最終篇A  〜阻止限界点〜



「救護艇を向かわせろ、大至急だ!」
「無理です!とても40分では…」
「キャリー・ベースを発進させては…?」
「救護艇よりも遅いんだぞ?駄目に決まってる!」
「じゃあ、どうするんだよ!」
「見殺しにするのか!」
「40分以内に、パメラの位置までに到達できる方法は!」
「パメラ!?聞こえるか、僕だ!ジュナスだ!パメラ?聞いているんだろ?応えてくれッ!」
アヤカのインカムを奪い、ジュナスはインカムに怒鳴る。
しかし、返ってくるのは静寂のみであった。
「ウソだ…こんなの、ウソだ…」
「ジュナス!」
「こんな馬鹿なことがあってたまるかぁーーッ!」
静寂、混乱、そして無力感が司令室を包み始める…。

「あの!」
そこで、1人の少年が前に進み出る。
その少年の名は、シェルド・フォーリー。
「ルナ艦長代理」
「何だ?」
「先日深夜、自分とすれ違ったことを覚えておりますでしょうか」
「それが、何だ」
「あの前、自分は、廃棄寸前のギガ・ブースターを改造していました」
「何で?」
「勝手に?」
「黙ってろ!シェルド、続けろ」
ルナ・シーンはシェルドの話を促した。
「はい。咎めは後で受け入れます。実は数十日前から数回にわたって改造していました。あの日、その改造が終わってMSに寄りかかって一休みした後、自室に戻る際に、艦長代理とすれちがったのです」
「簡潔にまとめろ」
「…はい。その改造の成果で、1段階ほど移動能力が向上しています。それをMSに搭載すれば…間に合わないでしょうか…?」
「搭載に何分かかる?」
「20分、いや、15分…」
「計算しろ!」
「ギガ・ブースターの性能向上条件入力。…駄目です。それでも間に合いません!」
「第一、この艦には、パイロット訓練生が無茶しないように、わざと空中分解する危険のあるヅダしかないんですよ?」
「後は砲撃訓練用のガンダム4号機とヨルムンガンド…」
「届かない…の…?」

「なら、足りない距離分をガンダム4号機で押し続けよう」
司令室のスピーカーから、声が聞こえる。
司令室モニターに、ガンダム4号機に乗っているパイロットの姿が映し出される。
その名は、ギルバート・タイラー。
「幸い、ヨルムンガンドじゃないから観測データは必要ない。メガ・ビームランチャーの威力を最低に、砲撃距離を最大にして打ち、ビームの勢いが無くなるところまで行ったら、あとはシェルドの改造ブースターを発動させりゃいい」
「それで、間に合うんですか?」
「無理だよ!ヅダの装甲じゃ打ち抜かれて終わりだよ!」

「予備のIフィールドがあるだろう?この艦には」
1人の青年が、言葉を発する。
その名を、マーク・ギルダー。
「Iフィールドを、ヅダ後方に取り付ける。ビームを弾きつつ、押し続けてもらうのさ」
「弾くだけなんじゃ…?」
「Iフィールドを付けてても、ビームの勢いに押されることがあるんでしょう?そう習いましたが?」
「バックパックのブースターでビームの勢いに抵抗しないから…行けるかも…」
「それなら、2分の余裕で間に合います!」
出された案をデータに入力しつつ、計算していたアヤカがそう言った。

「まとめよう…」
ルナ艦長代理が言う。
「まずは、G04のビーム射撃で、ヅダを加速させながら運ぶ。ビームが切れたら、オプションパーツを転換。改造ブースターで、再度、一気に加速する…」
「15分で取り付け出来るんですか?」
「整備班!シェルド、ミンミ、ニードル来い!」
ケイ・ニムロッドが3人に告げる。
「話がまとまったなら、一刻の猶予もない!急ぐぞ」
「俺がやったんだ…」
ニードルが、呟いた。