【Morning Tea&Coffee】774310◆Iq.Y5wJtqA 氏



GジェネWARSしかやったことのない作者が戦闘デモとかWikiで見た人物設定だけでキャラ像作って書いた。

ちなみに、WARSでのオリキャラの空気っぷりにはひたすらビビッた。

話の内容はジュナス、ラナロゥ、マークの性格と関係の正に俺設定といった感じ




 ジュナスは夜明け前の寒さにふと目が覚めた。もぞもぞと身動ぎして、そういえば昨日寝る前にわずかに開く窓を開けたままにしていたことを思い出す。
 枕から頭をもたげて見ると、やはりだ、開けっ放しの窓から冷えた空気が流れ込んでいる。これでは寒いのなんて当たり前だ。
「うぅ…くそ…」
 ジュナスは呻いて自分の体温でわずかに温い毛布に蓑虫のようにくるまる。
 デジタル時計は六時前を指していた。朝はギリギリまで寝ていたい彼としては、なんともこの時刻が悔しいところなのだ。
 だがそんな彼の気持ちなど露知らず、朝冷えの空気はどんどん部屋に入り込んでジュナスの目を覚まさせる。
 しばらく往生際悪く毛布の中でもがいていたが、やがて、
「あぁ、もう! わかったよ、起きるよ!」
 誰にともなく叫んで、ジュナスは一気に毛布をめくって跳ね起きた。寝癖のついた髪を乱暴に掻いて、そのままベッド脇のスリッパ、というより動物の大きな足を模したもの、をつっかけた。前に買出しに行った女の子たちがふざけて買ってきたものだ。もちろん渡された時は嫌がったが、意外にあったかいのが分かってからは今の時期、こっそり重宝しているのだ。
 部屋のドアを開けて、非常灯が消え夜明け前の薄ぼんやりとした廊下に出る。
 途端に足の底から立ち上る寒さに一気に身体を貫かれる。
 自分で自分を抱きしめてなにか羽織ってくればよかったと後悔したが、すぐそこにドリンクの販売機があるのを思い出してそちらへ足を向ける。
 販売機は薄ぼんやりした廊下に更にぼんやりした気だるげな明かりを投げ出していた。
 ズボンのポケットをまさぐり取り出したコインを適当に入れてホットティーのボタンを押す。ミルクもレモンもなし。砂糖は入れて。
 叩き起こされた自販機が不機嫌そうに唸り声をあげてカップを落とし、紅茶をつくり始める。
 それを待つ間、何の気もなしに外を見やると、朝靄の中眼前に海が広がっていた。
「海、かぁ…」
 しばらく宇宙での待機状態が長かったこの艦が突然地球へ降りたのは、近々大規模な作戦が展開されるというのがもっぱらの噂だ。明確でないのは、艦長のニキ・テイラーが未だ何も言っていないから。なので実際は、待機場所が宇宙空間から地球に変わっただけだ。
 だが作戦が展開されるからにしろ何にしろ、ジュナスは与えられたことの中で己がするべきことをするだけだ。
 たとえそれが、愛機であるナイチンゲールを駆り、人を殺すものであったとしても。



 ピー、という短い電子音が鳴って、ようやく紅茶が出来上がる。
 ハッ、と物思いに耽っていたジュナスは、誰にともなくそれを隠すように「遅いぞ」と自販機をこづいてカップを取り出した。
 ティーから立ち上る白い湯気がジュナスの吐息と混ざり合い朝の空気に紛れる。
 あと半時間もしないうちに、艦はいつもの騒々しさを取り戻すだろう。朝の身支度に精を出す女性たちや、腹を空かせて部屋からのそのそと出てくる男たち、早々にMSのチェックを始めるメカニック、ブリッジに詰めている当直の誰かはようやく眠れると伸びをするだろう。
 そしていつもの一日が始まる。
 だが、ジュナスはあの騒々しさも好きだが、こうやって哀愁すら感じる起き抜けの朝も好きだった。
 こうしていると、母親の腕で眠っているのを起こされぐずる子供のような気分になる。
 もう、会うことはおろか見ることも叶わない彼の人。
「嫌だな…。どうしたんだろう…」
 ジュナスはわずかにかぶりを振ると、まだ熱いティーに口をつけた。咳き込みそうになる熱さが喉を通り過ぎていった。
「今日も…晴れるのかなぁ」
 ほぅ、と吐いた白い息がほわほわとティーの湯気と混じって消えた。
 と、パタ、パタ、とゆっくりしたスリッパの音がする。だがこの音は聞き覚えがあった。自分が今履いている動物の足と同じ足音だ。どこにでもある味気ないスリッパのように甲高くなくて、どちらかというと、ぽすっぽすっ、に近く、気抜けするあれだ。
 ジュナスは誰だろう、とわずかに上体を反らして廊下の向こうに目を凝らす。
「ラナロゥさん?」
「んぁ? おぉ…」
 眠気覚めやらぬといった表情でラナロゥ・シェイドが気だるげに片手を上げる。いつ何時スクランブルがかかっても飛び出せるようにという彼らしく、タンクトップにジーンズというラフな格好だ。だがいつもしているバンダナは今は外されている。
 その格好で、足に茶トラの足がくっついている。おまけに、とがった凶暴な爪が三本もついていた。
 タンクトップから伸びた肩や腕はみっしりと鍛えられており、彼の目つきと相まって近寄りがたい雰囲気を醸し出している。


 彼のその体つきを見る度に、ジュナスは自分と比べて落胆してしまうのだが、それは正直仕方がなかった。
 ラナロゥは生粋の傭兵であり、幼い頃から戦場を駆けていたのだ。最近まで普通の少年の生活を送っていたジュナスとは比べるまでもない。
「早いんですね」
「おぅ…目ぇ覚めちまってよぉ」
「ははは、一緒だ」
「ん、紅茶か。俺ぁコーヒーがいいな」
「奢らないですよ」
「わーってるよ」
 とか言って実は奢らせようとしてたくせに、とジュナスは紅茶のカップをラナロゥから遠ざけた。
 ジュナスはなぜかラナロゥと話す時は、中途半端な敬語とタメ口のちゃんぽんになってしまう。最初の頃は完全に敬語だったのだが、ラナロゥに敬語は嫌いだと言われ、かといって年齢のこともあって完全なタメ口を聞けるわけもなく、今の口調になってしまった。
 それでもラナロゥは最初は嫌そうにしていたが、こちらの精一杯の譲歩だと分かったのか今はもうそういう表情はしなくなった。
「あー、くそ、こんな半端な時間に目ぇ覚めると変な気分だぜ」
「分かるなぁ、それ。けど、たまにはいいじゃないですか」
「あー? そうかぁ?」
「ほら、昼間は騒がしくてとてもじゃないけど、ゆっくりなんてできないでしょ。けど、今だったらできるじゃないですか」
「ふぅん。ま、一人で集中する時間ってのは大切だからな」
 自分の言いたいことと少し違う気がしたが、説明するのも面倒なのでジュナスは放っておくことにした。
 ぬるくなってきたティーと、熱々のコーヒーをいつの間にか二人並んで飲む。目の前には朝靄の海。
 しばらくお互いに無言で、手持ちのドリンクを啜っていたがやがてラナロゥがおもむろに口を開いた。
「それ、やっぱり似合ってんな」
「え? なんですか?」
「猫だったっけか?」
「……あ!」
 一瞬、なんのことを言われたのかと呆けていたが、ラナロゥの視線の先、自分の足元を見て思わず声をあげた。
 これを渡された時にラナロゥもいて、さんざん嫌がったのを見られていたのを思い出したのだ。
 恥ずかしさが込み上げてジュナスは顔を赤くした。だがタダではやられない。負けじとジュナスも言い返す。


「そう言うラナロゥさんだって、気に入ってるんじゃないか」
「!」
 どうやら自分も履いてきている自覚がなかったらしい。
 ラナロゥはコーヒーカップを落とさん勢いで慌てて足元を隠す。
 が、大きさが大きさで隠せるような物もなく、ただ足をばたつかせただけだった。
「ばっ! こ、これはだな、ただ間違えただけなんだよ!」
「へぇ。そうなんですか?」
「うるせぇ! てめぇみたいに似合ってるわけじゃねぇっつぅの!」
「でも気に入ってるんでしょう」
「んなわけねぇだろっ」
「朝からうるさいぞ」
 突然割り入った声に会話を寸断され、二人は声の主を見やる。
「んだよ、ギルか」
「二人ともどうした? まだ起きるには早くないか?」
 いつもの二人の寝起きの悪さを知るマーク・ギルダーはニヒルに笑った。それが嫌味に見えないのが彼だった。
「ちょっと目が覚めただけですよ」
「たまにはあんだよ」
「本当にたまに、だな」
「んだと。てめぇ、わざわざ皮肉を言いに出てきたのか?!」
「そんなわけないだろ。俺もこいつに用があったんだ」
 と、マークはコインを持った手で自販機を指す。
 目当ては当然、ブラックコーヒー。本当は豆から炒ったものが好きだが、こんな場所ではそんな物望めるはずもない。
「ところで、」とマークがカップを取り出しながら、目線を二人の足元に移す。
「その足はどうした?」
「うわっ」
「げっ!」
 馬鹿正直に二人は慌ててそれを脱いでそっぽを向いた。
「ふっ」
「笑ってんじゃねぇよ!」
「べ、別に気に入ってる訳じゃ…!」
「そうか」


 マークは二人の必死の言い訳を聞き流し、コーヒーを口にする。艦の窓の外に目をやると、陽炎のように朝靄が海上で揺らめいていた。
「今日も晴れそうだ」
「今は寒いですけどね…!」
「裸足だとたしかに寒いだろうな」
 と、コーヒーを啜り、更につけ加えた。
「俺は『どうした?』と聞いただけだぜ。もう見ないでやるから履いたらどうだ」
 一瞬、ラナロゥと頭ひとつ分低いジュナスの視線が交差する。だが二人はどちらからともなく視線をそらすと、そっぽを向いたまま猫と茶トラの足を履いた。
 横目で見ていたマークの口元に思わず笑みが浮かぶ。
 この二人を見ていると、時々二人が兄弟のように思えてくる。
 気性は荒いが実は面倒見のいい兄とそれに振り回されるが優しい真っ直ぐな性分の弟、といったところか。
「さて、と」
 マークはカップを呷ってコーヒーを飲み干す。
 そして自販機の横にあるゴミ箱にカップを放り込みながら、同じようにカップを呷っているジュナスに「あぁそうだ」と声をかかける。
「ジュナス。朝食が済んだら今日は一日、俺が特訓してやるからそのつもりでいろよ」
「ぶっ…!」
「はははははっ!よかったな、ジュナス」
 ラナロゥが、盛大に噴出し咳き込むジュナスの頭をばしばしと叩く。
「ほ、ほんとですか? それ」
「俺は冗談は言わんさ。相変わらず射撃精度の低さは目に余るものがある。しっかり鍛えてやるから覚悟しろ」
「はい…」
 ひらひらと手を振りながら去っていくマークの背中を見送りながら、ジュナスは半ば呆然と頷いた。
 ばしっ、とその背中をラナロゥが叩く。
 痛みに振り向くと、ラナロゥはどこか優しげな目つきでジュナスを見つめていた。普段見せない顔に言葉を選べずにいると、乱暴に頭を撫でられる。
「戦場で生き抜く術、しっかり覚えろよ」
「……はい!」
「おっしゃ、じゃ、そろそろ飯食いに行くか」
「ですね」
 ジュナスとラナロゥはゴミ箱にカップを投げ入れると、ぽすっぽすっ、と音を立てながら食堂へ向かった。
 ちなみに、この後、二人仲良く動物の足でいじられたのは言うまでもない。

 終