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第8話「丸太のタカ派(前編)」



「アキラがサザンクロスに向かっているだと?」
銀髪の男、半島を支配するキングこと、マーク・ギルダーは玉座に座りながらその報告を訊いていた。側には大将軍ハワード・レクスラーが控えており、黙々と報告に耳を傾けていた。
キングの前で片膝をつきながら、ニール・ザムは無表情でキングの反応を待っていた。その右手にはブラック・ジョーカーの紋章が刻まれていた。
「そうか、ならば歓迎せねばなるまいな」
「どうなさいますか?」
ギルダーは、嬉しそうな表情でニールに命令した。
「新兵器部隊を投入しろ。博士にアキラ討伐を命ずるのだ」
それを訊いて、ハワードが狼狽えた。
「博士を? 奴は紛れもない天才ですが、性格に難がありますぞ」
「構わん。ジョーカーよ、確かに伝えたぞ」
「はッ!」
ジョーカーはすぐに姿を消した。
「さて、天才博士を相手にどうするかな? アキラよ」
ギルダーは、そっと呟いた。

「僕は天才だ!!」
ユリウス・フォン・ギュンター博士は研究所の実験室で吠えていた。
ここは、キングからの支援金で運営される新兵器開発部、通称「防疫給水部」である。
「相変わらずだな、ユリウス博士」
「なんだ、ジョーカーか」
いつの間にか、ニールが立っていた。
「何の用だい? 僕は実験で忙しいんだ。それとも、君が新しい丸太になってくれるのかい? 頑丈な丸太は大歓迎だ」
「遠慮する。俺よりも格好の人体材料がいるぞ。胸に手形の男だ」
「あいつかい? 確か、カーネルを倒したとかいう……」
「そうだ。奴なら貴様の新兵器を存分に使えるぞ。キングからの許可が下りた」
「わかった、それは楽しみだ。デスドラムは失敗だったけど、おかげで無駄な試行錯誤をしないで済んだ。やっぱり、新兵器の実験には実戦が一番だね」
ユリウスは実験室の中を歩いてまわった。やがて、巨大な遠心分離器の前で立ち止まった。
「これは何の実験だ?」
ニールが、ややひきつった表情で尋ねた。
「人間を遠心分離器にかけてるのさ。ひょっとしたら、濃縮ウランよりも強力な濃縮ヒューマンができるかもしれないからね」
ユリウスはスイッチを押した。
「あべべべべぇぇぇァァァァァ!!」
中にいる丸太の悲鳴が、部屋中に響き渡った。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ニールは無言だった。
ユリウスは次の実験場に向かった。
「ここは減圧室だ。人間が真空内で、どうなるかを実験してるんだ」
ユリウスは再びスイッチを押した。
「ひでぶぅぅぅッ!!」
室内の丸太が爆散した。
「おい・・・・・・何で真空状態くらいで人間が爆発するんだ? こいつは秘孔でも突かれたのか?」
「気にしない気にしない。常識に縛られてたら、天才とは言えないよ」
「このマッドが……」
ニールは舌打ちした。
次の実験室には、巨大な注射器が備えられていた。ニールは頭を抱えた。
ユリウスはスイッチを押した。
縛り付けられた丸太に注射器が伸びた。ぶすりと突き刺さり、ちゅーちゅーと体内の水分を吸い尽くした。丸太は皺々のミイラになってしまった。
「すまん、そろそろ俺の中の常識が崩壊しそうだ」
「まだまだだね、ジョーカー。そんな事じゃ凡才だよ」
「俺は凡才でいい」
「さーて、それじゃあ、新兵器の実戦テストのついでに手形の男でも退治しようかな」
あくまで実験が優先のユリウスだった。