【シェルド主役で書いてみた】 185氏



「腕はいいんだが……パイロットの中で、一人だけ連携が取れないというのもな」

それがマーク隊長の、僕への評価だ。ソニア艦長も同じ事を言っていた。
しょうがないんだ。僕は……『普通の人間』だから。


「おっはようファンネル君!」
「その言い方、勘弁してくださいっ!」

ジュナスは泣いているけど、クレアといるときはいつも楽しそうだ。
僕は笑っているけど、楽しそうに見えてるだろうか?
心の底で嘘をついてるって、みんなはとっくに分かってて、気付いてないふりをしてるんだろうか?


「私が行くモン!お兄ちゃんはどいててよ!」

出撃の時間になると、いつもこの子を止めるのが大変だ。
ショウがやってるからって、女の子を戦場に出していいってわけじゃない。

「ごめんよ、いつも……。おとなしくしててよ、ねっ?」
「私だってみんなと一緒に時が見えるんだから!お兄ちゃんより強いのよ!」

コックピットでもがいているカチュアを抱き上げて、モビルスーツの足下にまで下ろす。
なだめるのはショウの仕事だ。僕が言ってカチュアが泣きやんだことは、一度もない。

「シェルドさん、ごめんなさい」
「いいんだよ。僕がしっかりしないから……」

僕が、ニュータイプだったら。
ショウはモビルスーツに乗らなくてもよかったんだ。艦に残ってカチュアと遊んでいられたのに。

「ねえ、シェルドさん。時が見えないって……どんな感じなんですか?」

僕は心が凍るような気がした。
子供の言うことだ。ショウだって悪気があったわけじゃない。
けど、ショウは僕のことを怖がったかもしれない。僕の凍り付いた心を感じ取って。

戦闘は、正直言ってみんなについていくのがやっとだった。
苦戦しているわけじゃない。艦のクルーのほとんどをニュータイプで固めたこの部隊は、
ひとつの戦艦としては無敵に近いだろう。使っている機体だってガンダムばかりだ。
最近は敵の弾が当たったことも、味方が射撃を外したためしもない。例外は僕だけだ。

「お疲れ様、ラナロウ。今日も大活躍だったね」
「ああ、お前がサポートしてくれてるからな。ずいぶん撃墜数譲ってもらってるけど、本当にいいのか?」

僕は気にしてないから。
そう答えると、僕と同じ立場から撃墜王に躍り出た友人に、そっと声をかけてみる。

「なあ、ラナロウ…… どうして強化手術なんか受けたんだ?」

さっきショウが僕に言ったことと同じだと気付いたのは、口から出た後だった。
ラナロウは、すぐに怒ったりはしなかった。
気にしていないのかもしれないし、本当は怒っているのかもしれない。
僕が人の心が分からない奴だから何も言わないだけかもしれない。
本当はどうなのかは、僕には分からない。

「腕じゃ負けてないんだからな。ニュータイプかどうかだけで負けるなんて、くやしいだろ?」
「そうだね……」

僕も強化手術を受けてみようか。そうすればみんなと同じになれるんだろうか。
少なくとも、これ以上ショウをモビルスーツに乗せなくてもよくなるだろうけど……。

「な、それよりな」
「えっ?」

僕が振り向くと、ラナロウはさっきの話の時より、もっと近づいてくる。

「エリスのこと、どうすんだよ? 向こうは気付いてるっていったろ?
 あきらめるならあきらめるでさっさと決めてくれよ……って、サエンが言ってたぜ」
「そんな……。困るよ……」

向こうは、気付いてる……か……。
ショウの言ったことが頭の中で繰り返される。
誰かに頭の中を覗かれていると気付いていないのは、この艦では僕しかいない。
『この分かり方が無意識のうちに反感になる。これがオールドタイプということなのか』
まるで、悪役の言う台詞だよね……。
でもそんなことを言われたら、ニュータイプに反感を持つこと自体が、いけないことみたいに思えてくる。
僕は、普通の人間なのに……。