第2話「光なき街に怒りが燃えた!! さらばシャッフル同盟」



「なあ、腹減らねぇか?」
バギーの運転をしながら、ラナロウは助手席に座るアキラに訊ねた。
後部座席にはレイチェルが乗っている。このバギーは、ブラッド達が持っていた車だ。車体に大きな風穴が空いていたが、エンジンは無傷だったらしく、修理してあった。
「DG細胞で再生したら楽なのにな」
ラナロウがぼやくと、レイチェルが口を開いた。
「ダメだよ。だって、DG細胞の感染は未知数だもん」
DG細胞の感染、それは全くの謎だった。人類が絶滅しかかったところで突如、その感染拡大が止まったのである。
人類も地球の一部、地球に害が及ばない程度に減ったので満足したのかもしれない。
だが、感染者の中から異常な強者が発生した。ゾンビ兵にもならなかったこの連中は、新たな人類として世界に君臨していた。
「なあ、アキラ。あんたはどんな目的があって、旅をしてるんだ?」
「ある人を捜している。とても大切な人だ」
「へぇ〜そりゃまた、どうしていなくなっちまったんだ?」
「・・・・・・・・・・・」
アキラは答えなかった。腕を組み、ひたすら無言を貫いている。
「見て!街があるよ!」
レイチェルが前方を指さした。
「ありがてぇ。何か食い物にありつけるかも」
大きな街だった。あれほどの規模なら、人もたくさんいるだろう。人がたくさん集まる所には、仕事もある。
アキラなら、盗賊から身を守る用心棒でもできるだろう。
ラナロウは全速で街に向かった。

「おいおい、もっと良く狙いなよ、ブラザー♪」
ニードルはチラリとバイス・シュートの方に視線を向けると、ボウガンを構えなおした。
前方には頭にリンゴを載せた男が木の柱に縛り付けられていた。
「ヒャヒャヒャヒャヒャ、バーカ。俺様の腕はウィリアム・テル以上だぜ」
「せめて、那須与一って言いなよ、いかにも学があるようでカッコいいじゃん♪」
ニードルは、引き金を引いた。矢が飛び出し、男の胸に突き刺さった。
「父ちゃ〜ん!」
男の息子だろう。少年が泣き喚いた。
「チッ、はずしたか」
「HAHAHA!やっぱり那須与一は無理だったねぇ♪」
「うっせぇ!あいつは背が高いからはずしちまったんだよ。おい、今度はそこのガキを縛り付けろ!」
モヒカンどもが泣き喚く少年を無理矢理縛り付けた。頭にリンゴを載せたが、頭を動かすのでうまく載らない。
「このクソガキが!」
ニードルは少年の顔を殴りつけた。合計2発、念のために腹にも蹴りを入れておく。下手をすると肋骨が折れたかもしれない。
恐怖でおとなしくなった少年に満足したのか、ニードルは再び距離をとると、ボウガンを構えた。
「これで大丈夫だ。今度は外さねえぜ」
再び矢が飛ぶ。今度は狙いを損なわず、リンゴを貫いた。
「ヒャハハハハ!見ろよ。やっぱり俺様の腕は確かだぜ」
ニードルが満足していると、村長が土下座して懇願した。
「お願いします。もうお止めください。我々が何をしたというのです。キング様への貢ぎ物はきっちりと差し出しているではありませんか」
「何をしただぁ?ヒャッハハハー!バーカ!そんなもんは俺様の気分次第よ。貴様らの生き死には全部俺様が決める。反抗は許さん」
「そんな・・・・・・あなた方に良心は無いのですか?」
「良心?何だそりゃ?雑魚の言い訳はやめてよね、そんなもんでお前が俺様に勝てるわけ無いだろ。なに、心配は無用だ。君達のような弱っちい奴隷には奴隷にしかできないことがある・・・・・・おいっ!」
「どうしたんだい、ニードルよ〜♪」
「気分が悪くなった。見せしめにあれをやるぞ」
「オッケー♪それじゃ、ドク・ダームを呼ぼうかねえ」

数分後、鉄柵が用意され、その中にドク・ダームと25人の村民たちが集められた。
「ケェーケッケッケ!俺の出番が来たぜ!」
ドク・ダームは両手に装備した鉄の爪を構えた。ニードルが応援する。
「おい!今日は新記録を狙えよ!」
「クケケケケ!あったり前よ!」
ドク・ダームは爪を舐めながら不敵に応えた。
「斬る斬るぅぅぅ〜!!斬って斬って斬りまくるぜぇぇぇぇぇッ!!」
突如、ドク・ダームの中で種のような物が弾けたような気がした。そして、ドク・ダームの演舞が始まった。流れるような動作で村民を一人、また一人と両手両足を斬り裂いてダルマにしていく。男、女、子供、老人。すべては主演ドク・ダームの為の萌えないゴミでしかなかった。
「あ〜やっぱ、意味不明の力でゴミをダルマにするのって気持ちいィィィィ!!」
すべてが終わったとき、辺りには、呻き苦しみながら死を迎えるダルマが25体転がっているだけだった。
「おいおい、もう終わりかよ。ダルマはダルマらしく起きあがってみろっての!それとも助けが欲しいのか?」
ダルマの一人が懸命に首を縦に動かした。
「ダメでェェェェェ――す!ダルマに助けは来ませ――ん!」
わずかな希望が潰えたのか、男は息絶えた。それを見たドク・ダームは地団駄を踏んだ。
「うぁぁぁぁッ!つまんねぇぇぇぇぇぇ!もう死んだのかよ!!」
あっさり殺さずにダルマの苦しむ姿が見たかったドク・ダームは物足りなかった。
ちなみにここは、大陸である。西太后なんて関係ないし、特に深い意味はない。
「大丈夫だぜ。ドク・ダーム」
ニードルが笑って言った。
「ちょうど2分。新記録更新だ」
「マジでぇぇぇぇ?よっしゃぁぁぁぁぁぁ!」
まさにフリーダム。ドク・ダームは、その正体を見事に具現化していた。

「ひどい・・・・・・」
レイチェルは思わず口を抑えた。
「しょうがねぇだろ。意味不明の力が発動しない奴は家畜なんだよ。それがフリーダムの世界なんだ」
「そんなふざけた論理を俺は認めない!二人はここで待っていろ」
アキラは飛びだしていった。
「行っちゃったね」
「ああ、今回もここから眺めて解説させられるんだろうな」

「おい、貴様ら!」
アキラは3人に呼びかけた。
「何だ〜てめえは〜?」
パキポキと拳を鳴らしながら、アキラは警告した。
「今から貴様らに選ばせてやる。一つ目はあっさり死ぬ。もう一つは苦しんで死ぬ。さあ、好きな方を選べ」
「ふざけんなよ〜。それじゃ選択になってねえだろうがよぅ〜♪」
「女神様がそう言ったんだ。恨むなら女神様を恨め。決めるのはお前らだ。人が最もつらいのは、選択する道すら閉ざされてしまうことだそうだからな」
「何が女神だ!ペテンの悪魔じゃねえかよぉぉぉぉ!」
三人は一斉に右手を構えた。その手甲部に紋章が浮かび上がる。
「これは・・・!」
「「「そう、これこそが四天王の我らに与えられた紋章!!」」」
「クイーン・ザ・スペード!」
ニードルがシャッフル・スペードを呼びだし、乗り込んだ。
「ジャック・イン・ダイヤ♪」
バイス・シュートがシャッフル・ダイヤを呼びだす。
「クラブ・エェェェェェス!!」
ドク・ダームがシャッフル・クラブに乗った。
「「「我らシャッフル四天王!!!」」」
「ならば、こちらも!でろぉぉぉ――!ガンダァ――ム!!」
アキラがシャイニングガンダムに乗り込むと、モビルトレース・システムが起動した。
「ふんッ!ハァッ!とりゃぁぁぁぁ!」
マニピュレーター、関節部とのトレースシステムの連動を確認し、ファイティングポーズをとった。
「さあ、来い!」
ニードルが嘲笑した。
「ヒャッハッハッハッハ!驚くのはこれからだぜ。バイス!ドク・ダーム!あれを仕掛けるぞ!」
「オッケー♪」
「承知ぃぃぃぃ!」
3体が更に変形、いや、変身した。DG細胞によるものであることは明らかだ。
そして変身したその姿とは?
ニードル機はZガンダムになった。よく見ると細部が違う。これは――
「Zプラスね。型式番号MSZ−006C1[Bst]通称”ハミングバード”。宇宙専用に造られたC1型だけど、大気圏での行動も可能」
レイチェルが自慢げに解説した。
「よく知ってるな」
「そりゃ、ミリタリーなファンにも満足できるセンチネル設定だもの」
バイス機も変身を終わった。
「型式番号PMXー000メッサーラ。大出力の推進器を搭載した宇宙専用MSだけど、DG細胞で大気圏稼働も可能なように換装にしたんでしょうね」
「また、地味だか派手だかわからん機体を出してきたなあ」
そしてドク・ダームの機体は、Gジェネファンなら誰もが知っているだろう。美しく燃えるようなボディ。様式美すら感じさせるウイング。その姿はまさに不死鳥の名にふさわしい。
「「フェニックス・ガンダム!!」」
ラナロウとレイチェルが同時に叫んだ。
「まさか、こんなところでフェニックスを使うなんてね。まだ第2話だよ」
「わからん。こんなにインフレして大丈夫なのかね。まあ、デスなあれよりはマシだろうけど」
二人がぼやく間にも、3体が動き出した。
「来るか!!」
シャイニングガンダムは必殺の構えをとった。フェイスオープンし、右マニピュレーターが輝きを放つ。
「行くぞ!俺のこの手が光って唸る!」
ハミングバードがウェイブライダーに変形した。メッサーラもフェニックスも、MS形態のまま後ろに続く。
シャイニング・ガンダムへ向けて一直線に並び、急降下した。
ラナロウが吠えた。
「これは!?ジェットストリーム・アタックか!!」
「マジで?あれって、一直線に並んで被弾面積を少なくする、対空砲火の激しい対艦用の戦術でしょ?MF単機にやって意味あるの?」
「わからん。ミリタリーな作者だから、ちゃんと考えてあると思うが」
ニードルが右側のレバーを掴み、倒して前へ突きだしながら叫んだ。
「さあ、そろそろ本気を見せてやるぜ!ブースター!オンッ!」
ハミングバードのブースター・ユニットが起動した。何故か搭載されていたナビゲーターが喋った。
『ブースター・ユニット作動。エンジン臨界点までカウントスタート』
そして、同じくバイスがレバーに手をかけた。
「メッサーラァァァ!ウィイイングゥ!」
メッサーラが飛行形態に変形し、推進器を全稼働で増速すると、今までニードル機の後ろに付くことで稼いだ空気抵抗分を利用して前に出た。ちょうどハミングバードの上に位置する形になる。
「フェニックス!ウイング!!」
フェニックスガンダムも飛行形態に変形した。後方にフレアが吹き出し、その炎が不死鳥の形を生成する。同じくスリップ・ストリームを利用したフェニックス・ガンダムは、ハミングバードの下に付いた。
前後一直線に並んで急降下していた3機が、今度は上下一直線の垂直に並んで急降下した。
「おまえを!」
「倒せと♪」
「輝き叫ぶぅぅぅぅ!」
その美しい光景に、レイチェルはすっかり感心していた。
「凄い・・・・・・でも後方にいたら、排気炎とかどうすんだろ?」
「前面がオーラで包まれてるから大丈夫な設定だってさ。それを言い出したら、元ネタを叩いた方が早いって。特にフェニックス・ウイングとかさ、後方の車はやばすぎるっしょ」
「あのバカ監督も自分のネタからパクれば良かったのにね」
「無理だろ、だってバカだから」
「そうだよね、バカだし」
そして今、必殺技が激突した。
「ひぃぃぃっ殺!シャァァァァイニングゥ!」
「「「ジェットストリ――――――ム!!!」」」
「フィンガァァ─────!!!」
「「「アタァ──────ック!!!」」」
だが、シャイニングフィンガーでは、真ん中のニードルの攻撃しか防げなかった。当然のことながら、メッサーラとフェニックスによって頭部と脚部を破壊され、シャイニングガンダムは首無しの脚無しなって大地に転がった。今回はアンチDGナノマシンを注入する間もなかった為、ハミングバードも健在である。
「ヒャヒャヒャヒャヒャ!勝った!第二話にて完結!」
レイチェルとラナロウは不満を漏らした。
「また負けたの?正義のヒーローなのに弱すぎるんじゃない?意地悪だよ」
「いくら何でもアキラが可哀想だよな」
アキラは半壊したコックピットの中で倒れていた。ファイティングスーツが破れ、剥き出しの胸には、手形状の傷ができていた。
ニードルはそれをめざとく見つけた。
「およ?珍しいな。胸に手形の男か」
手形の声にアキラが反応した。
「おい、おまえら。この男を知っているか?」
アキラは写真を見せて訊ねた。
「これは!?」
「キング様じゃないの♪」
「何?おまえらのボスがこの男なのか?」
「だから何だってんだよ。てめえは今から死ぬんだろうが」
「ありがとうよ。おかげで久しぶりに思い出した。あの時の無念を!そして怒りを!もう二度と、俺は屈したりしない!ハァァァァァァァァァ!!」
シャイニングガンダムの機体が赤いオーラで包まれた。破損した箇所がみるみるうちに再生していく。肩部、腕部、脚部、頭部の装甲がオープンし、放熱性能を高める。シャイニングガンダム・スーパーモードである。
「ふん、またやる気かよ。なら、今度こそ死にな」
3機が再びジェットストリーム・アタックに入った。
「何の!俺のこの手が光って唸る!おまえを倒せと輝き叫ぶ!」
マニピュレーターから閃光が迸り、長大な光の剣を形成した。そのまま飛翔する。
「喰らえ!正義と怒りと執念の!シャァァァァイニングフィンガァァァァソォォォ────ド!!突き!突き!突きィィィ――!!」
シャイニングガンダムは、3機が縦に分かれる前にシャイニングフィンガーソードを突き刺した。
「そんな汚い手を」
「正義のヒーローが♪」
「使っていいのォォォォ?」
3機のMSは見事に一直線に貫かれて爆散した。
アキラは爆発を確認しながら呟いた。
「キング・・・・・・あいつがキングだというのか・・・・・・!?」
果たしてキングとは誰なのか?そしてアキラの過去とは?
「全然謎じゃないけどね」
「元ネタ知ってれば、すぐに予想できるしな」
黙らっしゃい。