「共に鼓動を聞く者たち」 343氏




「リックディアスを一度補給に戻しますぜ!」
スタンの報告にハワードは頷く。
「よし!アレックスにアルビオンを守らせろ!メガ粒子砲用意!今度は艦隊ごと突っ込んでくるぞ!」
ブリッジのクルーは指示に従い慌しい動きを見せる。
ミリアムがハワードに尋ねる。
「サラミス3隻にアレクサンドリア1隻…。砲撃戦には数が多すぎませんか?」
ハワードは首を振る。
「今のうちにもう1隻は潰しておく!地球まで、そのまま奴らを連れて行くわけにもいかんしな!」

MSデッキでオグマは疲れた士官を見つける。
コルトとかいうらしい。
「くそっ!こんな、こんなことが…。」
負け犬がなんか言っている。
「俺がマラサイに乗っていれば…。」
何に乗っても無理だろうな。
オグマは足取り早く、自分の機体に向かう。
「よう!隊長、待ってたぜ。」
意味のない迷彩を施した、見慣れた顔が見える。
デニズ・ナパーム、オグマの部下だ。
「ジェシカは待ちくたびれて、もう乗り込んでるぜ。」
オグマはデニスに薄笑いを浮かべて、コクピッドに入る。
ハイザック・カスタム、ハイザックに特殊装甲と武装が追加されている。
各種系統をチェックして、起動させる。
「遅いんだよ、アンタ」
ジェシカの声が聞こえる。
コイツは自分を兵士と言わずに戦士と言い張り、女なのによく戦いたがる。
オグマは射出口に向かう。
「…オグマ・フレイブ、ハイザック・カスタム、出るぞ。」

アレックスからは接近するアレクサンドリアとサラミスが見えていた。
「…また、艦を狙うんですか?」
ルロイがブリッジに聞く。
アヤカが否定する。
「ダメです!アルビオンを守ってください!ルロイ君が攻めたら、誰が私を守ってくれるの!いかないで!」
「…からかわないで下さい。」
「え〜っ本気で言ってるのに〜。」
「そりゃある意味で本気かもしれませんが…」
会話を中断する。
ハイザックが迫ってきた。
クレアが高らかに宣言する。
「じゃ、アヤカさんを守りますか〜!」

3機のハイザックカスタムが、アレックスを確認する。
「…お子様ガンダムか。」
オグマが呟く。
ガンダムは子供が好きなのだろうか?
一年戦争でも少年が乗っていたというしな。
「…避けてみろよ!」
ビームライフルで、仕掛ける。

ジュナス機は、かろうじて初弾をかわす。
「くっ!」
ジュナス機も素早く応戦する。
オグマ機も悠々とかわしてみせる。
「…甘いな。」
続けざまの攻撃。
ジュナス機はかわしながら接近する。
オグマ機も接近戦に備えてサーベルを抜き放つ。
と、瞬間、アレックスはバーニアを全開にして、通りすがり様に一撃をくれる!
切り結ぶことを考えていたオグマは意表をつかれる。
「なっ!」
「…堕ちろ!」
ジュナス機はすぐさま、ガドリングガンを喰らわせた!
オグマ機は盾で防ぎきれず、装甲に傷が入る。
「…この一撃、高くつくぞ!」

クレアのアレックスに迫るハイザック・カスタムは、機体をぶつけに来る。
クレアはここで避けずに、あえて盾を構えてぶつかりに行く!
ゴッ!と鈍い音がコクピッドに届く。
「っつ〜!」
クレアは息を漏らす。
避けずにぶつかってきたことに、相手であるジェシカ・ラングは感心する。
「お前も戦士というわけか…。」
互いに機体を接触させたまま、押し合う。
同時に、バーニアを噴かして、離れるとやはり、同じ動きでライフルを撃つ!
クレア機にビームがかすめる。
「うわっとと…!」
アレックスの放った攻撃はハイザックに当たった。
が、追加装甲のためか、致命傷には到らず、ハイザック・カスタムの攻撃は続いた。
「フン!度胸だけは認めてやるよ!」
「わわっ!」
クレアはかわし切れず、盾が飛ばされる!
さらに再度、接近して突撃をしてくるジェシカ機に、さすがにクレアも回避を選択する。
と、背後から迫る殺気!
デニス機がサーベルを構えている。
「かかったな!シロウトが!」
「よ、よってたかって!少しは手加減してよね!」
クレア機はギリギリでかわして見せると、そのままサーベルを抜き放つ!
背後より援護のビームが奔る。
ルロイ機だ。
デニスはバランスを崩す。
「くそったれ!」
「ア…アタシだっておちゃらけてばっかりじゃないのよッ!!」
クレアのサーベルがデニスを捕らえる!
ハイザックの追加装甲に派手に亀裂が入る。
そのまま、コクピッドを狙うクレアを衝撃が襲う。
ジェシカ機の三度目の突撃!
さらにルロイ機をライフルでけん制するジェシカ機。
「フフ!楽しませてくれる!」

キレた動きを見せるオグマ機にジュナスはついていけなくなる。
直感による攻撃回避にも限界がある。
「くっ!このままじゃ…」
オグマ機がミサイルポッドを開放する。
が、相手はジュナスのアレックスではなかった。
「あ、アルビオンを狙っている!」
「…もらった!」
ジュナスが母艦に気を取られた瞬間、一気に間合いを詰めるハイザック・カスタム!
右のガドリングカンを打ち込むが、オグマ機はその射線から外れる。
「…まずはその厄介な右手をいただく!」
ハイザックのビームサーベルがアレックスの右腕部を切断する!
「しまった…!」
アレックスは持っていたサーベルごと取られ、アレックスは一気に武装を失う。
さらにアレックスのコクピッドが大きく揺れる。
ハイザックの頭部が、アレックスのメインモニターを叩いたのだ。
衝撃の中でジュナスが呟く。
「ま、負ける!?」


アルビオンのブリッジも大きく揺れていた。
ハイザック・カスタムの攻撃によるものだ。
「ジュナス機、敵機に押されてます!支援を…」
アヤカの悲壮な声が響く。
ミリアムが指示する。
「リックディアスの補給は終わってないの!?」
「今、出ます!」
ブランドが報告する。
ハワードは険しい顔で聞く。
「メが粒子砲は?」
「スタンバイ完了しました!」
「狙え!前方に出ているサラミス!」
ドッ!
先ほどよりも大きい揺れがブリッジを襲う!
「アレクサンドリア級の攻撃です!左舷中破!」
アヤカの報告はもはや悲鳴だ。
「構うな!メガ粒子砲!撃てーッ!」
ドウッ!
二つの光の筒がティターンズカラーのサラミスに伸びる。
そして爆発!

衝撃から回復したクレアが見たもの。
それは武装を失い、敵機に追われるジュナスの乗るアレックスだった。
「う、嘘でしょ!」
クレアとのシュミレーションではほぼ互角の戦いをしていたジュナスが追われているということは相手はより強いということになる。
ジュナス機への援護としてガドリングガンを撃ち放とうとした瞬間、クレアは殺気を感じる。
しかし、構わなかった!
「ジュナス!しっかりやって…」
ガドリングガンの射線はオグマ機をかすめる。
クレア機に三度の振動!
ジェシカのハイザックのモノアイが怪しく光る。
「人の世話をしている暇があるのかい?」
「こいつ!何度も何度も、ごつんごつんって、しつこいのよっ!」
アレックスのサーベルをハイザック・カスタムが盾で受け止める。

後方に退くジュナス機をオグマは追う。
先程、ジャマは入ったが捕らえられない距離ではない。
「…艦には戻らせん!」
一気に追い込もうというときに、見えるのは新たな機影。
3機のリックディアスだ。
「…援軍か。」
オグマは冷静だった。
こちらの遅れてきた後続もやってきたところだ。
ハイザック6機。
先程は奴らに殲滅されたそうだが、今回はこちらがフォローに回るので、なんとかなるだろう。
だが、アレックスはあきらめないといけないかもしれない。