ジュナス篇@



ゼフィール前艦長は、「ジュナス・リアムは逸材である」と評した。
事実、彼の通信士としての能力は、通信士見習いの、それを大きく超えていた。
ノイズ一つから敵艦の場所、及び形状、武装に至るまでを感知。
さらに、その情報を的確にパイロットへと伝える言語処理能力は並ではなかった。
彼はニュータイプだったのだから、当然といえば当然であった。
周囲の彼に対する評価は、訓練を重ねるごとに上がっていった。
しかし、ジュナス自身にしてみれば、それは過大評価もいいところであった。
彼自身の言葉を借りれば、「全部、ただのカン」
正確には自分のカンに自信はあった。
しかし、それを裏付ける根拠がなかった。
自信があるとは言え、根拠のないデータをパイロットへと伝えることへの後ろめたさがあった。
そして何より、自分がニュータイプであるとの自覚もなかった。
要するに、彼自身ニュータイプとしての素質は持ちつつも、それを自身の力で完全に使いこなしてはいなかったし、その素養も未熟であったからだ。
自分と周囲との評価の差に戸惑い、迷っていた。

そんな2月13日のこと。
ジュナス・リアムとパメラ・スミスは司令室にいた。
その日は夜間当直訓練であり、通信士2名だけで司令室を任されていた。
深夜0時から始まる8時間の特別ミッションである。
勿論、司令室の様子はモニターされている。
しかし、この日のパメラ・スミスは、完全に舞い上がっていた。
なぜなら、彼女はジュアンス・リアムに惚れ込んでいたからだ。
訓練打ち合わせの際に説明されたことは、何一つとして頭に入っていなかった。
特別ミッションであることも頭からぶっ飛んでいたし、モニターされているという事実でさえも、記憶の埒外だった。
気がつけば、横に座っているジュナスの横顔を盗み見ていた。
勿論、完全に手も頭もお留守である。
ジュナスに何か注意される度にパニックになり、その都度、フォローされた。
それでも、やめられなかった。
ジュナスを見ることだけが、どうしてもやめることが出来なかった。
そして、あろうことか、彼女の思考は暴走を始めており、このミッションの場を、告白のチャンスだと思い込んでしまっていた。





ジュナス篇A



ジュナス・リアムは戸惑っていた。
横に座っているパメラの様子がおかしすぎる。
特別ミッションなのに、全然集中出来ていない様だし、返事もおぼつかない。
同じ通信士見習いのアヤカやリコルは、パメラの方が能力は高いと口をそろえて言うけれど、僕にはとてもそうは思えない。
あの二人と組んで訓練する時はどうかわからないけれど、少なくても僕と訓練を行う時は完全に見習い生以下だ。
どうなってるんだ。

それが、まさか自分のせいなどとは、微塵も思っていないジュナスなのであった。

一方、パメラは完全に暴走していた。
なんて声をかけたらいいんだろう…?
・熱源、行きます!
駄目だ、これじゃただの馬鹿だ
・目標を補足しました。これより攻撃を開始します!
何をする気なんだ、私は。
・告白の回避パターンは解析済みよ
回避パターン解析って、駄目もとじゃない…。
っていうか、待ってよ。
さっきから、訓練と声がけがごっちゃになってるじゃない。
落ち着け。
落ち着くんだ。
今がチャンス、告白しないと。
出来るかな…いや、出来る!

自身を訓練と声がけがごっちゃになっていることを、自覚しながらも。
訓練の方に意識が傾かなかったのは、恋の成せる技なのだろう。

「ジュナス君!」
「はい!?」
混乱しきった頭で、告白という結論に達してしまったパメラは。
思い切り椅子から立ち上がり、彼の名前を呼んだ。
その際に。
肘で全艦内放送のスイッチを入れてしまったことなど、今のパメラには気付きようもなかった。