ジュナス篇B


ジュナスは呆然としていた。
何を言われたのか、さっぱり分からない。
いや、「私」は分かった。
でもそれ以外に何を喋ったのか、全然分からない。
さっきまで、真っ赤な顔をしていたパメラは、見る見る内に青ざめ始め、そしてまた再び真っ赤になり始めた。
何か可愛いな、とか思ってしまう。
しかし。
しかし、である。
そんなワケの分からないことを言われても、今は訓練中だし。
反応のしようがない。
とりあえず、僕が何かしたのかどうか分からないが、彼女が僕を責めているように見えることは確かだ。
だから、
そう、だからジュナスは、とりあえず謝ろうと思った。
謝って、訓練を続けて、その後で、話を聞こうと思った。
真っ赤な顔をして、放心しているパメラにジュナスはこう言った。
「あの、…ごめん。今はこうするしかないんだ」
訓練を続けようと言ったつもりだった。
頭が回ってないのか、少し分かりにくい言い方だな、とは思った。

その言葉を聴いたパメラは、目を見開いて驚愕したような顔になった。
それはそうだろう。
告白したら、ごめん、と謝られたのだから。

パメラはその大きな瞳に特大の涙を滲ませ、そして大声で泣き始めた。
「え…えー…?」
逸材と謳われたジュナス・リアムも、『恋は全盲目』状態になったパメラをどうにもすることが出来なかった。
しばらく呆けていたジュナスは、後ろから空気の抜ける摩擦音と共に自動ドアの開く音を聞いた。
恐る恐る振り返ったジュナスが目にしたのは、
「この馬鹿」と、冷ややかな目線を送っているアヤカ・ハットリと、
特大級に顔を強張らせたルナ・シーン艦長代理の姿だった。