女性陣はいかにしてチョコを手に入れているか、という説明(?



そもそもな話。
仮にも訓練中である軍の艦内で、バレンタインなどが成立するものか、と、ごもっともな疑問を持つ方もおられるだろう。
しかし、前艦長であるゼフィールと、総司令官であるゼノン・ティーゲルが、認めているのだから仕方がない。
認めている理由を挙げれば、
「隊員の士気に影響するから、出来るのならやったほうが良い」
というのが建前で、
「チョコ美味しいじゃない」
というのが本音だった。
要するに、自分たちが食べたいから認めているのだった。
職権乱用もいいところなのだが、ただでさえ出会いの少ない軍の中におり、日々、訓練漬けの毎日を送って、ストレスを溜めているクルーの思惑と一致し、このバレンタイン行事は成立していた。
何とも平和なものである。
それでも『いい男』がいないキャリー・ベースでは、惰性感が漂う義務イベントだったがのだが…

さて。
2月14日の朝。
軍のバレンタイン行事に目を付けたお菓子会社は、訪問販売業務を開始していた。
ここ、キャリー・ベース内でもチョコレートの訪問販売を行っていた。
そして、その販売業務を任されているエイブラム・ラムザットという男がいる。
エイブラムは、辟易していた。
ただでさえ仏頂面なのに、不機嫌も相まって、さらに人相が悪くなる。
その理由は、並べられたチョコを睨んで動かない一人の女性のせいであった。
本来ならば、とうに販売を済ませ、会社に戻って報告をしなければならない時間である。
なのに、このチョコを睨んで動かないたった一人の女性のせいで、それが出来ないのである。
もう30分以上になる。
何度も声をかけたが、ガン無視。
店をたためばいいだけの話なのだが、根が真面目なせいで、売らなきゃいけない、という意識が働き、それも出来ないでいる。
とっととこの似合わないピンクのエプロンを取ってしまいたい。
会社に戻って、報告書を作って、決済を通して、来年の予算案を作成しなくてはならない。
エイブラムは、早く買え、というオーラをかもし出しているのだが、その女性、ネリィ・オルソンは、全く動じることはなかった。