【今日のコロニー。 】軍の犬氏




  【スクールしぇるどデイズ】

 U.C.M(宇宙世紀もどき)0079 スペースコロニー『nice boat.』
「う〜遅刻遅刻〜」
やあ、僕の名前はシェルド・フォーリー。このコロニーの高校に通う普通の男の子さ!
……いいかい?けっしてNTだとかOTだとかそういう意味での普通じゃないよ?
変わってるところといえばメカに興味があることとちょっと友達が少ないことかな?

 「あ!」
ドンッ!!
曲がり角で誰かとぶつかった!
「いたた〜……」
こ、これは!?女の子!!し、しかも……
「あ、ご、ごめんなさい!お怪我はないですか?」
可愛い……しかも金髪でひんぬーだ……
「はぁッ!!?き、君がくわえているそれはッ!!?」
しょ、食パン!?朝遅刻しそうになって曲がり角で食パンくわえた金髪ロリ顔美少女とぶつかるだと!?しかも今日は新学期一日目!!これなんてエロゲ?エロゲじゃない!本物なのさ!!!
「あ、あの〜……ホントに大丈夫ですか?何か様子が変ですよ?」
「いや、大丈夫さー。あ、こうしちゃいられないさー。遅刻しちゃうさー」
「お、沖縄の人……?」
「あ、じゃあまたあとで教室の隣の席で会うさー」
「は?」


キーンコーンカーンコーン
ここは、公立キャリーベース高等学校。素敵な坂の上にある進学校でもヤンキー学校でもない特に特徴のない高校だ。所詮学園物に出てくる学校なんてただの舞台でしかないのさ。
デザインが簡単で描きやすくてパッと見一発で学校だと分かれば問題ないのさ。
 「フラグーフラグー!フラグが立ったー!」
「……?クララがどうしたって?」
話しかけてきたのは隣の席のフローレンス・キリシマ。一応僕の幼馴染。そのくせに窓越しで会話できる立地条件の家に住んでなかったり、毎朝「しょうがなく起こしてあげてるんだからね!」なんていう可愛げのあることも言わない、その上ちょっとヤンキーが入ってるどうしようもない女だ。まったく。

 「ゴミ共席につけー!転校生を紹介するぞー!!」
担任のブラッドがいつも通りの高圧的な態度で朝礼を始めた。ていうか転校生ktkr。
「え……っと……サイド5のコロニー『ケロ・ログンソ』から来ました。エリス・クロードといいます。よろしくおねがいします」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
男共が吠えた。無理もない、あんな美少女が転校してきたのだ、しかし……あまい!!教室に入ってからの出会いなど、所詮フラグすら立っていない!!貴様らはただのお友達確定だ!!!
「じゃあ、クロードはあの空いてる席に座りなさい」
キターーーーーーーーーーー
「よろしく」
そう言って僕のエリスたんは僕の隣の席……のフローレンスの隣の席に座った。おいいいいいいいいいいい!!!邪魔だよこのエセ幼馴染があああああああああああああああ!!!!
 まだだ!まだ終わらんよ!!僕は決死の覚悟でフローレンスの頭越しに話しかけた。
「お、おはよー。僕シェルド・フォーリー。よろしくー」
「!!?……ほ、本当に同じクラスに居た……」
……?今心底嫌そうな顔されなかったか?気のせいだね!

 それから数週間が過ぎ、一向に次のイベントが始まる気配もなく。エリスはクラスの中心人物になっていた。いっぽう僕はクラスの空気と化していた。
「ねえ、フローレンス?僕って女の子から見てどう?」
「キモイ。ウザイ。クライ。コワイ。要はオタクにしか見えない。アタイも幼馴染で同じクラスじゃなかったら話かけねーよ」
「…………ありがとう……君が幼馴染でよかったよ……」
「ん、そうかい。アタイは神を恨んでるよ」
このアマ……僕の前では一切猫被らずにズバズバ物を言いやがる……

 そんなある日のこと。夕暮れの帰り道、歩道橋の上で事件は起こった。
「あの!」
その声の主はエリス・クロードだった。何か思いつめた表情でこちらを見つめている。
「わ、私……ずっと前から……始めてあなたを見た時から……思ってたことがあって……」
「……何?」
「私……あなたのことが……好きです」
そう言って、こちらに駆けてきたエリスは、両腕を広げて胸に飛び込んできた。
もちろん、僕の隣にいたフローレンスのだ。
「ごめんなさい……気持ち悪いですよね……?」
「ふふ……そんなこと……ありませんわ……エリス…………」
「フローラ……」

 その様子を、僕はフローレンスの荷物を持ちながら眺めていた。そして、こう呟いた。
「これはこれで……」

 U.C.M0079 今日も宇宙は平和です。