最終篇H  〜宇宙の虹〜




それは、確かに存在していた。
名前も持たず、
姿も持たず、
意識さえ持つことなく、
ただ、そこにあるだけの存在だった。

その存在は、
自分の中に走り始めた一筋の光を感じていた。
そして、
そこにいる少年の思いを、感じていた。
何も思わない。
何も感じない。
何もしない。
ただ、それだけの存在であったはずだった。

しかし、
その存在は、
少年の鼓動を感じた。
少年の想いを感じた。
と、同時に、
自分の中を漂う少女の息吹を感じた。
彼と彼女の無事を願う、他の人間たちの思いを感じた。

その存在は、理解した。