「共に鼓動を聞く者たち」 343氏




上昇したアルビオンを出迎えたのはマゼラン級1隻にサラミス級2隻。
当然ながら味方ではなかった。
展開してきたモビルスーツはグリーンのハイザック6機とジムクゥエル6機。
明らかにティターンズと分かる。
ブリッジのハワードは歯噛みした。
「こうまで露骨に来るとはな。」
ミリアムが急いで指示する。
「MS隊の発進を急がせて!対空防御用意!」
飛び出す3機のアレックスに2機のリックディアス。
ミリアムはそれを確認しつつ、指示を続ける。
「リックディアスにアルビオンを守らせて!アレックスは前面に展開!敵機の撃破に専念!アルビオンはこのまま強行突破します!」
アヤカ、ブランドが各機に指示を送る。
ウッヒは気合を入れる。
「了解!全速前進でそのまま、奴らを引き離しますよ!」

リックディアスのビリーはアヤカからの指示を聞きながら、呟く。
「あんなにカワイイコが肩に力を張って顔をこわばらせて…、これが戦場ってヤツか。」
もう一機には奇声を発してるハゲが乗っている。
「また、俺は後方で援護かよ!」
不満らしい。
ビリーは別に構わない。
ただ…。
「やつの足はしっかり止めてやるから、上手くしとめてくれよ、少年少女!」
クレイバズーカで援護を始める。
それに応えるかのごとき動きでクレアのアレックスのビームライフルが黒いジムをしとめる。
「へへっ!ハゲの援護よりいい感じ!」
「当然よ!」


ハイザックに乗るコルトは焦っていた。
これだけの数で攻めているのだ、普通は戦意喪失するはずだ。
たとえ話に聞いてない、2機のMSが出てきたとしても、こちらの戦力は2倍以上。
「中尉!一機やられました!」
部下の間抜けな報告が入る。
「そんなの見れば分かるんだよ!」
ハイザックはそのアレックスにマシンガンを放つ!
「ち………ちくしょう!当たれ!当たれーッ!」
悠々とその攻撃を避けて接近してくるアレックス!
「くっそぉー!」
武器の持ち替えは間に合わないと判断し、蹴りで応戦する!
その勢いを駆ってそのまま距離をとるつもりだった。
しかし、信じられない敵の反応。
「オマエには分かるまい!この体を通して出る力が!………なんてね!」
クレアのアレックスも敵機の蹴りにカウンターで蹴りを入れてきたのだ!
見事な左ハイキック。
MSの常識から外れた攻撃である。
「ぐはぁ!ち、ちくしょう!」
コクピッドにも響く衝撃!
コルトはノイズの入るモニターを見つつ、再び視認する。
どっちにしろ、距離は取れた。
反撃をと思ったとき、その味方の数の少なさに愕然とする。
ハイザック3機、ジムクゥエル1機…。
いつの間にか、相手より少なくなっていた。
しかも、相手は止めを刺しに来ない。
アルビオンはMSを収納しつつ、戦闘空域から離れていった…。

ガイはマゼランのブリッジで怒りに震えていた。
ここまでの屈辱を受けたのは初めてだった。
いや、相手はペガサス級なのだ。
あのホワイトベースの血統なのだ。
そう言い聞かせ、自尊心を守ろうとする。
「…私にもアレキサンドリアさえあれば!ジムではなく、ガンダムならば!」
どちらもジャマイカンに取られた。
ガティ・キンゼーが確かに有能なのは認める。
しかし、ジャマイカンなどに自分が劣ってるとは思えない。
バスク大佐は何を考えているのだろうか?
「…何をしている!追撃体勢を取れ!」
ブリッジのクルーに一喝するガイ。
みなが敗北のショックから立ち直れていない。
「艦は無事だ!MSとパイロットは補給すればよい!脱出できた者の救助を急げ!」
ガイの鼓舞がむなしく響く。

「それでいい…」
アルビオンのハワードは満足げに頷いていた。
ティターンズは追撃してくるだろう。
その際に補給も受ける。
出来るだけ相手の戦力をこちらに集中させる。
オトリの意味では相手を全滅させない方がいい。
「それにしても…」
ミリアムがハワードに向く。
「なんでしょう?」
「恐ろしい戦闘力だな、この艦は」
少数精鋭と言っても明らかに異常な強さだ。
先ほどの戦闘では後手に回った。
にもかかわらず、余裕で二倍以上の敵を追い払う。
「このMS隊は歴史上でも屈指の強さになるだろうな」
ハワードの言葉に、アヤカは納得できなかった。
モニターに映るパイロットたちの顔。
ジュナスも、クレアも、ルロイも疲れた顔に安堵の表情。
みな、全力で戦っていたのだ。
「お疲れ様!おかえりなさい!」
アヤカは出来るだけ、元気な声をかける。
「ただいま!」
少年少女の負けない元気な声が聞こえる。
ブランドもリックディアスの二人に声をかける。
「おかえりなさぁ〜い」
(か、帰ってきたくねぇ!)
ドクとビリーは同じ感想を持っていた。