【フランダース小隊】 水倉氏



「見えて来ましたよ、少尉殿」
夢うつつだった俺は、相席のアルハザット伍長に揺起こされた。
いや、相席のというのはあまり的を得た表現ではない。経由地のホンコンを離陸してから4時間半、彼とは小一時間前まで、話の種が続く限りに語り合った仲になっていた。見えてきた、というのは基地のことだろうか。窓から外を覗く。
輸送機の小さな丸窓から遠くに見える滑走路は、高い外気からなる陽炎によって、ぐにゃぐにゃに見える。
焦点を定めるのもままならないこの熱砂でのこれから。それを考えると、気が滅入りそうになった。

オーストラリア最北端に存在する、地球連邦軍ケープヨーク基地。ここに転属が決まったのは、今から一週間前のことだ。
「隊長への誤射、及び命令不実行による小隊の壊滅」という輝かしい戦績を打ち立てた俺は、見事に左遷された。
辞令を言い渡すときに、大佐が見せた苦渋の表情は、今でも思い出すことができる。期待されていたのはわかっていたし、期待に応えようともした。だが、現実は、やはりそう甘いものではないし、それを上手く動かせる程、俺は器用な人間ではない。