に来てくれるなら誰でも良かった。…などとは間違っても言えないが


「武力による戦争の根絶とは随分大きく出たものですね」
「フレイ君、彼らの様な者を普通は何というか分かるかね」
「いえ、何と」
「『世界征服を企む悪の秘密結社』、と言う」
「ふふっ。それは随分厳しいですね」
「暴力で自らの考えを押し通そうという連中だからな。…これは司令の受け売りだがね」
「御自分の立場を考えた発言でしょうか」
「それだけ不満なのだよ。我々以上に」
「しかし、私たちと彼らのどこに違いはあるのでしょう」
「どういう意味かね」
「宇宙世紀、未来世紀、アフターコロニー、アフターウォー、コズミック・イラ、正暦。私たちが今まで行ってきた戦いと、彼らのやろうとしている戦いはどう違うのでしょうか」
「ふむ…だが我々の戦いなど歴史の流れをただ後押ししているに過ぎん。突き詰めれば我々が介入などしなくとも歴史は変わらずに進んでいくだろう」


「世界の全てを敵に回して本当に勝つつもりでしょうか」
「間違いなく彼ら、ソレスタルビーイングは本気だろう。だからこそ秘密裏に事を進めずに、自らの存在をアピールしたのだろう」
「まるでヒイロ君たちみたいですね」
「あの少年たちはある意味負けるつもりで戦っていた。自分たちの戦いは問題提起、勝敗は二の次だというところだろうな」
「ソレスタルビーイングは」
「単なる問題提起ではすまんだろう。危ういとはいえ拮抗した世界のバランスを無理やり崩したのだ……どこに向かうのだろうな、この世界は」
いつの間にか、自分の愚痴を聞いてもらうために彼女についてきてもらったというのに、自分が彼女の疑問に答えている。
確かに彼女の疑問は自らも感じていたもの。思考の迷路にはまる自問自答よりも、他の人間から問いかけられる方が自分なりの答えを導き出せる事があるのにゼノンは気がついた。
「どういう状況になるのか分からんが、我々は任務に全力を尽くすだけだな」
「はい」

西暦2307年、新たな戦いが始まる…



こんなの書いておいてなんだけど、結構期待しているガンダム00
あと、こういう会話をさせるなら何となくゼノンとフレイかなって思った