最終篇B  〜強き決意〜




「俺がやったんだ…」
ニードルの呟きを、偶々近くにいたブラッドが聞いた。
「何だと?」
「俺が、やったんだ…!司令室の機械をいじり、座標を狂わせたのは、俺だ…」
ニードルは、空ろにそう呟くと、膝から崩れ落ちてしまう。
「…馬鹿な!」
「なんでそんなことを」
「ふざけるな」
それぞれの怒号が響く。
「うるさい!」
それを一喝したのは、マークだった。
「ニードル、今、言ったことは本当か」
「…あぁ、本当だ」
「パメラを、こんな目に合わせようとして…か?」
「違う!訓練なんかなくなりゃいいんだとやったことだ…こんなことになるなんて、思ってもいなかった!」
「その言葉、信じていいのか…?」
誰かが呟く。
「俺だって…あぁ、そうだな。確かに俺は落ちこぼれだ…こういうことを平気でやっちまう人間だ…でもな…」
ニードルは、そこで吼えた。
「俺だって、人が死んでいくのを黙って見ていられる人間じゃない!」
「…ニードル」
そこでシェルドが、彼の名を呼んだ。
「頼む、シェルド、ケイ、ミンミ。俺にも手伝わせてくれ。シェルド、お前には何も適わないが、唯一、Iフィールドの取り扱い方だけは、お前より俺がやった方が早い」
「私は、いま、お前の名前を呼んだはずだが?」
ケイ・ニムロッドが、ニードルに告げる。
「さっさと来い!」
「…了解だ」
「行くであります」
整備班が司令室から、駆け出していく。
「…シェルド!」
ジュナスが、シェルドの名を呼ぶ。
シェルドは出入り口付近で立ち止まり、ジュナスのほうへと振り返る。
「…ジュナス、僕に任せろ」
「…頼む!」
そうしてシェルド・フォーリーは駆け出していく。

「さて、整備班が、ヅダを仕上げるまでの時間だが…15分かかると言っていたな…」
「っていうか、誰がヅダを操縦するんです!」
「僕が行きます!」
ジュナスが、レイチェルの疑問に答える形で名乗り出た。
「駄目だ!お前はパイロット訓練を行っていないだろう!」
ニキ・テイラーがジュナスを一蹴する。
「僕が行かなきゃ…僕が行かなきゃいけないんです!」
「…」
「…駄目だ。許可できない…」
ニキは首を振る。
「じゃ、俺が連れて行こう」
そこで、マーク・ギルダーが手を上げた。
「マーク!?」
「マークさん?何を!?」
皆がそれぞれに驚く。
「俺は艦長見習いだ。艦長として、通信、整備、操舵、パイロット…それぞれに精通出来るようここで訓練を受けてきた…俺が行くなら、異論あるまい?」
「君は、訓練生だろう!」
ルナ艦長代理が咎める。許可できない、ということなのだろう。
「俺は、昔、妻を失った」
マークが静かに、自らの過去を告白する。
「その時、二度と立ち直れないと、そう思った。来る日も来る日も、ベッドの上に身を横たえていた…体に何の力も湧かなかった…あの時の、辛さを、同じ気持ちを、こんな少年に味あわせたくは無い!!」
マークは、ジュナスを指して、そう言った。