第3話「レッド・オクトーバーを撃て!!」




「シャッフル四天王が3人もやられた!」
「胸に手形の男を捜せ!」
「手形の男は、我らキング・オブ・ハート様の軍団が討ち取るぞ!」
ハートマークの印を刻んだデスバイクが縦横無尽に駆けめぐっていた。
ここは半島全域を支配するキングからキング・オブハートの称号を名乗ることを許されたシャッフル四天王、その最後の一人が統括する街である。
モヒカンどもは苛立っていた。手形の男がこの街に入ったという情報を受けて捜索しているが、まったく見つかる気配もない。
モヒカンどもは、一旦捜索をやめ、やがて溜まり場の酒場に入った。
「おい、親父。早く酒を出せ!」
「は、はい。すぐにお出しします・・・・・・」
酒場の親父が震える手つきでモタモタしていると、モヒカンが親父を殴り飛ばした。
親父が倒れ、辺りに割れた酒瓶の破片が飛び散った。
「遅いんだよ!こっちは疲れてるんだ、早く出しやがれ!」
「オヤメなさい」
「何だと・・・・・・ハート様!?」
モヒカンが振り返ると、そこにはキング・オブ・ハートにして”鋼鉄の男”の異名を持つイワン・イワノフがいた。
「イケマセンねぇ〜。君たち、八つ当たりとは情けないですねぇ〜」
イワノフは酒場の親父を助け起こした。
「困ったことがあったら、何でもオッシャイ。私たちは搾取する資本家を倒す労働者の味方なんですからね・・・・・・ン?」
イワノフはカウンターに手を置いた。破片で指を切り、血が滲んだ。
「血・・・・・・血だ・・・・・・痛えよ──────!!!」
「ひ・・・ヒエ――!」
イワノフは親父の顔を握りつぶした。
モヒカンどもの顔が真っ青になる。
「やばい!ハート様が乱心された!血の粛清だ!」
イワノフは更にモヒカンどもを次々と襲う。イワノフが正気に戻った時、辺りは血の荒野になっていた。
「うふっ、やり過ぎちゃった。まあいいか、大粛正完了っと」

アキラはこの町のボスを探していた。数時間前からモヒカンの姿が消えていたのだ。潜伏先にラナロウとレイチェルを残し、中心の広場に来ていた。
そして、そこには手首にシャッフルの紋章を持った男がいた。
「貴様がキング・オブ・ハートか」
「おや、あなたは誰ですか?」
「俺が手形の男だと言ったらどうする?」
「それは困りましたね〜。キング様の命令で、あなたを殺さなくちゃイケナイのよ」
「ならば話は早い。さっさと始めるぞ。でろぉぉぉ――!シャァァァイニング!ガンダァ――ム!!」
「来なさい!シャッフル・ハート!」
二人はそれぞれのMFに乗った。そして、いつもの如く、シャッフル・ハートが変身した。
変身したその姿は、型式番号GAT-X303「イージスガンダム」である。その赤いMSは”鋼鉄の男”にふさわしいと言えるだろう。
「バァァァルカン!!」
「イーゲルシュテルン!!(ハリネズミ態勢!!)」
何をやってるかと言えば、シャイニングガンダムがバルカンを撃っているのである。イージスの方は敢えて説明しない。
文句はわざわざドイツ語を使ったアホに言ってくれ。ちなみにスパ厨という言葉は禁句である。
中距離での牽制が終わると、シャイニングガンダムは接近戦を挑んだ。渾身の正拳突きがイージスの腹部に命中した。
「なにぃ!?」
シャイニングガンダムのパンチはイージスの装甲によってあっさりと弾き返されていた。
「ハッハッハッハッハ、おバカさん。イージスちゃんにはフェイズシフト装甲があるのよ」
フェイズシフト装甲――魔法装甲――は、76発まで実弾攻撃に耐えることができるのだった。「それならバルカンでいいじゃん、数秒でオシャカだよ」と思われるが、事はそう簡単ではない。バルカンでは魔法が反応せず、通常の装甲として機能してしまうのだ。以前説明したリアクティブ・アーマーも初期は小銃弾に反応したそうだが、対策がされて小銃弾如きでは反応しなくなった。
「この魔法装甲は無敵よ。勝てるとすれば、キング様の流派”南方不敗”だけね。さあ〜観念しなさい」
流派”南方不敗”、それは流派”北方不敗”と対になる拳法である。ちなみに”西方不敗”とか”中央不敗”は無いと思うから安心して欲しい。
ちなみに南が乱れし時、北が現るという非常に厄介な予言があるのだが、それはスルーしよう。それが大人の対応である。ところで、どこだとは明記していないが、ここは半島である。まあ、特に深い意味はない。
「いや、全然スルーしてないじゃん。」
レイチェルの声が聞こえたような気がするが、たぶん気のせいだろう。
アキラは再び構えた。
「ひとつ言っておく、流派”北方不敗”は無敵だ!」
「あらぁ〜、負け惜しみ?本当にしょうがない子ねぇ〜」
「もう一度言う、流派”北方不敗”は無敵だ!!喰らえ!ハァァァァァァ──────!」
シャイニングガンダムがイージスの腹部へ無数の蹴りを放った。速すぎて脚の残像が何本も視える。10発、20発、30発、40発――合計75発、魔法装甲がフェイズダウンした。
「アチャぁッ!」
止めの一発を腹部に見舞う。イージスは吹っ飛ばされた。
倒れた衝撃でイワノフは怪我をしていた。
「血・・・・・・俺様の血・・・・・・イテえよォ──────!!!」
イージスが更に変身した。その姿は・・・・・・
「世界を革命する力をッ!!」
バラに包まれてガンダムローズが出現した。
どうでもいいが、本当に今回はやりたい放題である。
しかも、イワノフなだけに”薔薇”はよく似合う。
「ならばこちらも!」
シャイニングガンダムがビームサーベルを抜いた。2体が共にフェンシングの構えをする。まるで貴族の決闘だ。
「いつからこの話はGからWになったんだ?」
ラナロウの声が聞こえた気がするが、あえて無視しよう。
さて、決着はあっさりついた。最後はシャイニングガンダムのシャイニングスラッシュで一刀両断されてジ・エンドである。今回は熱血系ではないので、こんなもんでいいだろう。
シャイニングガンダムの勝利を丘から観察している人影があった。軍隊のような制服を着た男達である。
「シャッフル四天王が全滅したようだ」
「さっそく、キングとカーネル(大佐)に報告するんだ」
軍人らしき者たちはそのままバイクに乗って走り去った。