【共に鼓動を聞く者たち】 343氏



アルビオンは右舷の応急手当をしていた。
「こりゃ、粒子砲は撃てないな。」
スタンの声にシェルドがうなづく。
「本格的にデッキで修理しないと…。」
「戻るぞ、シェルド。」
スタンの指示にドレスルームに戻る二人。
ノーマルスーツを脱ぐ。
シェルドは俯きながら、つぶやいた。
「…これが僕の仕事か。」
「どしたい?」
スタンの声にビクリと肩を震わせる。
「いえ…、なんでもないです。…休憩していいですか?」
「ああ。ま、MSの細かい整備は俺がやっといてやるよ」
「すいません」
スタンに挨拶して食堂に向かう。
そこにジュナス、クレア、ルロイの三人がいた。
「…あれ?みんなはご飯食べたんじゃないの?」
シェルドは少し驚いて質問する。
クレアはニコニコ笑いながら答える。
「一人淋しくご飯食べるなんてダメだぞ〜、シェルド♪」
「そ〜ゆ〜こと!」
ジュナスも続く。
シェルドは自然と笑みがこぼれる。
「…ありがとう。」
「みずくせ〜ぞ〜♪」
クレアの呑気な声に笑うルロイ。
シェルドはサンドイッチとポタージュを持って席に座る。
「こんだけ〜?足りないんじゃないの?」
「これで十分だよ。」
クレアの驚きに苦笑で返す。
ルロイが横からシェルドに話しかける。
「シェルドって凄いんだな。最初のときより二回目の方がアレックスの動きがしっくり来てた。一回の戦闘であれだけ修正できるんだね。」
シェルドが安堵の表情を浮かべる。
「…そっか。実は結構不安だったんだけど。次も修正するから、どんどん自分の手足みたいに動かせるようになると思うよ。」
「へぇ〜、MSで背中かけたり出来るようになるのかな?」
ジュナスの間の抜けた質問にシェルドも笑う。
が、少し悲しげな表情になって、吐露する。
「…本当は僕も戦いたいよ。みんなの方が、よっぽど凄いよ。あんな、恐い目に遭って、それでも生還して。」
「う〜ん、そうなのかな?」
クレアは首をかしげる。
「あたし、何も考えてないから分かんないんだよねぇ。」
シェルドはつぶやく。
「クレアは無意識に凄いことしてるんだよ。」
ルロイは首を振る。
「…そんな、立派なもんじゃないよ。ただ、必至にもがいてるだけだった。僕もさっきなんて吹っ飛ばされちゃったし…。」
シェルドはルロイに聞く。
「恐くなかった?」
「恐かったよ。」
沈黙する四人。
ジュナスが口を開く。
「んでも、さ。こういうのって変かもしれないけど。誰かを守るって、いいよね。」
「え?」
シェルドがジュナスを見る。
「いや、だからさ、誰を守ってるとか良くわかんないんだけど、アルビオンにいかせるかぁ!みたいな気持ちで戦ってて、悪い気持ちじゃなかった。」
「……。」
シェルドはこぶしを強く握り締めた。
「僕には…、無理かな?」
シェルドの言葉に三人は驚いた。
「…無理って?」
「MSに乗って戦うのは、僕には無理かな?」
クレアは困った。
コクピッドでの不安が的中したような気がして。
再び訪れた沈黙を破ったのは、意外にもルロイだった。
「やってみるかい?」
「え!?」
ルロイの言葉にみんなが驚く。
「…って言っても本物じゃなくてさ。シュミレーターがあるし。なんだったら相手になってもいいよ。」
その後、頭をかいて続ける。
「こういう意味じゃなかったかもしれないけど…。」
シェルドは笑顔で首を振る。
「ううん、ありがとう。やってみたい!」
「んじゃ、早速行こうぜ!」
ジュナスが立ち上がる。
「にゃはは、ジュナスぐらいならすぐに勝てるよ♪」
クレアがシェルドの肩をぽんぽん叩きながら言う。
「なっ!」
ジュナスが食って掛かろうとするが、ルロイも同調する。
「そうだね、こっそり対策教えてるから。ジュナスには楽勝だね!」
「へへ!ありがとう。」
シェルドの笑顔を見てジュナスはむくれる振りをする。
それでも内心では安心していた。
やはり、友達には笑顔でいて欲しいから。