第四話『-敵ノ殲滅ヲ最優先トスル-』



……第七次宇宙戦争末期。
荒野地帯にて宇宙革命軍の地球侵攻部隊と、それを迎え撃つ地球連邦軍のモビルスーツ隊が交戦していた。

連邦軍モビルスーツ隊には、あるモビルスーツの姿があった。
悪魔がそのまま現世に現れたかのような…禍々しい風貌のガンダムタイプのモビルスーツ。
「ベルフェゴール」と名付けられたそのガンダムのコクピットの中には
齢十六か、十七か…ともかく、その機体の悪魔の風貌には似つかわしくない少女が
その悪魔の胎内に取り込まれるようにして、搭乗していた。

その悪魔、ベルフェゴールの胎内…コクピットの中。
…パネルに映る、赤く光り、危険を示す表示。
少女がその全てを快諾する答えを出すと、それと同時に、ある文字がコクピットの画面に浮かんだ。

『-敵ノ殲滅ヲ最優先トスル-』


次の瞬間、その悪魔を模ったかのような巨大な機械人形に、悪魔そのものが憑依したかのように…
そのモビルスーツのカメラ・アイが赤く、禍々しい光を湛え、光った。
そして悪魔は文字通り、パイロットの「意思のままに」縦横無尽に戦場を駆け抜け
革命軍のモビルスーツ達を次々と切り裂き、引き千切り、破壊し尽くし…ただの鉄屑へと変えていった。

その姿は、正に悪魔そのものだった。
ニュータイプ、と呼ばれる人間の力を戦う為の力として利用する「フラッシュ・システム」。
その技術のある意味での到達点の一つが、このガンダム・ベルフェゴールである。
その力の代償は、命。
悪魔に狩られる者達の命だけではない。
自らを操るパイロットの命すらも、その悪魔「ベルフェゴール」は欲した。



ニュータイプ能力を持つとされるその年少の女パイロット、ソニア・ヘインの駆る
「ガンダムベルフェゴール」は、宇宙革命軍地上侵攻部隊のモビルスーツ隊を次々に血祭りに上げていった。
同モビルスーツ隊に所属する、DHMワラビー隊のパイロット達…
若かりし頃のバーツ、ブラッド、グレッグ、スタンらも皆、息を飲む。
「すげぇな、ソニアは…可愛い顔して、あんな戦果を挙げちまうんだからな」
「フン…流石はニュータイプ様ってところだな」
「もう、あのガンダムだけでいいんじゃねぇかな…」
バーツ、ブラッド、グレッグがそれぞれガンダムベルフェゴールの鬼神の如き戦いぶりに
各々の感想を抱く中…スタン・ブルーディは一人、ガンダムベルフェゴールのその挙動に
何か、違和感のようなものを感じていた。
「あの動きは…まずい…まずいんじゃねぇか…」

「……ッ!?」
そんな中、当のソニアはガンダム・ベルフェゴールのコクピットの中…苦しみに悶えていた。
ガンダム・ベルフェゴールの特殊な制御系故に体にかかる負担…
…そして、彼女の駆る悪魔に引き裂かれ、死にゆくパイロット達の最期の叫びが
ニュータイプとされる、ソニアの心に常に突き刺さってきた。
「………」
悪魔…ガンダム・ベルフェゴールは、確実にソニアの体、そして精神を蝕んでいた。



屈強な宇宙革命軍モビルスーツ隊を、赤子の手を捻るが如く簡単そうに
その悪魔、ガンダム・ベルフェゴールは、ほとんど単機で皆殺しにしてみせた。

戦闘終了後…悪魔の胎内から解放されたソニアは
先に各々の愛機から降りていた、仲間達に迎えられる。
…しかし、その表情は暗かった。
そんなソニアに仲間達…まずはバーツが語りかけた。
「すごかったじゃねぇか、ソニアよ?」
続いて、ブラッドも少し呆れたような風情で言った。
「ったく、オレらの仕事まで奪いやがって…ムチャしすぎだぜ」
仲間達の言葉を受け、安心したように…少し顔に笑顔を戻しながら
その少女は、弱々しげに言った。
「そ…そりゃあすまなかったね…」
その様子を見て…先ほどの戦闘中からずっとソニアの心配をしていたスタンが聞いた。
「おい、ソニア…大丈夫か!? 顔色が悪いが…」
「なぁにガラにもなく心配なんかしてんだよ…
 大丈夫だよ…ちょっと休めば…すぐ…元気に…なる…か…ら…」
次の瞬間。
緊張の糸がプツ、と音を立てて切れたかのように…ソニアは、糸を失った操り人形のように
その場に倒れこんでしまった。
「お、おいソニア! ソニアー!!」
「…救護班を呼べ! さっさとしろ!」
「お、おう!!」
仲間達は慌てて救護班を呼びに行く…

ガンダム・ベルフェゴールがそのパイロット、ソニアに与えたダメージは、あまりにも大きかった。



しかし、これらの事態も上層部の人間達からすれば、想定された範囲内での出来事に過ぎなかった。
上層部の人間達にとっては、ソニアもベルフェゴールを動かす為の「消耗品」の一つでしかない…
彼らは既に、ソニアを見限っていた。
ソニアの今後の処遇について、基地の士官らが話していた。
「…あのパイロットはもう限界のようですな」
「新たなニュータイプをよこすように手配している。問題は無いさ」
「では、あの女は?」
「まぁ…使えなくなるまで使って、後は棄てるだけだろうな…」

「……!?」
基地内でのその会話を、スタンは聞いてしまった。
「…………」
そして、彼はある決心をした。
これまでの彼の人生では有り得なかった程の、重大かつ、無謀な決心を…

深夜。
ソニアが収容されている病室…そこにスタンは忍び込んだ。
そして、眠っているソニアを優しく起こした。
「…スタン?
 何よこんな時間に…?」
「いいからよく聞け。お前…このままじゃ殺されるぞ!」
そのスタンの言葉を聞いて…ソニアは、その顔に諦観すら感じさせる表情を浮かべさせながら、答えた。
「そんなの……とっくの昔にわかってるよ」
「ダメだ! お前はここで…こんな死に方、しちゃいけねぇんだ!」
そんなスタンの必死な姿を見て…ソニアはまた弱々しげに、言った。
「いいんだ…これはね、アタシみたいに特別な力を持たされた人間の、責任なんだ」
「責任…だって…!?」
「この戦争を、終わらせる為にはさ…
 誰かが…犠牲にならなきゃいけないんだよ…」
「…………」
スタンは何かがふっきれたようだった。
そしてソニアの腕を強引に掴み、言った。
「いいから来い! ニュータイプだか何だか知らねぇが…
 人を人として扱わないやりかたにゃ、もう我慢ならねぇ!!」
「ちょ、ちょっとスタン……!」



半ば強引にスタンに連れられ、軍から脱走する事になったソニア。
人目を忍んで進み、基地内のモビルスーツデッキに二人は辿り着く。

ろくに明かりも点いていなければ、メカニックらを含めた人員らもいない、静まりかえったモビルスーツデッキ…
そこでスタンが呟いた。
「ちょいと手荒なやり方になっちまうが…」
「ちょいとどころの騒ぎじゃないよ…スタン、本当に行く気なの!?」
「…当たり前だ」
スタンは、モビルスーツを奪っての脱出を考えているらしい。
だが…その前に、ある男が立ちはだかった。
暗がりの中、こちらに近付いてくるその男の気配に気付いたソニアが言った。
「ブラッド…?」
「な、なんだって!?」
スタンも思わず驚きの声を上げる。
彼らを待ち伏せしていたのであろうか…そしてその男、ブラッドが口を開いた。
「……どうしたお二人さん。お揃いでよ…」
その言葉に返したのは、スタンだった。
「お前こそ…どうしてここに!?」
「フン…こう来るだろうと思ってたモンでね。薄々な…」

暗闇と静寂が支配するモビルスーツデッキに、二人の男女と、もう一人の男…三人だけが、対峙していた。
スタンが沈黙を破り、口を開く。
「すまんブラッド…長々と説明しているヒマはねぇんだ…」
「…フン」
ブラッドは拳銃の銃口をスタンに向け…言った。
「…助けれるってのか? お前がソニアを」
「わからねぇ、だが…」
そこに、ソニアが弱々しげな声で口を挟んだ。
「…もうやめな、二人とも…
 …スタン、もう戻ろ…今なら引き返せるよ」
「バカ言ってんじゃねぇ!」
スタンが怒鳴る。その様子を見て…ブラッドが銃口を下げ、言った。
「クククク…面白いじゃねぇか。
 お前如きが、たった一人でソニアを助け出そうなんてな…全く身の程知らずだ。
 道中で犬死にするのがオチだろうぜ…」
「なんとでも言いやがれ…!」
そう返すスタンに対し、ブラッドは…こう言ってのけた。
「…オレのワイズワラビーを貸してやる。後は好きにしな…」
「ブ、ブラッド…!?」
「……せいぜい足掻いてみせろ」
そう言うと、ブラッドはデッキから去っていった。



そうして、二人はブラッドの愛機だったワイズワラビーに乗り込み脱出を図った。
基地内は当然、大混乱の真っ只中だ。
上層部はもちろん、パイロット達も…
起き掛けのバーツが叫ぶ。
「おいおい! 何がどうなってやがんだぁ!?」
同じく起き掛けのグレッグが返す。
「わからねぇが、ブラッドのワイズワラビーが奪われたってよ!」
「ソイツは大変だぁ!!」
そこに遅れて、ブラッドもその場に現れる。
「…バーツ! グレッグ! 揃ってやがるか!?」
「あぁ、なんとかなぁ… にしてもどうなってやがんだ!?」
尚も混乱した様子のバーツに続き、グレッグが叫ぶ。
「スタンとソニアが見当たらねぇ! この非常時に何やってんだか…」
「んな事にかまってられる場合じゃねぇ…
 …オレのワラビーが脱走兵に奪われたってハナシだ! 後を追うぞ!」
そのブラッドの報告を聞き、バーツにも予感が奔る。
「脱走兵…? まさか…」


報告は遅れ、今回の件には流石に基地もてんてこ舞いだ。
「…何だ!?」
『何者かが我が部隊のモビルスーツを強奪!』
「何だって!?」
「まさかベルフェゴールが…」
『い、いえ…奪われたのはワラビータイプのようですが』
「革命軍め、何を考えている!?」
「追撃は!?」
『ダメです、何者かによってデッキの設備が全て麻痺されてしまっており
 復旧にはまだ時間が…』
「革命軍の工作部隊か!?」
「おのれ革命軍め…!」
「せめて、ベルフェゴールだけでも出せんのか!?」
『ダメです、アレはニュータイプじゃないとまともに動かす事も…』
「…ベルフェゴールのパイロットは!?」
『それが…どこにも見当たりません!』
「な、なんだと!? 何が起こっているというのだ!?」


ともかく、ブラッドの協力もあり、スタンとソニアは脱出に成功した。
一先ず安全な所まで落ち延び…その先で、スタンがワイズワラビーのコクピットの中で呟いた。
「ったく、なんとか生き延びれたみてぇだな…
 …今日ばかりは、天もオレ達の味方をしてくれたらしい」
そんな彼を見て、呆れた様子で…しかし少し嬉しそうに、ソニアは言った。
「アンタって、ホントに強引なんだねぇ…」
「なぁに、こういうのは…こういう非常事態だけさ
 …しかし、オレらもこれで立派な罪人だな」
「でも…あのまま死ぬよりはいいよ。
 スタンだっていてくれるしね…」
こうして、スタンとソニアの逃亡生活が始まった。
そして、それから…宇宙革命軍によるコロニー落とし作戦が断行され、戦争が終結するまでそう時間はかからなかった。



二人は、奇跡的に運命の日を生き延びた。
そして紆余曲折を経て、ある田舎の町に落ち延び、そこで新たな暮らしを始めた。
引っ越してきた先…そのみすぼらしいが、今の二人にとっては十分過ぎる小さな小屋。
ここが彼らの、新天地だ。

様々な苦境をソニアと共に乗り越え、逞しく、頼もしく…それでいて、昔からの優しさだけは
いつだって変わらない。
そんな、今ではソニアにとって最愛の人…スタンは、家の片付けを軽く済ませた後
疲れた様子で床に腰掛け、しみじみと呟いた。
「思えば色々あったもんだが…これで、ちょっとは一息つけそうだな」
ソニアもまたその隣に腰掛けて、言った。
「本当に、やっとだね…」
そう言う彼女も、もうあの頃の少女ではない。
数々の窮地をスタンと共に乗り越え、生きてきた…一人前の女だ。
「…アタシ、今でも不思議に思うよ」
「何がだ?」
「今でもこうやって息をして…アンタと一緒にいられてるって事がさ」
「オレだって不思議だよ…よく今日まで生き延びれたモンだ」
そして、感慨深そうに目を瞑ると、スタンは続けて言った。
「ま…これも皆、天運に感謝ってところだな」
「天だの運だのだけじゃなくて、助けてくれた皆にもちゃんと感謝しないとね?
 ブラッドも、今どうしてるんだかねぇ…」
「どうだろうな…」
そう遠い目をしながら言った後、スタンはさらに続けた。
「ま…何はなくとも、だ。
 オレ達は生き延びた。色んな助けがあってな…
 …だから、この命だけは何があっても大事にしていかなきゃいけねぇような気がする」
「本当にね…」
ソニアもまた、心からそう言った。
そして…数泊の時が流れた後、不意にスタンに聞いた。
「あのさ、スタン…」
「どうした?」
「これからも、ずっと…一緒にいてくれるよね?」
「…当たり前だろ?」
「そう言うと思ってたよ…嬉しいよ。
 ホントに、アタシなんか…アンタみたいないい男には、もったいないような女だけどね」
「ったく、そういうちょいと卑屈なとこだけは治らないな、お前は?」
「これから治してくよ、アンタと一緒に…」

ガンダム・ベルフェゴールによって与えられた精神、肉体へのダメージにより
ソニアは子供を産めない体になってしまっていたが、そんなソニアをスタンは受け入れたのだった…



引越し後のゴタゴタの中の二人の家に、ふと訪ねてくる者がいた。
「…誰だ?」
「ご近所さんの挨拶だよきっと。
 こーいうのは、ホントはアタシらから出向かなきゃダメなんだけどね」
「そうだなぁ…こういう事にはとんと疎くなっちまっていけねぇ」

訪ねてきたのは、町の名物おじいさんであるらしい
写真が趣味、という老人だった。
「アンタらを見てると、昔のワシらを思い出してのう…中睦まじいことじゃて。
 どうじゃろう…一枚、写真を撮らせてもらっていいじゃろうか?」
「写真ねぇ…あいにくだけど爺さん、オレらなんか撮ったってフィルムの無駄だぜ?
 せっかくこんな時代にそんな高級品持ってんだから、もっと大事にしなきゃ」
そう丁重に断ろうとしたスタンだったが、ソニアは撮ってもらいたいらしい。
「いいじゃないスタン、せっかくだから撮ってもらおうよ!」
そしてその老人もまた、上機嫌そうに笑いながらこう言った。
「そうじゃよ…風景なんぞよりも、幸せな人を撮った方が
 カメラも喜ぶってモンじゃて」
「そういうモンですかねぇ…
 いや、爺さんがいいってんならオレは一向に構いませんがね」
そうスタンは承諾し、スタンとソニアの新天地である小屋の前で二人は写真を撮ってもらった。

後で送る、と言って小屋を後にした老人。
手を振ってその後姿を見送った二人…そして老人が見えなくなった後、スタンは気付いた。
「やべ…せっかく写真撮ってもらったってのに、ヒゲ剃るの忘れてたな」
それを聞いてクスッ、と笑った後、ソニアは言った。
「いいのいいの、その方がスタンらしくてさ!」
「…そうか?」

その写真は、生涯を通じて彼女の宝物となった。



平和な日々は長くは続かなかった。
戦後「バルチャー」達の台頭により、世界は荒れ果てた。
ソニアらの住む町も例外ではなかった。
男たちは町の人間を守るため旧大戦で使われたモビルスーツ等の兵器を回収し戦力化。
自警団を組織し、元連邦軍のパイロットであるスタンはソニアの制止を振り切りその中心人物となった。

今はもう、スタンとソニアの住居もあの小屋ではない。
自警団の隊長となったスタンには、町の中でも一、二を争うほどの豪華な家があてがわれていた。
「アタシは…こんな家より、スタンと一緒に住んでた…あの小屋の方が好きだったよ」
「オレだってそうさ…」
そう言いながら、スタンは自分の乗機の整備記録に目を通していた。
その様子を哀しそうな目で眺めながら、ソニアが言った。
「…結局、こういう事になるんだね…」
そのソニアの声を聞いて、スタンは…毅然とした表情で言った。
「いつだったかお前、言ったよな…『誰かが犠牲にならなきゃいけない』って」
「………」
「オレだって軍人だったからな…ここで戦えるヤツが、戦わないわけにはいかねぇんだ。
 …ソニアならわかってくれるよな?」
「わかるよ…わかるけど…どうして、こんな…」
「泣かないでくれ、ソニア…」
「そんな、そんな事…言ったってさ……!!」

スタンのワイズワラビーは、町の自警団の象徴となり、またその隊長機ともなった。
唯一の実戦経験者である彼は町の人間から慕われ
いつしか皆から「隊長」と呼ばれる立場になっていた。


そして、ある日…町をバルチャー達が襲った。
他の町の自警団といつしか団結し、バルチャーらとしても侮りがたい戦力となりつつあったスタンらの自警団を
バルチャーらは徒党を組んで、潰しにかかったのだ。

自警団らとバルチャーらの戦いが終わり、荒れ果てた町…
「バルチャーどもは!?」
「なんとか…なんとか撃退できたが…隊長が」
「スタン隊長が…やられちまったのか!?」
「あぁ…コクピットにマシンガンの弾をモロに浴びちまってな…」
「そんな!! じゃあオレ達はこれからどうやって…」

「…スタンは! スタンはどうなったの!?」
「ダメだソニアさん、見ちゃダメだ!」








……
「ソニア姐さん、起きてよ!」
「……!?」
そこでパティに起こされ、ソニアは目を覚ました。
「夢、か…」
「だいじょぶ? ひどくうなされてたみたいだったけど」
「あ、あぁ…大丈夫だよ…心配かけてすまなかったね…」
「…ホントに大丈夫? 今日は付き添ってあげようか」
「いや、いいよ…いいからアンタはもう寝な。
 明日も早いんだからね…」
「う、うん…」

そう気丈に振舞いながらも、ソニアの頭の中には…
あの時の、ブラッドの言葉が頭をよぎっていた。

――――さっさとヤツの死を乗り越えんと、貴様はこれから先も一歩も前に進めんぞ…――――

ふと…写真が目に入った。
「……もう、あれから何年経つんだろうね…」
誰に言うでもなく、ソニアは呟いた。
そして…あの時撮った、スタンとソニアの二人だけが写った、大切な写真を眺めながら…ソニアはさらに呟く。
「こんなアタシを見て…アンタならどう言うかな」
…今日はブラッドも来る気配は無い。
ソニアの心には…未だに、消えない傷が刻まれたままだった。


戻る