「共に鼓動を聞く者たち」 343氏



ニキは再び相手とはなれて対峙する。
強い。
相手の動きをいなそうと思ったが、援護が飛んでこない。
「シェルド君、どうし…。」
視界にかすめた小さな爆発。
「な!?」
シェルドは突然の衝撃に怯えていた。
「…も、もつのか?」
こんなときなのにシェルドの頭にはクレアの声が浮かんでいた。
『アレックス、大事に乗ってたのに装甲に傷がついちゃってるし!』
シェルドは苦笑いする。
「ごめん、今度は傷つけるどころか…」

オグマは今しがた起きた状況がコルトによるものだと理解した。
「…ほう。」
オグマは敵の援護が減ったことにより、目の前のハイザックを潰す準備が出来た。
爆ぜた!
脱出装置が働いたのだろうか?
コクピッドからカプセルが出てくる。
パイロットの生き死には、まあいい。
アルビオンに向かいたいところだが、問題は自機の弾切れだった。
「一度戻るか。」
露払いはした。
後は仕留めて見せろ、ガルン・ルーファス。

エイブラムの手が汗でにじむ。
「ニキ大佐!」
彼女が死んでは、自分の行動は無意味なものとなるのだ。
むしろ、死ぬのは自分でよい。
急いで脱出カプセルを探す。
スタンにも余裕が出来た。
損傷はあったものの敵が引き返すだけの戦いは出来た。
ブランクがあって、初めての機体。
上出来である。
「そこのハイザック、どうしたい?」
エイブラムに通信を送る。
「探せっ!脱出カプセルを!」
「は?」
「ニキ大佐がいるんだ!」
スタンは驚きはしたが、幾分冷静に訊ねる。
「アルビオンに救難信号はいってないのか?」
一方で視界に入るもの。
宇宙に漂うアレックスの姿。
「シェルド!?」
そしてコクピッドに入ってきた声はドクのものだった。
「くっそ〜!逃がしちまった!」
「ドク!シェルドを連れて艦にもどるぞ!シェルド、聞こえてるのか?」
ドクは辺りを見回す。
アレックスのやられ方は中途半端だ。
俺なら爆発するまで楽しむ。
そしてやってきた再びの銃撃!
アレックスが爆発し、カプセルが射出される。
「うおっ!」
それを受け取るスタンのアレックス。
ドクは弾のやってきた方向に見当をつけ、バーニアを全開に噴かす!
「そこかぁ!ブッた斬ってやらぁ!」
コルトは悲鳴を上げた。
「く…くそおッ!何でオレのところに来やがるんだよッ!」
ヒートホークを避け切れなかった。
コルトのハイザック・カスタムは塵に消えた。


ジュナスは地球の重さに驚いていた。
バリュートを外し、リックディアスは戦闘準備に入る。
「クレア?ルロイ?」
仲間への呼びかけ。
「生きてるよ〜。」
「こっちも大丈夫だ。」
その返答に満足しながら辺りを見回す。
やって来る攻撃!
ビームライフルを打ち込んできたのはガルバルディ。
いきなり宇宙での戦いの続きである。
滑るような動きでリックディアスは回避する。
ラナロウは攻撃が回避されて歯噛みする。
「くそっ!おっさんは…」
グレッグからの援護は無い。
その事実が、さらにラナロウを身体を熱くさせた。
「ここで終わらせてやる!」
「…くっ!」
ラナロウ機の攻撃にジュナス機は逆に打ち返す。
ルロイ機のクレイバズーカがラナロウ機を突き放す。
「ジャブローの中心部に行くんだっ!」
ルロイが叫ぶ。
「そこを占拠すれば戦闘は終わる!」
ジュナスは疑問に思う。
本当だろうか?
今、目の前にいる敵は、そういうことで戦いを終わらせるようには見えない。
ガルバルディはサーベルを構え、向かってくる。
ジュナスもサーベルを構える。
敵後方より、援護のビーム。
ソニア機だ。
かわし切った所でラナロウ機とぶつかる!
「おっさんの仇を!」
「!?」
切り結ぶ2機のMS!
「くそっ!何故くたばらない!俺のほうは格が違うんだ!」
「…やられるもんか!ボクだって一人前のパイロットなんだ!」
ガルバルディの横なぎの一撃を後方に退いて回避するリックディアス。
同時にバルカンも放つ!
シールドを失っていたガルバルディの装甲を削る!
小さな震動に襲われたラナロウが吐き捨てる。
「ふざけた真似を!」
今度はジュナスの方が飛び込む!
クレアが援護のビームピストル!
ラナロウはバランスを崩す!
「今だっ!」
ゴッ!
間に割ってきたのはソニア機だった。
「ラナロウ!頭を冷やしな!」
ジュナスにサーベルを打ち下ろす。
瞬間、クレイバスーカが飛んできて盾でこらえる。
ジュナスはその間に距離を取れた。
ルロイの一撃がジュナスを救った。
「やはり、3対2じゃ不利だ、たとえ相手がガキでもね…。」
「隊長っ!」
ソニア機はジャブローに進入して行くリックディアスにシールドミサイルをくれてやる。
だが、悠然と避けられる。
「ただのガキじゃないってのもあるしね。」
ソニアの呟きにラナロウはコンソールに拳を叩きつける。
「何やってんだい…」
ソニアにはコクピッドにラナロウは見えないはずだ。
だが、伝わるものはある。
「さあ、追うよ!」
「え!?」
間抜けな声を出すラナロウにソニアは失笑する。
「ドコまでガキなんだい、お前は。」
「でも、さっき3対2じゃ不利だって言ったろ!」
ソニアの失笑が消える。
「そこを上手くやるのがプロってもんさ。いくよ!グレッグの仇は討つ!」
2機のガルバルディもまた、ジャブローに入ってゆく。