番外編【ジュナス孤軍奮闘! ブラッド不在の調理室!】
料理:カレー他



〜午前九時、食堂〜
ジュナス(おかしいな、今日はやけに調理室が静かだ…)
ラ「……ジュナス君。」
ジュナス「なんですかラさん?」
ラ「もしかして、聞いてないの?」
ジュナス「え? 何をですか?」
ラ「可哀相に…
  今日ブラッドさんがいないのは知ってるよね?」
ジュナス「そうだったんですか。どうりで静かなわけだ…」
ラ「……これ、受け取ってくれる?」
ジュナス「何ですか? 書類…?」
ラ「とりあえず読んでみて、それでわかると思うから…」
ジュナス「はい。えっと、何々…」

 本日、私ブラッドは艦長ゼノン、操舵士ハワードと共に慰安旅行に出かける事となった。
 私の不在の間の調理担当は、ドク、ニードル、そしてもう一人何者かを呼びつけ、その三人に委任することとする。
 三人目については先に挙げた二名の指名により決定するものとする。
 当然、拒否は許されない。
 これを読んでいるゴミよ。この書類が渡されたという事は、貴様がドクらに指定され
 三人目の臨時調理担当となったということだ。
 では、検討を祈る。
  オリキャラ軍最大の巨悪兼、鮮血の料理人 ブラッド

ジュナス「え…これって!?」
ラ「そう、今日の調理担当はあなた達三人なの…」
ジュナス「な、何で僕が!?」
ラ「ドクさん達に指名されたみたいね…」
ジュナス「そんな、大体なんでブラッドさんはドクさん達に…」
ラ「あの人の事だから、また思いつきか、適当に選んだかのどっちかだと思うわ。」
ジュナス「そんな事で…こんなこと、急に言われたって」
ラ「本当に同情するけど……これはね、もう決まった事なのよ。」
ジュナス「そんなぁ…」
ラ「気をつけてね、もし…万が一、ブラッドさんがいない間に
  調理室であの人を怒らせるような事があったら…」
ジュナス「あったら…?」
ラ「これ以上は私の口からはとても言えない…」
ジュナス「ちょっと! どういう事ですか!?」
ラ「言えない言えない、あまりに残酷過ぎて…」
ジュナス「残酷…?」
ラ「ミスでもしたら、残酷な未来が待ってる、ってだけ言っておくわ。
  …それじゃジュナス君、頑張ってね。」
ジュナス「は、はい…」
ラ(良かった、私じゃなくて…)
ジュナス(…残酷って、どういう事だろ…?)

〜午前十時、調理室〜
ニードル「…でジュナスよォ。何でオレらがここに集められてんだァ!?」
ドク「教えてくれぇぇぇい!!」
ジュナス「…もしかして、忘れたなんて言うんじゃありませんよね?
     ブラッドさんから何か言われてたでしょ?」
ドク「えぇぇ!? 何か聞いてたっけなぁぁぁぁ!!
   聞いてたような気がするかもしんないかもだしぃぃぃ! しないかもしんないかもぉぉぉ!!」
ニードル「何か言われてたっけなァ?」
ジュナス「しっかりして下さいよ二人とも!
     二人とも、今日はブラッドさんがいないのは聞いてますよね!?」
ドク「えぇぇぇ!! そぉぉぉだったっけぇぇぇ!!」
ジュナス(それも覚えてなかったのかよ…)
ニードル「あァ、確かんな事も言ってたなァ! それがどうしたってんだよッ!」
ジュナス「どうしたって…
     僕が聞いた話だと、今日一日の調理担当は僕とドクさんと、ニードルさんに任されてるって話でしたけど。」
ニードル「あァ? あぁ、んな事も言ってたっけなァ。」
ドク「お…おおッ! 思い出したぁぁぁ!!
   そぉぉぉいやぁ、んな事も言ってたっけなぁぁぁ!! ヒャアーハッハー!!」
ジュナス「笑ってる場合じゃありませんよ! 朝はブラッドさんが作ってから行ったみたいだからいいけど
     昼と夜のご飯は僕らが作らなきゃいけないんだから!」
ニードル「んだそりゃ、面倒臭ぇなァ…んなモンすっぽかしちまおうぜェ!」
ジュナス「そういう事は、安請け合いする前に言ってください!
     もう決まってるみたいなんですよ、今日の調理担当は僕とドクさんとニードルさんだって!
     僕が知らないうちに決まってたんですよ? ドクさん達が勝手に安請け合いするから…」
ドク「な、なんかごめんなぁぁぁ!!」
ニードル「ケッ…テキトーにやっときゃいいだろォ? メシなんかよォ。」
ジュナス「そうは言いますけどねぇ…とにかく、そろそろ調理を始めないと昼ご飯に間に合いませんよ!」
ドク「ハァーッハッハ! ちょぉぉぉり開始だぁぁぁ!!」



ドク「…つっても何していいかわかんねぇぇかもしんないかもぉぉぉ!!」
ジュナス「とりあえず…ラさんから委任状と一緒に、番組で紹介したレシピのデータを貰ってるから
     これを読んで何か作らないと!」
ニードル「あーメンドくせェ…で、何作るってんだよォ?」
ジュナス「えっと…とりあえず、レシピのデータは難易度別に分かれてるから
     適当に簡単なのを選んで、人数分作りましょう!
     じゃなきゃ絶対間に合わない…」
ドク「カンタンなのなんかつまんねぇぇよぉぉぉ!! 一番難しぃぃのやろぉぉぉぜぇぇぇ!!」
ジュナス「何言ってるんだ、そんなわけにはいかないでしょ!
     とにかく時間が無いんだから…」
ニードル「うざってぇなァ…カレーでいいんじゃねぇかァ?」
ジュナス「カレー? なるほど、カレーか!
     それなら大量に作れそうですね、何とかなるかも…」
ニードル「その…データだったかァ? それにも作り方とか載ってんじゃねェ?」
ジュナス「一個目にありました! …成る程、第一回目の放送でカレーを作ってたんだ…
     …! この時のアシスタントはドクさんじゃないですか!」
ドク「あれぇぇぇそうだっけぇぇぇ!?」
ジュナス「一回作った事があるならできますよね!
     良かった、これで昼は何とかなるなぁ…」
〜中略〜
ドク「ヒャアーハッハァー!! 肉も野菜もみんなぁぁぁぁ!!
   ズタズタにぃぃ、斬って斬ってぇぇ、斬りまくってやったぜぇぇぇ!!」
ジュナス「うわ、大きさバラバラじゃないですか! いいのかな…」
ニードル「どーでもいいんだよッ! ヒャヒャヒャヒャ!!」
ジュナス「…まぁいいですけど。切れたら次は…炒める、か。」
ドク「よぉぉぉしぃ!! オレにまっかせぇぇなさぁぁぁい!!」
ジュナス「お願いします! 僕はその間にごはんをといでおきますね。」
〜中略〜
ジュナス「えっと、次は…」
ドク「ヒャアーハッハァ! 炒め終わったかもしんないかもぉぉぉ!!」
ジュナス「そうですか、ありがとうござ…って黒コゲじゃないですか!?」
ドク「えぇぇ!? 黒かったらダメかぁぁぁ!?」
ジュナス「ダメに決まってるでしょ…
     あーあ、こんなに食材無駄にしちゃって、後でなんて言われるか…」
ニードル「ケッ、野菜なんざハナからいらねぇんだよッ! 全部肉だァ! ヒャヒャヒャ!」
ジュナス「そんな栄養の偏ったカレーで大丈夫かな…」
ドク「大丈夫だぁぁぁ!! 問題ねぇぇぇ!!」
ニードル「テキトーに焼いちまおうぜェ! ヒャヒャヒャヒャ!!」
ジュナス「でも…うわ、そんなに一気に焼くんですか!? 肉の種類もムチャクチャだし…」
ニードル「喰っちまえば一緒だぜェ!! ヒャヒャヒャ!!」
〜中略〜
グツグツ…
ジュナス「とにかく後は煮込むだけだな…福神漬も用意しなきゃ。」
ニードル「隠し味ってのは入れねぇのかァ?」
ジュナス「みんなで食べるものなんだから、あんまり冒険はできませんよ。」
ドク「かてぇぇぇこと言うなよぉぉぉ!! ぶっこむぅぅぅぅ!!」
ジュナス「あ…ちょっとドクさん、何入れたんですか!?」
ドク「セミの抜け殻だぁぁぁ!!」
ジュナス「な、なんてことを! 大体なんでセミの抜け殻なんか持ってるんですか!?」
ドク「オレの趣味だよ趣・味ぃぃぃ!!」
ニードル「んなモン喰えるかこの大バカヤロォ! 死ねハゲッ!」
ドク「うるせぇハゲって言うなぁぁぁ!! バカって言うなぁぁぁ!!
   バカっていうヤツがバカなんだぞ、このバァァァカ!!」
ニードル「うざってぇんだよバカハゲッ! 大体よォ、隠し味っつったら酒だろォ!
     テキトーに入れまくるぜェ!」
ジュナス「え、お酒なんてどこから…」
ドバドバ…
ジュナス「ってちょ、ちょっと! そんなに入れちゃって! 子供だっているんですよ!?」
ニードル「知るかァ!! ヒャヒャヒャ…おっといけね、こぼしちまっt」
ボッ!
ニードル「うわ、鍋が燃えたァ!?」
ジュナス「こ、こぼしたお酒に引火したんですよ!」
ドク「ひィ、家事だぁぁぁ!! 何やってんだばぁぁぁかぁ!!」
ニードル「んだとォ!?」
ジュナス「ケンカしてる場合か!? は、はやく消火器を!!」



〜中略〜
ジュナス「近くに消火器があったから良かったけど…下手したら本当に火事になる所でしたよ!」
ニードル「ガチでヤバかったなァ、ヒャヒャヒャ…」
ドク「ひゃぁぁぁッ!! ちょぉぉりしつがぁぁぁ、焦げたり泡だらけになったりしてるぅぅぅ!!
   もぉぉぉグチャグチャだぁぁぁぁ!!」
ジュナス「……もう僕一人でやるから、ドクさん達は静かにしてて下さい。っていうか帰ってくれ…」
ニードル「なんだその言い方はッ! オレ達が悪いってのかよ!?」
ジュナス「実際そうでしょ!!」
ニードル「なんだテメェ! オレをディスろうってかよッ!?」
ドク「ヒャアーッハァー!! 帰って帰ってぇ、帰りまくるぅぅぅぅ!!」
ニードル「切り替えはえぇなテメェは! やってらんね、オレも帰るぜェ!」
ジュナス「まったく…
     このカレーはもう使えないなぁ。また一から作り直さないと…」
ドク「そのカレェェェ捨てんのかぁぁぁ!?」
ジュナス「そりゃあね…」
ドク「捨てるなんてもったいねぇぇぇ!! ソイツはオレたぁぁちが喰ってやぁぁるぅぅぅ!!」
ジュナス「好きにすればいいでしょ!」

〜中略、午後十二時半、食堂〜
コルト「…クソ、メシはまだかよ! いつまで待たせる気だよ…」
バイス「ま〜そんなカリカリしてんじゃね〜よ♪ ど〜せムダ飯食いなんだからよ♪」
コルト「誰が無駄飯食いだこの! 狙撃するぞ!!」
バイス「お〜怖ぇ、余裕ねぇヤツはこれだから♪」
グレッグ「へッ…この程度の空腹がなんだ!」
コルト「うるせぇな…オレは昼は十二時キッカリに食いたいんだよ! ……ん?」

ニードル「意外と抜け殻うめぇなァ! カリカリしててよォ! ヒャヒャヒャ!!」
ドク「だろぉぉぉ!?
   ちょっと混じってるぅぅ、消火器の泡もマジうめぇぇぇ!!」
ニードル「ヒャヒャヒャ…やべ、酔いがまわってきやがったァ…」
ドク「酒いれすぎたなぁぁぁ!! ヒャアーハッハァー!!」
ニードル「ちょっと薄味になってやがるしなァ…」
コルト「…おいお前ら、何食ってんだよ?」
ドク「これかぁぁぁ!? オレらで作ったカレぇぇぇだぁぁぁ!!」
ニードル「テメェも喰うかァ?」
コルト「…お前らが作った? どんなんだよ?」
ドク「これだぁぁぁ!! セミの抜け殻としょぉぉかきのあわ入りのぉぉぉ!!
   黒焦げカレェェェだぜぇぇぇ!!」
コルト「な…何食ってんだよお前ら! ふざけんな!
    …つーか酒臭! 何だよこりゃあ!?」
ニードル「酒けっこー入れたからなァ…ヒャヒャ、ウッ」
ドク「どぉぉぉしたぁぁぁ!?」
ニードル「やべ、吐くゥ…」
コルト「ふざけんな! 誰かコイツをトイレに連れてけよ!!」
ドク「まっかせぇぇなさぁぁい!!」

〜午後一時、調理室〜
ジュナス「やっとできた…
     安心してる場合じゃないな、はやく盛り付けてみんなに出さないと…」



〜食堂〜
・テーブル1
バイス「昼間っからカレーかよ♪ なんっつ〜かセンスねぇな〜♪」
コルト「チッ、甘ったるいカレーだぜ…」
ジュナス(一応中辛のつもりで作ったんだけどなぁ…)
コルト「散々待たせてこれかよ! もうちょっとちゃんとしろよな!」
ジュナス「は、はい…」

・テーブル2
リコル「何これぇ、から〜い!」
ジュナス(向こうじゃ甘い呼ばわりで、こっちでは辛い呼ばわりか…)
リコル「…ジュナスさん? 味付けもうちょっと頑張りましょうね!」
ジュナス「うん…」
パメラ「ジュナスさん、私はとっても美味しく作れてると思いますよ!」
ジュナス「ありがとう…」
リコル「あ〜、パメラちゃん無理しちゃってぇ…
    知ってるよ、ホントは辛いの大の苦手なんでしょ?」
ジュナス「え…」
パメラ「い、いえ、そんな事は…」
リコル「ダメダメ、美味しくない時は美味しくないってちゃんと言わなきゃ、ジュナスさんの為にもならないんだから!」
ジュナス「………」
パメラ「ジュナスさん、本当に美味しいですから! 嘘でも慰めでもなくて本当に…」
ジュナス「…いや、気を使わなくていいよ、ホントに…」

・テーブル3
ルナ「……………」
ジュナス「ルナさん、どうですか…?」
ルナ「……………」
ジュナス「………」
ルナ「………普通。」
ジュナス「そ、そうですか…」

・テーブル4
ジェシカ「来たかジュナス…お前の実力、確かめさせてもらうぞ!」
オグマ「どれ程の料理の腕か…試させてもらおうか!」
デニス「一粒残らず喰い尽くしてやるぜ…」
ジュナス「え、えっと…(なんてテーブルだ…)」
ジェシカ「…甘いッ!」
オグマ「コクが足りん……口に合わんな。」
デニス「ケッ、所詮素人か。」
ジュナス「うぅ…」

・テーブル5
ニール「おいおいNT様よ! さっさとカレー出せよ!」
ジュナス「(一番面倒そうなヤツが来たよ…)…ほら。」
ニール「へ、見るからにしけたカレーじゃねぇか。レトルトじゃないよな?」
ジュナス「そんなわけないだろ!」
ニール「ハッ、どうだか。…あーまず、よくこんなの平気で人に出せるよな?」
ジュナス「…嫌なら食べなくたっていいんだぞ?」
ニール「こっちは食ってやってるんだ! 偉そうにしてんじゃねぇ!」
ジュナス「お前こそ何様のつもりだよ!」
ニール「何だと!? あーわかった、お前オレにケンカ売ってるんだな?」
ジュナス「やめてよね…本気でケンカしたらニールが僕にかなうわけないだろ?」
ニール「何だと!? もう一回言ってみ」
???「ケンカ両成敗!!」
ボカッ!
ジュナス「いたっ!」
ニール「いてぇ! 誰だ殴ったのは!?」
グレッグ「オレだよ…」
ニール「ゲ、グレッグ…」
グレッグ「メシくらい静かにくえねぇのか! 若造どもが!! 説教が必要かぁ…?」
ニール(面倒臭ぇヤツにつかまっちまった…)
ジュナス(何で僕まで…)

〜その頃、旅行中の三人in釣り船〜
ハワード「揺れが少ない、なかなかいい操船技術をもっているようだ。」
ブラッド「ククク…しかし、海釣りというのも乙なものだな……」
ゼノン「しかし、休日にまで船に乗ることになるとはな。」
ハワード「つくづく船に縁のある人生ですな。」
ゼノン「ハハハ…お互いにな。」
ブラッド「……ともかく、釣れた魚の調理はワタシに任せてもらうとしましょう…
     どういたしましょうか……天ぷらだろうと刺身だろうと、リクエストにはお応えしますぞ艦長?」
ゼノン「そうだな…軽めに刺身を頼むか。」



〜午後二時半、調理室〜
ジュナス(皆好き勝手言うけど、こっちはこっちで大変なんだぞ…)
ライル「ジュナス君、台所の修理終わったよ。
    これならブラッドさんにはバレないよ、きっと。」
ジュナス「ありがとうございます! すみません、こんな事やらせちゃって…」
ライル「いいっていいって、困った時はお互い様だからさ。
    …それにしても、これやったのってニードルさんでしょ? 相変わらずしょーがない人だなぁ…」
ジュナス「全くです…」
ライル「…そういえば、お昼のカレーの事だけどさ。」
ジュナス「やっぱり…まずかったですか?」
ライル「いやいや、僕は美味しいと思ったけどさ。
    たださ、カレーの辛さって人によっては好みが分かれる所だからさ。」
ジュナス「…それで散々言われましたよ、辛いだの甘いだの…」
ライル「参考になればいいけど、ブラッドさんの場合は、カレーを出す時はあらかじめ
    何個かの鍋を使って何種類かの辛さで作っておいて
    それから相手の好みに合わせて出してたみたいだったよ。」
ジュナス「へぇ、なるほど…
     そういえば、前食べたカレーも僕好みの味だった…」
ライル「…ゼノン艦長が僕たち全員の長所も、短所も全部よくわかってるみたいにさ。
    ブラッドさんも、ああ見えて僕たちの好みをよくわかってるんだよ。一人一人のね。」
ジュナス「そうだったんだ…
     でも、ライルさんもよくそんなこと知ってましたね…」
ライル「調理室には、割と縁がある方だからねぇ。
    まぁ、伊達に太っちゃいないってところかな!」
ジュナス(自虐ネタは反応に困るなぁ…)

〜午後三時、調理室〜
ジュナス「とりあえず皿を洗って、夜ご飯を決めて、その準備もしなきゃな…
     忙しいなまったく…ブラッドさんって、いつもこんな大変なことしてるんだなぁ…
     でも、このくらいで挫けるもんか!」
プシュー(ドアの開く音)
リコル「忙しそうですね〜…調子はどうですかぁ?」
ジュナス「(なんかきた…)何か用?」
リコル「ちょっと暇を持て余してまして…えへへ、お皿洗いくらいなら手伝いますよ?」
ジュナス「本当に? ありがとう!」
リコル「気にしないで下さい!」
ジュナス「本当にありがとう、これで夜ご飯の準備ができるよ…」
〜中略〜
ジュナス「夜はどうするかな、とりあえず数を一気に作れるものを…」
リコル「あっ!」
ガシャ!!
ジュナス「…また皿割ったの? もう三枚目だよ…」
リコル「ごめんなさ〜い、滑りやすいもので!」
ジュナス「なんだか…ブラッドさんが君に後片付けを頼まなかったっていう理由が
     ちょっとわかった気がするよ…」
リコル「ひど〜い! まぁ、過ぎた事を気にしてもどうにもなりません!
    もっと前向きにいきましょー!」
ジュナス「うん…(…ドクさん達が食材ムダにして、消火器もムダに使っちゃって、皿も割っちゃって…
     後でブラッドさんになんて説明したらいいんだ…?)」
リコル「わわわ!」
ガシャ!
ジュナス「…今日はもういいから帰ってくれるかな…?」
リコル「いいんですかぁ? それじゃ、失礼しま〜す!」

〜その頃、旅行中の三人in骨董品店〜
ハワード「奮発しましたな艦長?」
ゼノン「何、それだけの価値はある。」
ブラッド「有田焼とは……しかし、なかなか良い色味ですな?」
ゼノン「そして味のある造形だ。こんな時代に、こんなものが手に入るとは。」
ブラッド「ゴミどもにに割られんように気を付けませんとな……」
ゼノン「全くだな……」

〜そして調理室〜
ジュナス「あぁ、本当に夜ご飯どうしようかな……とりあえずデータから何か出来そうなのを探さないと。
     …シチューか? シチューでいくか…
     いや、そんなの出したらまたカレーとかぶってるとかマンネリだとか
     なんだとか言われるだろうし…どうすればいいんだ?
     大体、ドクさん達がやった事も全部僕が代表で怒られるんだろうし…
     ……ブラッドさんを怒らせたら、すごく残酷な未来が待ってるって、ラさんは言ってたよな…」

〜ジュナスのNT的『残酷な未来』予想〜
ブラッド「……何だ、この調理室のザマは! 何があったか説明しろ!!」
ジュナス「え…えっと、この焼けた部分はニードルさんが…」
ブラッド「…ほう、自分の失態を他人の所為にする気か? 見下げ果てた根性だな…」
ジュナス「いや、そこは本当に僕の所為じゃ…」
ブラッド「ゴミが……このワタシが言い訳なぞ聞くとでもでも思ったか!?
     大体、食材の減りも多すぎる、明らかに失敗したとしか思えん…
     ……戦場でこれだけの食材を揃えるのに、どれだけの苦労があったと思っている!?」
ジュナス「ご、ごめんなさい!」
ブラッド「その上……皿が足りんぞ。まさか…割ったのか!?」
ジュナス「そ、それはリコルって娘が…」
ブラッド「まだ他人に罪を擦り付けるかッ! 救いようの無いゴミが……
     ……割れた皿は高価な名品だぞ! それを割ってしまいおって…
     この皿一枚ほどの価値のないキサマが! 死ね! …死んで償えッ!!」
ジュナス「そんな、誤解で」
ブラッド「黙れッ! キサマなどこの場で処分してくれる……!!」
ジュナス「うわぁぁぁ!!」

……
ジュナス「……なんてことには、ならないよな…
     でもなんか今、受信したし…やっぱり、そうなるのか…?
     あの人、僕の話をあんまり聞いてくれないしなぁ…
     ………ブラッドさんは残酷だって、ラさんは言ってた…
     …寒い……僕は死ぬのか……」



〜午後六時、調理室〜
プシュー(ドアの開く音)
パメラ「あ、あの…」
ジュナス「殺される…殺されるぅ…!」
パメラ「じゅ…ジュナスさん気を確かに!」
ジュナス「…ん? 君誰?」
パメラ「パメラです! 大丈夫ですか!?」
ジュナス「あんまり大丈夫じゃない…もう何出しても文句言われるし
     皆で僕を陥れるようなことばっかりするからさ。
     いっそさぁ、全員から文句受けそうな料理出しちゃっても…大して変わらないと思わないか?」
パメラ「え…」
ジュナス「だからさ…これからドクさんと一緒に虫取りに行くんだ。食材用にね。
     宇宙の声がそうしろって言うからさぁ。宇宙の声なら仕方ないよね…」
パメラ「し…しっかりして下さい!」
ジュナス「何だあれ、彗星かなぁ…いや、彗星はもっとバァーって」
パメラ(何がジュナスさんをここまで…)
ジュナス「まぁいいや彗星は。僕は宇宙の声がはやくしろってうるさいから虫取りに行くよ。」
パメラ「い…いけません! そもそも、今から行っても時間的に間に合いません!
    落ち着いて、よく聞いて下さい!」
ジュナス「何? カレーの文句?」
パメラ「違います…
    あ、あの冷蔵庫に、ブラッドさんが作った料理を冷凍したものがあります!」
ジュナス「冷凍…?」
パメラ「は、はい! …夕食の分は、それを解凍して出してはどうでしょう?」
ジュナス「…………」
パメラ「解凍時間さえ間違えなければ、苦情を受ける事は無いかと…」
ジュナス「…………」
パメラ「…あの、ジュナスさん?」
ジュナス「そうか……そんな手があったんだ…冷凍した分があったなんて知らなかったなぁ…
     なんというか…なんでもうちょっと早く教えてくれなかったのかな…」
パメラ「…え?」
ジュナス「そうすればさぁ、昼も余計な文句言われる事もなかったし
     余計な損害が出る事も無かったんだよね。皿とかいろいろさ。」
パメラ「いやそれは、その…」
ジュナス「まぁいいけどさ別に。もうどうでも……多分僕、明日ブラッドさんに殺されるしね…」
パメラ「そ、そんな事があるはずありません!」
ジュナス「いやあるんだよ…宇宙の声が言ってるんだ、僕は明日死ぬって…」

〜その頃、旅行中の三人in料亭〜
ハワード「料亭もいいものですな艦長…」
ゼノン「全くだな…
    どうだブラッド、料理に関して一家言持つお前としては?」
ブラッド「………正直に申し上げるなら…ゴミですな。」
ハワード「そこまでかな?」
ブラッド「そうだ、エセ日本料理屋のレベルを超えていない…」
ゼノン「ハハハハ、相変わらずお前の舌は厳しいな。」
ブラッド「料理の腕が低い…という点は、百歩譲って許すとしても……
     このあらいは、煙草を吸った手で作られたものですぞ。臭いが付いてしまっている……
     こんなゴミのような料理で…金を取ろうなどという考えは、流石に許容できませんな……」
ゼノン「ほう、ではどうする?厨房に行って「このあらいを作ったのは誰だ!」とでも叫ぶか?」
ブラッド「フン、ご冗談を……誰がそんな子供染みた真似を。」
ゼノン「だが、昔のお前ならやりかねなかったからな。」
ハワード「確かに。しかし、最近のブラッド君は節度がありますからね。」
ブラッド「君付けはやめてもらえるかな…
     ……どうも落ち着きませんな。艦長は、このワタシが丸くなったとでも……考えているのですかな?」
ゼノン「そうは言っとらんがな。
    ただ…いくらか、変わったとは思っているがな。」
ブラッド「……どういう意味で受け取るべきですかな?」
ゼノン「何、好きに受け取ればいい…」



〜午後七時、調理室〜
ジュナス「はぁ、やっと終わった…」
パメラ「あとは食器を洗って片付ければ、今日一日の調理任務は達成です!」
ジュナス「ありがとう本当に色々と…
     …でももうダメだ、もうブラッドさんに八つ裂きにされる未来しか見えない…」
パメラ「ですから、そんな未来にはなりません!
    ちゃんと事情を話せばブラッドさんだってわかってくれますよ!」
ジュナス「君にはわからないのか、宇宙の声がそう言っているんだからもう未来は変わらないんだ…
     ラさんの言う、残酷な未来に一直線なんだ…」
パメラ「宇宙の声というものがどういうものかは、私にはわかりませんし…
    …先輩が何を言ったのかも、私にはわかりませんが、そんな事にはなりません!
    食材を使いすぎて、お皿を何枚か割ってしまったくらいの事で…」
ジュナス「それだけじゃない、調理室が焼けたんだ…」
パメラ「焼けた…?」
ジュナス「ニードルさんが焼いたんだ! ボヤですんだけど…
     …君だってあの人がどんなにここを大事にしてるか、知らないわけじゃないだろう!?」
パメラ「た、確かにその一件がブラッドさんの知るところになったら、ものすごく怒りそうですけど…
    でも、それはジュナスさんの責任ではないのですし…」
ジュナス「あの人にそんな理屈は通用しない、もし焼いたのがニードルさんだってわかってもらえても
     きっと、連帯責任だとか何とか言って、僕もニードルさんとドクさんと一緒に八つ裂きにして
     捌いて、朝ご飯のオカズにする…
     そして皆に美味しくいただかれちゃうんだぁ…」
パメラ「ですから、そんなことにはなりませんよ…」
ジュナス「いや、なる……宇宙の声がそう言ってくるんだ…」
パメラ「も、もし…万が一、本当にそんな事になった時は、私も一緒に、謝りますから!
    全力で、ブラッドさんにやめるように頼みますから…」
ジュナス「……そういえば君にだけは甘いんだったっけあの人…
     …でも、いいよ。これは僕の問題だからさ。」
パメラ「でも…」
ジュナス「僕だって一人前の男だ、自分の問題は自分一人で解決してみせる!」


〜午後十時半、通信席〜
ラ「そろそろ、ブラッドさんが帰ってくる頃ね…」
パメラ「………
    ところで、先輩がジュナスさんに言ったという「残酷な未来」というのは?」
ラ「あぁ、あれね…大分前の事だけどね、私が調理担当代理になった事があって。
  その時ミスしちゃって…後で何時間も説教されたのよ。」
パメラ「そ、それだけですか!?」
ラ「それだけって事は無いでしょ! 正座で何時間もあの怖い顔で説教されたのよ!?
  あぁ、思い出しただけで身震いがするわ…」
パメラ「えっと…では、先輩の言う「残酷な未来」というのは
    ただ正座で説教を受けるというだけのこと…ですか?」
ラ「そうよ。十分に残酷な未来よ…」
パメラ(そんな事のために、ジュナスさんはあんなに脅えて…)

〜調理室〜
ジュナス(焼けた部分の修復は完璧、消火器の泡も全部拭き取った…
     後は皿と食材の量さえバレずに切り抜ければ……生き残れる!)
プシュー(ドアの開く音)
ブラッド「クククク……今戻ったぞ!」
ジュナス「お、おかえりなさいませブラッドさま!」
ブラッド「何だその迎え方は……
     まあいい……そんなことより、なかなか悪くない旅行だったぞ!」
ジュナス(バレたら確実に殺される…)
ブラッド「土産も買ってきた、クククク…仲間とでも喰い尽くすがいい……」
ジュナス「あ、ありがとうございます…」
ブラッド「しかし、キサマの今日の料理担当代理だが……なかなか好評だったようだな?」
ジュナス「はぁ…(焼けたところとか割れた皿には気づいてないな…)」
ブラッド「どうやらアシスタント経験が少しは活きたようだな。ワタシは嬉しいぞ…」
ジュナス(食材の減りが異常なことも、気づいてないよな…)
ブラッド「……そういえば、今度の休みにも予定を入れていたな。
     どうだ……その日も代わってはくれんか?」
ジュナス「お、お断りします!
     二度と調理室を僕とか、ドクさん達とかに任せないで下さい!!」
ブラッド「……何だ、何をそうまで焦っている?」
ジュナス「僕、料理はもうこりごりだ…」
ブラッド「何だと…? …ん、皿の枚数が」
ジュナス「き、気のせいですよ気のせい! 皿は割れてません、ボヤ騒ぎもおきてません、食材もムダにしてません!
     そして今回はこの辺で終わりです!」
ブラッド「………」
ジュナス「そ、そんな事よりそろそろ朝ごはんの準備でもした方がいいんじゃないですか!?」
ブラッド「……それもそうだな、早速準備に取り掛かる…」
ジュナス(生き残れた…僕は生き残れたぞ…)
ブラッド「……手伝ってはくれぬかな?」
ジュナス「お断りします!」


オマケ 次回予告



次回予告!

リコル「さぁ〜て、次回以降のお料理教室は!?
    どうも、リコルですぅ!
    皆さんスピリッツやってますかぁ? ダメですよ〜ウォーズばっかりやってちゃ。
    新作に飽きたら旧作プレイ! それが戦場の掟ですぅ!
    …ってデニスさんが言ってましたぁ。あの人はスピリッツ出てないんですけどね〜。
    とにかく、私をプレイヤーキャラとして育てられるのはスピリッツだけですぅ!
    まぁ、そろそろウォーズもやりつくしちゃって、今はほとんど
    やっていないという方が大多数だという話もありますけども…
    それでは次回以降は〜」
・第三十三回【事件! 狂気のアンハッピーハロウィン!!】
・小ネタ【悲劇! 狂愛は宇宙に散って!
     〜または彼は如何にして執着するのを止めて八連ミサイル持ち機体を乗機とするようになったか〜】
・第三十四回【赤の他人!? 五代目アシスタント登場!!】
リコル「の三本ですぅ!」
ブラッド「……何だこれは、キサマ何をしている…」
リコル「気にしないでください!
    では、例のアレをやりますよ! せ〜の、ジャン、ケン…」
ブラッド「やらせんッ! ではまたな……」
リコル「あ〜、ブラッドさんひど〜い!」