【贋作・罪と罰】 4296氏



「イワンを騙すのは簡単だったでしょうね。そもそも組織のリーダーに向かない人物だ。反宇宙連邦政府軍の活動意義を上手く利用し、彼に戦争を仕掛けさせた」
「…」
「ジェフリー博士については、何と言ったんですか?論文上でしか存在しなかった強化人間を、実際に手術・研究する為の方法があるとでも言ったのですか?」
「…」
僕の胸倉を、奴の手が掴んでいる。
その手が震えている。
その震えは、何のためだ。
「…どちらにしても、貴方には容易いことだった。娘の為ならば、何でもするつもりだったから」
次の瞬間、ゼノンは、懐から拳銃を取り出した。
そのまま銃を後方へと向けると、そのままテーブルごとフラッシュメモリを撃ち抜いた。
少し、驚く。
「…」
「記録媒介はもう残っていない。私に何を言わせたかったのか知らんが、易々とテーブルの上になんぞ置くべきではなかったな」
淡々と言っている。
ふん。
アンタが物事を淡々と言う時は、内心焦っている証拠だ。
「ジャーナリスト風情が、首を突っ込むべきではなかったな」
吐き捨てるように言う。
まだ分かっていない。
僕が本当のジャーナリストだと思って疑っていない。
「どこまで知っている」
ゼノンはそう言うと、銃を僕に向けた。
甘いよ。
さっさと撃ち殺すべきなんだ。
それをしないのは、自分の娘に関わることだからか。
そんなに娘を溺愛していたのなら、
どうして、他の愛し方を、知ろうとしなかったんだ。
「娘は、どこだ」
「ジェフリー博士は、自分の研究が、別の用途で使われることを知った」
「黙れ!」
「人類の明日のための研究が、人の破壊へと繋がっていることに、戦慄した…」