第三十二回【参上! 調理室に落ちたサムライ!!】
料理:ピリ辛揚げ焼き秋刀魚
助手:ケイン・ダナート




ブラッド「諸君…ワタシは料理が好きだ…
     諸君……ワタシは料理が大好きだ!」
ジュナス(いきなりなんか語りだした…?)
ブラッド「…肉料理が好きだ…
     魚料理が好きだ…
     卵料理が好きだ…
     野菜料理が好きだ…
     豆料理が好きだ…
     鍋料理が好きだ…
     フランス料理が好きだ…
     イタリア料理が好きだ…
     中華料理が好きだ…
     ゲテモノ料理も好きだがこれは不評だ…

     調理室で、野戦キャンプで……
     …野戦病棟で…後方で…
     或いは空中の艦内で、もしくは潜水艦の中で…
     ……無重力で、月光蝶の光が輝く中で…
     この世界で行われるありとあらゆる調理行動が大好きだ…

     ただの野菜や肉塊が並べられたまな板を…包丁が軽快なリズムを刻む音と共に食材へと変貌させるのが好きだ…
     …巨大なる素材を…一口サイズまでバラバラにした時など心が踊る……

     ……危険で食えたものではない生の食材を…加熱調理するのが好きだ…
     音を上げて熱される油から取り出した…揚げ物の油を専用の紙で吸い尽くした時など、胸がすくような気持ちだった…

     戦闘を終えたゴミどもの集団が、料理の配置されたテーブルを蹂躙するのが好きだ…
     …空腹状態のゴミどもが、既に料理の食い尽くした食器を何度も…何度も刺突している様など感動すら覚える…

     …チャーシューにタレを染み込ませる為に吊るし上げていく様などはもうたまらない…
     小骨の多い魚がワタシの振り下ろした包丁の前に次々と捌かれていくのも最高だ…

     哀れな灰汁どもが茹で上がる泡の中から健気にも立ち上がってきたのを
     専用の灰汁取りで一網打尽にした時など絶頂すら覚える…

     ……予想外の事態に調理計画を滅茶苦茶にされるのが好きだ…
     必死に守るはずだった蒸し時間が、タイマーを押し忘れた事により
     見るに耐えない状況になる様は……とてもとても悲しいものだ……

     調理スケジュールの物量に押し潰され…自由時間が奪われるのが好きだ…
     腹を空かしたゴミどもに追いまわされ……料理の催促をされることは屈辱の極みだ…

     諸君……ワタシは料理を…地獄の様な料理教室を望んでいる…
     諸君…このワタシに付き従うゴミ虫諸君…
     ……キサマらは一体何を望んでいる?」
ジュナス(急にこっちに振ってきた!?)
ブラッド「………更なる料理教室を望むか?
     情け容赦のない戦争の様な料理教室を望むか?
     鉄風雷火の限りを尽くし…マークの愛機である不死鳥すら焼き鳥とする、嵐の様な料理を望むか?」
ドク「料理ぃ! 料理ぃぃ! 料理ぃぃぃ!!!」
ジュナス「(とりあえず合わせておくか…)りょ、料理!」
ブラッド「…よろしい、ならば調理開始だッ!
     我々は……渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする中華包丁だ!
     だがこの調理室の中で一年と十ヶ月もの間……料理教室を放送し続けてきた我々に、ただの料理ではもはや足りない!!
     ……大料理を!!
     一心不乱の大料理を!!
     我らオリキャラ軍はわずかに数十人に満たぬ少数部隊に過ぎない!
     …だがキサマらは一騎当千の古強者だと私は信仰している!
     ならば我らはキサマらとワタシで総力100万と1人の調理集団となる!」
ジュナス「…え?」
ブラッド「…真の料理の味を忘却の彼方へと追いやり、不味いレーションを喰って眠りこけているゴミどもを叩き起こそう!
     髪の毛をつかんで引きずり降ろし、口を開けさせスープを流し込もう!
     連中に真の料理の味を思い出させてやる…
     …連中に我々の調理の腕を思い出させてやる!
     時空、世界観の壁すら超え行動する我々には……奴らの料理哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやるッ!
     一千人にも相当する料理人達のオリキャラ軍で…ガンダム世界を燃やし尽くしてやる!」
ジュナス「いや、あの…
     盛り上がってるところ悪いんですけど、なんなんですかこの語り?」
ブラッド「フン、例のSSの投下も終わり……ようやくこちらも再開ということで
     この辺りで、ワタシ自身の野望を語らせてもらった……」
ジュナス「野望、ですか…
     …というか、僕達って調理集団だったんですか?」
ブラッド「いずれはな……ククク、この番組を通じ……我が軍の構成員全ての調理技術を向上させ
     いずれはこのオリキャラ軍を「最強の調理軍団」へと変貌させ……その料理の腕をもって各世界、各時代へと凱旋し
     腕を振るい、各世界のゴミどもの舌を唸らせてやろう……というのがワタシの真の野望なのだ……」
ジュナス(何だその野望…)
ブラッド「……そして、我らの腕を全世界に知らしめた後!
     その時は……資金稼ぎ用料理屋「ビストロ・オリキャラ軍」を開店し、瞬く間にチェーン展開をし荒稼ぎする!
     ……どうだ? ワタシを筆頭とする料理技術を持つ兵士による最高の料理に加え…
     …接客担当には魅力値の高い連中を使い、男女問わず料理以外の点での集客も見込める……
     クククク、最高の料理屋だとは思わんかね?」
ジュナス「はぁ…」
ブラッド「……その時はジュナス、キサマも接客要因として働いてもらうぞ?」
ジュナス「えぇ、僕も!?」
ブラッド「その通り! 魅力値とはそういった時に活かされるべき能力値なのだよ……ククク!」
ドク「そん時はぁぁ! オレもせっきゃくてつだってやぁぁぁるぅぅぅ!!
ブラッド「いや、キサマはいらん……
     …まぁ、まだ野望の段階だがな。いずれ達成してやる……」



ブラッド「クククク…ともかく、語りも終わった所で……久々の料理紹介だッ!
     ともかく、まずは野望の第一段階である「我が軍の構成員全ての調理技術向上」を
     少しずつでも達成せねばな!」
ジュナス(こんなこと言ってるし…さっきの語りは冗談じゃなくてガチだったのか…?)
ドク「どぉぉでもいいけどぉぉぉ!! はやく料理しちまおうぜぇぇぇ!!」
ブラッド「…フン、言われるまでもない……ともかく、ようやく秋の味覚の紹介ができるというものだ。
     善は急げともいうからな…早速、助手の入場だッ!」
ジュナス「はい、それでは入ってください!」
プシュー(ドアの開く音)
ケイン「…ケイン・ダナート! 只今参上…!!」
ドク「おぁぁぁ! ケイィィィン久しぶりぃぃぃぃ!!」
ケイン「おお、ドク殿!…ブラッド殿! 久方ぶりだのう! ジュナス殿は剣の稽古以来かのう?」
ジュナス「そうですね。」
ブラッド「しかし……よりによってキサマとはな。
     ゼノンからの紹介かね…?」
ケイン「違う…今回は拙者自らが志願した!
    調理もまた武芸の内! 精神鍛錬の意味も含め、ここで束の間ではあるが、修行に励みたい!!」
ブラッド「調理も武芸の内……クククク、成る程。
     中々良いものの捉え方をしているようだ…
     その上今回は秋の味覚の一つ、秋刀魚を調理するからな…キサマ向きと言えるかもしれんな…」
ケイン「秋刀魚とは! ならば拙者も本気でかからねばなるまい!!」
ブラッド「クククク……心意気はいいようだ。さぁ、まずは材料の紹介だッ!」
ドク(ジュナスぅぅぅ! ケインって「ござる」口調じゃなかったっけぇぇぇ!?)
ジュナス(僕もうろ覚えですけど、違うみたいですね…)

『ピリ辛揚げ焼き秋刀魚』材料紹介
・秋刀魚  
・片栗粉
・サラダ油
・醤油
・砂糖
・酒  
・味醂
・酢・豆板醤
・ねぎ・鷹の爪

ケイン「これが材料か! 今から腕が鳴るわい!」
ブラッド「ククク、そうだろう……秋刀魚は今年は不漁だった上、書き手のゴミが変な時期に別のSSを投下してしまったが為に
     微妙に旬を逃してしまったが、まぁ気にするな…
     …秋刀魚といえば焼き魚のイメージが強いだろうが、それではあまりに芸が無い……
     今回は揚げさせてもらおう…
     ……ジュナス、ドク…気が抜けているところ悪いが、今回はキサマらにも調理をしてもらうぞ?」
ドク「えぇぇ!? オレらもぉぉぉ!?」
ジュナス「何で僕たちが?」
ブラッド「フン、改築以降数人同時の調理が可能となったのだ…
     せっかくだ、今回はキサマらも自分の分は自分で作れ、これは命令だ……」
ドク「よくわかんねぇぇけどやったらぁぁぁぁ!!」
ジュナス(ノりやすい人だなぁ…)
ケイン「ドク殿もジュナス殿も、拙者と共に鍛錬しあおうではないか!」
ジュナス「そうですね、じゃあ料理をはじめましょう!」
〜中略〜
ブラッド「クククク…まずは醤油、砂糖、酒を各大さじ一杯弱、そして味醂、酢、豆板醤を適量あわせておけ…」
ケイン「この程度…拙者にとっては朝飯前!!
    ……見えた、味醂はあと一滴!!」
ジュナス「上手いですね、料理はできる方なんですか?」
ケイン「ブラッド殿には及ばんがのう!」
ドク「混ぜる混ぜるぅぅぅ!!
   混ぜて混ぜてぇぇ、混ぜまくるぅぅぅぅ〜!!」
ブラッド「この場合、ドクは悪い例だ…
     ……次はいよいよ秋刀魚だ。一人一匹使うぞ…
     ちなみに魚の数え方は色々とあるが、秋刀魚に関しては「匹」単位で数えるのが正解のようだ……」
ケイン「ついに秋刀魚との死合いが…!!」
ブラッド「秋刀魚は頭と尾を切り落とし、ワタを抜き……水洗いして水気を拭き取るのだ。
     そして、一尾を四等分に切り片栗粉を薄くからめる……骨及び小骨はこの段階で身から抜くわけだが
     これが中々奥深い行程だ……まぁ、キサマらの場合は説明するより見せた方が早かろう。
     ワタシの包丁捌きを見て、せいぜい技を盗むがいい……」
ケイン「うむ。お主の腕前………見せてもらおうか!!」
〜中略〜
ケイン「…見事! 真に見事な包丁捌きであった!
    これぞブラッド殿の武芸!」
ブラッド「……久しぶりだな、こうも素直な助手役が来たのは…
     感心するのはいいが次はキサマらだ、せいぜい頑張るのだな…」
ケイン「うむ! 調理もまた武芸の内…不慣れでも遅れは取らん!」
ジュナス「小骨取りか、上手くやれるか…」
ドク「ハァーッハッハ! 取って取って取りまくるぅぅぅ!!」
ブラッド「……待てドク、キサマは今ワタシが捌いた秋刀魚を使え…」
ドク「えぇぇ! なぁぁぁんでぇぇぇ!?」
ブラッド「キサマには小骨取りのような繊細な作業は不可能だ……」
〜中略〜
ブラッド「苦戦中のようだなジュナス…」
ジュナス「思ってたよりずっと難しいですね…」
ブラッド「フン、この作業に関して言えば通常の包丁捌きの技術だけではどうにもならんからな……」
ケイン「…見えたッ!
    ゆくぞ! 新秘剣、秋刀魚開きーッ!!」
ザシュ!!
ブラッド「な……何だと!?
     この速さでこの捌かれよう…小骨も全て抜かれている!? キサマ何をした……?」
ケイン「ついに完成した、新たな秘剣が! 我が武芸にも死角なし!」
ブラッド「……この手のノリの必殺技は好みでは無いのだが…素晴らしい!
     素晴らしいぞ、ケイン・ダナート!!」
ジュナス(ブラッドさんまでそっち寄りに…)
ドク「暇だぁぁぁ!!」
ブラッド「ならばその間に次の行程の準備をしておけ、ゴミが…
     ……切った秋刀魚の身は片栗粉を薄くからめると…先程言っておいたはずだがな…」
ドク「そぉぉだっけぇぇぇ!?」



〜中略〜
ブラッド「片栗粉はからめ終わったかね? ……終われば早速揚げに移る!
     フライパンにサラダ油を入れ熱し、捌いた秋刀魚を並べ入れ…
     ……そして蓋をし、両面こんがり焼き目がつくまで焼くのだ!
     それが終われば、余分な油はキッチンペーパーなどで拭き取る……」
ケイン「では火攻めと参る!!」
ブラッド「……蓋をしているからな。焼き加減の調整が難しい…せいぜい気をつけるのだな。」
ジュナス「やってみます!」
ドク「焼く焼くぅぅぅぅ!!」
プルルル…
ブラッド「…ん、通信か。」
ケイン「な、なんじゃ今の奇怪な音は!?」
ジュナス「ただの携帯の着信音ですよ。」
ケイン「携帯? うーむ、なるほどわからぬ。」
ブラッド「………誰だキサマは? …何だリコルか。何か用かね?」
ケイン「ブラッド殿は誰と話しておるのだ?」
ジュナス「電話だから、そりゃ相手の人ですよ。」
ケイン「ここにおらぬ相手と? なるほどわからぬ…」
ブラッド「ゼノンが呼んでいるだと…? 仕方あるまい、すぐ行くと伝えろ!」
ピッ!
ブラッド「…少し用ができた。しばしの間席を外す……
     焼きあがれば、先程合わせた調味料に秋刀魚を絡め、器に盛って小口切りにしたねぎと鷹の爪を散らせば完成だ…
     ……キサマら、できるな?」
ケイン「心配には及ばぬ!」
ブラッド「フン、では行って来るぞ……」


ジュナス「…普通、番組撮影中に用事ができたら中断すると思いませんか?」
ケイン「恐らくブラッド殿なりに考えがあってのことだろう。」
ドク「…うぁぁぁッ!! うまくやけねぇぇぇ!!」
ケイン「む、義によって助太刀いたす!」
〜中略〜
プシュー(ドアの開く音)
ブラッド「今戻ったぞ……さぁ…キサマら料理は完成したかね?」
ジュナス「完成はしたんですけど…」
ブラッド「何だ、何かあったというのか……」
ドク「なんかよぉぉぉ! ケインのヤツが凹んじまってんだよぉぉぉ!!」
ブラッド「何だと…? ケイン、どうしたというのだ……」
ケイン「……ブラッド殿、拙者は…拙者は未熟な戯けじゃ…
    一人前の技量も無いのに、ドク殿の料理にいらぬ助太刀をし…
    某の秋刀魚を焦がしてしまったのじゃ…」
ブラッド「焦がした……?
     ……確かに多少焼きすぎの感はあるが、はじめてにしてはかなりいい出来だと思うのだがな…」
ジュナス「で、ですよね! ケインさん、そんなに気にする事じゃありませんよ!」
ドク「そぉぉだよぉぉぉ!」
ケイン「見え透いた慰めなど、拙者には不要!
    無念……拙者にもっと冷静さがあれば、より完璧なものを料理できたというのに…
    やはり付け焼刃の調理技術など通用せんのか…」
ブラッド「………
     ……ジュナス、ケインは完璧主義者だったのかね?」
ジュナス「そうみたいですね…」
ケイン「これでは、この秋刀魚にも、手ほどきをなさってくれたブラッド殿にも申し訳が立たぬ…
    この上は……この腹かっさばいてお詫びせねば!!」
ブラッド「ま…待てケイン!!」
ジュナス「脇差しを!?」
ドク「おぉぉぉ!! ハラキリってヤツかぁぁぁぁ!?」
ケイン「そうじゃ、これぞジャパニーズ・ハラキリ!
    番組を見ている皆の者も見てくれい、拙者の散り際を!
    武士道とは死ぬ事と見つけたり! ブラッド殿、介錯を頼み申す…」
ブラッド「……そんなものが放送できるかッ!! ジュナス、ドク!
     ケインを止めるのだ! ワキザシとやらを取り上げろ!!」
ジュナス「で、でもこっちは素手ですよ!?」
ドク「オレハラキリ見たいかもしんないかもぉぉぉ!!」
ブラッド「見世物ではないぞゴミがッ! 散開し、ケインを包囲…」
ケイン「何故じゃ! 何故、武士の死に様を理解してくれぬ!?」
ブラッド「理解できるものか! ともかくジュナス、ケインを確保する前に番組を締めておけ!」
ジュナス「は、はい! それでは今回はこの辺で!」