最終篇L  〜世界が眠る日〜



「このチョコ、開けていいかな?」
「あ、はい。私が買ったんじゃないですけど」
「そういうことは言わないの」
そうパメラを制したのはエリス・クロード。
傍らにはシェルド・フォーリーが立っている。
「開けて見せてよ。ジュナス」
「駄目!駄目ったら駄目!絶対に駄目ぇ!!」
今にも頭から湯気が昇りそうなほど顔を真っ赤にしたルナ・シーンが叫ぶ。
何とか彼らの元へ行きたいのだが、ニキ・テイラーに羽交い絞めにされている為、身動きが取れない。
果たして、ルナ・シーンが買ったこのチョコレート。
送るつもりの無かったこのチョコレートに。
一体、何が書いてあるのか。
「…いいんですか?」
既にこのチョコレートが、本来誰の物であるかは、分かっている。
ジュナスは、果たして開けていいものかどうか考えあぐねていた。
「いいから、いいから」
ニキがそう口だけ動かした。
ニキは、最早、告白どうのこうのと言うより、親友の買ったチョコの中身がみたいだけである。
意外と意地悪ね、この女。

「じゃあ…」
と、袋を破り、箱を取り出し、蓋を開けたジュナスの目に飛び込んできたのは。

愛しい貴方へ日ごろの感謝を込めて…ルナ・シーン

(見てはいけないものを見てしまった…)
ジュナスもパメラも、エリスもシェルドもそう思った。
四人の視線は、ほぼ同時にルナ・シーンへと向けられる。
彼女は、
「死んじゃう!恥ずかしくて死んじゃう!ばか!ニキのばか!あぁうぁもうお前ら全員ばかぁ!」
と、泣き崩れていた。

「ふぅ…」
一人、輪から外れたところで、マーク・ギルダーは休んでいた。
「疲れた…」
そこに一人の女性が歩み寄る
「お疲れ様です」
「うん、本当に疲れたよ…エターナ」
エターナと呼ばれた女性は、彼の隣に腰掛ける。
「エターナ」
「はい」
「膝枕、しれくれないか?」
「…はい?」
「昨日、してあげたよね。俺」
「いや、ちょっと、こんなところでは…」
「駄目だ、眠い…」
彼はそう言うと、エターナに寄りかかり、寝入ってしまった。
一方のエターナは少々がっかりしていた。
(何だ…眠いだけで、甘えたいわけじゃなかったのか…)
それでも、自分によりかかり、気持ち良さそうに眠っているマークの頭を、彼女はずっと撫で続けていた。