第三十五回【淡白! 無気力料理教室!】
料理:豆腐ステーキ
助手:シャノン・マシアス



〜調理室〜
カル「おはようございます!」
ブラッド「フン、来たか……今日は早かったようだな?」
カル「はい、前回は場所がわからなくて…
   …あれ、この間の…あのテンションの高い人は?」
ブラッド「……ヤツもカメラマン役を降ろした。
     スケジュール上の問題もあるが、そもそもあまり撮影は上手くなかった上…
     …いただきますも満足に言えんゴミだったからな…」
カル「はぁ…
   (うまくやらないと、仲がいい人でも降ろされるんだな…)」
ブラッド「そもそもヤツは…
     …ワタシ自身忘れていたが、あくまで臨時のスタッフでしかなかったからな……
     次のあてが決まれば切られる運命だったのだ……」
カル「次のあて? じゃあカメラマン役には新しい人が…?」
ブラッド「そうだ……今回からはキサマの他に、もう一人この艦内番組撮影隊に編入される事となっている。
     今後のカメラマン役はそのゴミにやらせる予定だ…」
カル「そうなんですか。誰でしょうか、その人?」
ブラッド「……キサマの知っている者かもな。」
カル「オレが知ってる? それはどういう…」
ブラッド「いや、ワタシも知らん名でな…恐らくNEO勢の者かと思ってな。
     …しかし、約束の時間をとうに過ぎたというのにまだ現れんぞ……時間にルーズなゴミのようだな?」
カル「…もしかしたら、調理室の場所がわからなくて迷っているのかもしれないですね。」
ブラッド「…前回のキサマのようにか?」
カル「はい…ちょっと、探してきましょうか?」
ブラッド「フン、好きにしろ……」
カル「はい! 道に迷っていそうな様子の人がいたら、とりあえず声をかけてみま」
プシュー(ドアの開く音)
???「あはははッ! つかまえたよッ!」
カル「う、うわぁ! 誰だいきなり!?
   …ってシャ、シャノンさんじゃないですか!?」
ブラッド「やはり知り合いか…」
シャノン「カル! 最近見ないと思ったらこんな所で…何してる?」
カル「あ、アシスタントですよ。艦内放送の…」
ブラッド「……シャノンといったか。
     キサマはこの番組のスタッフに抜擢された。通達が届いていただろう…」
カル「え、シャノンさんですか!? ここに配属されたのって…」
シャノン「ん? あぁ…そうみたいだな。」
ブラッド「(何故この時期にスタッフをNEO勢で固めるのか…
      ゼノンは何を考えている……ただの番組のマンネリ防止策とも思えんが……… まぁいい)
     シャノンといったな……キサマはカメラマンとして登録してやる。
     有り難く思え…」
シャノン「…カメラマンだと? 面倒臭い役を押し付けやがって。勝手にやってろ。」
ブラッド「なんだその言いようは…」
カル(まさかシャノンさんが来るなんて…
   こんな二人と…料理番組なんてできるのか…?)
ブラッド「歴代カメラマンは射撃値偏向のゴミが多かったが…
     …キサマはどうなのだ?」
シャノン「射撃よりは格闘の方が性に合ってる…」
ブラッド「(適正すらも、配置に合っていないだと…?
      まさか、ゼノン……適当か…? 特に理由も無く適当に決めたというのか…)
     …ともかく最初はスタッフとて助手からはじめてもらうぞ。
     これまで、全員がそうやってきたのでな…」
シャノン「そうかい…しゃらくさいねぇ。」
カル「でもブラッドさん、カメラマンをやりながら料理をするなんて無茶じゃあ…」
ブラッド「クククク…安心しろ。初回の今回は助手を優先させる…
     …という事はクロサワ、今回はキサマがカメラマン役をやるという事だ!」
カル「オ、オレがですか!?」
シャノン「…適当にやっとけ。」
カル「は、はぁ…(カメラワークのシミュレーションなんて、やったことないぞ…)」
ブラッド「フン……さぁ、では早速調理開始といくかッ!!
     さぁ! どう料理して欲しい!?」



『豆腐ステーキ』材料
・豆腐
・舞茸
・生姜
・しょう油
・みりん
・オイスターソース
・コショウ
・片栗粉

シャノン「…豆腐だと? ステーキは肉だろ。」
ブラッド「フン、常に上等な肉が手に入るとは限らんからな……
     だからといって合成蛋白の肉ばかりでは味気も無いし栄養も偏る……そこでこの豆腐ステーキだ!」
カル「と、豆腐ハンバーグはよく聞きますけど、ステーキは珍しいですね!」
ブラッド「クククク…そうだろう! これがなかなかバカにできん料理でな……
     では調理法の説明だ! さぁ…シャノンとやら! よく聞いておくがいい…」
シャノン「面倒くさいねぇ…」
ブラッド「ええい、やる気を出さんか…
     …まず豆腐だが、これはキッチンペーパーに包みこみ、その後ザルにあげる! 十分程度な…
     それが終われば次に…豆腐を厚さ二分の一程度にスライスして、新たなキッチンペーパーで軽く包む!
     軽くだ… クククク、豆腐は脆い! 繊細な扱いが求められる行程だ……
     さぁ、やってみるがいい…」
シャノン「脆いものを繊細にねぇ…アタシにそんな作業をやらせるって?
     しゃらくさい……カル、お前に任せる…適当にやっとけ。」
カル「オレが!? いや、今回の助手役はシャノンさんなんですから…」
シャノン「アタシがやれって言ってるんだ。やりな…」
カル「(うわ、凄い眼力…)
   …ブラッドさん、どうしましょう?」
ブラッド「シャノンとやら…クロサワはキサマの召使か何かかね?」
シャノン「そんなようなもんだ。」
カル「ち、違いますよ!!」
ブラッド「成る程、召使ならば仕方が無いな……
     …クロサワ、やれ…」
カル「えぇ!? 本当にオレが?」
ブラッド「…冗談を言っている顔に見えるかね?」
シャノン「とっととやりな…時間の無駄だ。
     カメラはアタシが適当にやっといてやるよ…」
カル「わ、わかりましたよ、やりますよ…
   (この調理場は…地獄だ…)」
〜中略〜
カル「そ、それでは次の行程です!」
ブラッド「……次も下準備の一種だな。
     舞茸は少し大きめにほぐしておき……生姜は細切りにしておけ。
     …そして同時に、醤油、味醂、オイスターソース、胡椒等の調味料各種を混ぜておく…
     ……味は好みで調節するがいい。」
シャノン「…だそうだ。適当に混ぜまくれ。」
カル「ここもやっぱりオレですか…」
シャノン「胡椒を多めにな。」
カル「(そう言うなら自分でやればいいのに…)…わかりました。胡椒を多めにですね…」
ブラッド「…味醂が少なすぎる! それではいい風味にならんぞ…」
カル「す、すみません!
   (じゃあ自分でやれよコイツら…)」
シャノン「…今のうちに次の説明をしな。時間の無駄だ…」
ブラッド「フン、いいだろう……
     …下準備の後、豆腐に片栗粉を薄く塗し、多めのサラダ油をしいた
     熱したフライパンの上で、焼き目がつくまでしっかりと焼き付けろ。しっかりとな……
     ……片栗粉を塗したらさっさと焼くがいい。両面をしっかりな……
     ここは重要だ…」
シャノン「だとさ。カル…」
カル「待ってくださいまだ途中で」
シャノン「とっととやるんだよ!」
カル「わ、わかりましたよ、これでも急いでますから…」



〜中略〜
カル「お、終わらせました!」
シャノン「遅すぎだ、テキパキやれ。」
カル「くぅ…」
ブラッド「…続けるぞ。豆腐をしっかりと焼き込めば端に寄せ、舞茸を投入し軽く炒めろ……
     ……それが終われば一端火を止め、温度を下げるのだ…」
カル「はい、舞茸を…」
シャノン「なんだそのキノコは、美味いのか?」
ブラッド「クククク、調味料とよく合うぞ……」
カル「(シャノンさんは助手役の自覚があるのか…?)
   …ブラッドさん、次は…」
ブラッド「次かね? 温度が下がれば次は生姜と先程混ぜた調味料を投下し
     中火で皿に炒める……俗に言う「炒め煮」という行程だ…」
カル「はい、やってやります!」
ブラッド「途中で豆腐に胡椒をふっておくと尚いいだろう…
     ネギを入れるのも悪くない…ともかく、「照り」が出るまで炒め煮するがいい!」
シャノン「暇だねぇ…」
カル(まったくこの人は…)
ブラッド「舞茸と豆腐に調味料がよく絡めば、あとは皿に配置するだけだ…」
カル「はい! 一気に終わらせます!」
〜中略〜
シャノン「…やっとできたか。とっとと食べるぞ…」
ブラッド「クククク、そうするとしよう…」
カル「(ブラッドさんももうシャノンさんが助手役だった事を忘れてるな…)
   お、美味しくできましたね!」
ブラッド「そうだな…ククク、中々の仕上がりだ!」
シャノン「…肉のステーキの方が美味いぞ。」
ブラッド「……それを言っては何もかもお終いだ…」
シャノン「肉が喰いたくなってきた。カル、適当に肉を焼け。」
カル「えぇ!? 調理が終わったばかりなのに…」
シャノン「…いいから焼け。お前、肉くらいあるんだろ?」
ブラッド「まぁ……無い事は無いがな…」
シャノン「あるってさ…焼きな。」
カル「で、でもまだこの豆腐ステーキを食べきってもいないし
   番組だって締めなきゃ…」
シャノン「アタシが焼けと言ったら焼くんだよ!
     アタシは肉が食べたくて仕方なくて…傷が疼いてるんだよーッ!」
カル「そんな事で一々疼かないで下さいよー!」
ブラッド「……何でもいいがクロサワ、番組を締めろ!」
カル「は、はい! では今回はこの辺で!」