第七話「お前さん…なかなか熱いじゃねぇか!」



ハワード船長の輸送艇が港へ到着する。
今日は入港まで時間がかかるだろう…ハワード船長は事前にそう予想し
本来の予定よりかなり早めの時間に出発したのだが
その予感は的中した。船員の一人がボヤく。
「いやぁ…あんなに早く出発したってのに、約束の時間ギリギリとはねぇ。
 まっさか、ここまで賑わってるなんて思いやせんでしたぜ」
そのボヤきに、ハワードは何故か少し、上機嫌そうに答えた。
「それはそうだろう…何せ今日は、数十年に一度あるか無いかの、お祭りなのだからな。
 仕事が終わり次第、我々も席の争奪戦に参加するとするか…」
「もう、特等席のほとんどは埋まっちまってますけどね…」


ついに、来るべき日がやってきた。
周辺の守り神的存在であり…英雄的バルチャーでもあるバーツ・ロバーツのGファルコンと
ニューヒーロー、新進気鋭のサエン・コジマのガンダムエアマスターの、決闘の日だ。

決闘場所は港街の程近くの空域…港やその周辺からその勝負の行方、そして結末が
手に取るように観察でき、かつ距離的に戦闘での被害も街には出辛いという
決闘にはもってこいの空域だ。
彼らの対決の勝敗を見届けるべく、周辺の海域や港、そして港街には多くの者達が集まった。
その観客達は或いは彼らのファン、或いは彼らに恩義がある者達
或いは彼らに憧れるバルチャー達、或いは彼らに少なからぬ恨みを持ちつつも
対決の結果が気になってしょうがないならず者達…
…そして大多数を占める、お祭り好き達。

彼らや観光客らが集まった事により港街の商店らも活発化。
それどころか、各所に露店なども出没し商売を始める者も続出し
港街は、まるでお祭り騒ぎのような風情だ。


そのお祭り騒ぎの中に、ブランドの姿もあった。
港のすぐ近くに露店を構え、何やら荒稼ぎをしている様子だ。
「さーさー寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
 ここらのバルチャー最強が決定するわよォ!」
その露店に、ギャラリー目的で港に立ち寄っていたバイスが通りかかった。
あまりにも似合わないような…似合いすぎているような風情のブランドの姿を見て、思わず聞く。
「…何やってんだアンタ?♪」
「見てわかんないの!? 胴元よ! オホホホホ…バンバン稼ぐわよォ!」
…どうやら賭けの胴元らしい。
既に胴元としてかなりの金品を預かっているらしい。
その様子を確認すると、さらにバイスが言う。
「ま…楽しそうで何よりってとこだな♪
 オレ様も参加しましょうかね〜♪」
「参加者は大歓迎よ! …それで、おいくら?」
「ま〜ま〜そう焦りなさんなって♪
 それよりもよ♪ 一応金目のモン預かってんだから気をつけろよなアンタも♪」
そう言った後…バイスは、露店の隣に仁王立ちする「ガンダムレオパルド」の姿を見上げてから、続けた。
「ま……これ見た上で強奪しよ〜なんて、ホネのある輩はそ〜そ〜いらっしゃらねぇだろ〜けど♪」
「そゆこと……セキリティは万全を期してるってねぇ!!」
その胴元露店の用心棒、ガンダムレオパルド(陸戦用装備)のコクピットの中では…
「ぬぅおぁぁぁッ!! 待ちくたびれたぞぉぉぉぉ〜!!
 ま〜だ決闘ってぇぇのはぁはじまんねぇのかよぉぉぉぉ!?」
などと、パイロットのドクが退屈の余り叫び声を上げていた。



「おお見ろミンミ、あそこにガンダムタイプがあるぞ!!」
「感激であります! あれは…レオパルドタイプのようでありますね!」
「いや全く…こんな田舎にエアマスター以外のガンダムがあるとは驚きじゃわい」
ドクのガンダムレオパルドの姿を見て大はしゃぎしているこの老人と子供は
言うまでもなく、ダイスとミンミである。
師匠、ダイスの手がけたエアマスターと弟子、ミンミの手がけたGファルコンの決闘となれば
見に来ないという手は無い。
そこで二人は用心棒のコルトを引き連れ、わざわざ船の便を使ってここまで足を運んだのだ。
はしゃぐ二人に呆れながら、付き添いのコルトがボヤく。
「…ったく、はしゃぎすぎだぜお二人さんよ?
 おのぼりさん丸出しだぜ全く」
その言葉を受け、少し照れくさそうに笑った後ダイスは言う。
「いや恥ずかしいことじゃて…しかし仕方なかろう?
 あんなレア物を見せられてはメカ屋としては血が騒いで仕方のうてのう…」
「僭越ながら、自分も全く同感であります!」
と、便乗気味にミンミも元気良く言った。尚も二人は盛り上がる。
「ミンミ、ここだけのハナシじゃがのう…」
「なんでありましょうか!?」
「あそこにあるレオパルドも…コジマとかいう若者のエアマスターも
 Gファルコンとドッキングできる機能が付いているのじゃよ」
「ドッキング…でありますか!? 詳しくお聞かせ願いたいであります!」
「そうじゃのう…」
そんな二人に改めて呆れながらも、コルトもまた
ガンダムレオパルドのその立ち姿に見とれていた一人ではあった。
「オレのドートレスウェポンにゃあ劣るが…アレもなかなか良さそうな機体だよな」
「お、コルトも中々良い趣味しとるのう!」
コルトの呟きを聞き逃さなかったダイスが即座にそう言った。
そしてコルトは、周りの人並みを見回しながら
「にしても…昔の知り合いがうじゃうじゃいやがる、さっさと帰りてぇよ…」
などと言ってごまかした。
そんなコルトを尻目に、ダイスとミンミの師弟コンビはさらに盛り上がっている。
「しかしこの勝負…一体、どっちが勝つでありましょうか!?」
「…無論、ワシのエアマスターじゃ!」
「いえ、しかし…自分のGファルコンも負けてはいないハズであります!」
そんな掛け合いを見ながらコルトは
「どっちもお前らのモンじゃねぇだろうよ…」
などと細かいツッコミを入れていた。
なんやかんやと言いつつも、仲の良い三人組である。


こんなにも港街が盛り上がっている中、今日も「カサブランカ」は休業…
その理由は、パティに連れられ、ソニアも見物に来ていたからだ。
だが彼女自身はあまり乗り気ではないようである。
そんなソニアに、パティがハッパをかける。
「どうしたのさソニア姐さん! せっかくのお祭りなんだよ? 楽しまなきゃさ!」
「ちょっとね…決闘とか…戦いとかには、あんまりいい思い出がなくてね…」
ソニアはそう、少しけだるそうに返した。

その胸中は、正に「複雑な思い」の一言だった。
勝負に挑む前のサエンの言葉…一昨日現れたブラッドの言葉…
そして勝負の行方……その結果、どんな事がおこるのか…
「………」
かつて「ニュータイプ」として珍重された彼女にも、その行方を読むことはできなかった。
だが、だからといって…その結末を、確かめずに逃げる事もできない。
それが、彼女が今、この場にいる理由だ。



そして、約束の時間が訪れた。

時間になるとほぼ同時に、紅白のカラーリングにその身を纏った大型戦闘機が空域に姿を現す。
その姿を確認し、ドクが拡声器を通じて叫びを上げる。
『お…おおッ!! 見ろぉぉぉオマエらぁぁぁぁッ!!
 お待ちかねのぉぉぉぉッ! サエンのエアマスターのご到着だぁぁぁぁ!!』
その声が辺り一帯に木霊し、その直後港町は一気に沸きあがった。
辺り一帯、至る所から沸きあがる歓声。その声は、若い女性のものが多かった。
当然、ハンサムガイであるサエンのファンである…サエンに言わせれば「オレの子猫ちゃん達」による歓声だ。

「………く〜ッ!!
 我ながら自分の人気っぷりが怖くなるぜェ!」
ガンダムエアマスターのコクピットの中からその様子を確認したサエンは思わずそう感嘆した。
そして…
「さ〜て、と!
 まずは挨拶代わりに、サービスさせていただきますか!」
サエンはそう言うと、突如機体を空中で回転させ…
そしてそのまま流れるように、美しいまでに華麗な動きで
ファイターモードからモビルスーツ形態へと、エアマスターを変形させた。

そのアクロバティックなパフォーマンスを見て、更にギャラリー達は沸き、歓声を上げる。
「へへっ…」
それを確認すると、さらに満足気な表情を浮かべるサエン。
なかなかキマった…その耳に、通信が入る。
『なかなかイカしてんじゃねぇか、ジャパニーズボーイ?』
その声を聞くと、フッ…と軽く不適な笑みを浮かべ、サエンは返した。
「…時間ピッタリだな、空の英雄さん」
『お互いになぁ』
そして、サエンのエアマスターのセンサー有効範囲に…待ちかねたその存在「Gファルコン」が姿を現した。
それと同時に、地上でドクが、ガンダムレオパルドの拡声器を通じ叫んだ。
『キ、ききき…きたぁぁぁぁぁぁぁッ!!
 バァァァツのGファルコンだぁぁぁぁぁぁ〜!!!!』
それと同時に、辺りのギャラリー達が…大地を震わすほどの大歓声を上げた。
ついに、二人の英雄同士の「決闘」が始まろうとしていた。

「ま…オレ達の間に、ゴングはいらねぇよな?」
またもサエンが、不適にそう言った。
「あたぼうよ…いつでもきな! なんならこっちから行くぜ!?」
バーツもまた、自信満々にそう言ってのけた。

「いや…悪いが、このオレから行かせてもらうぜ!
 …派手に決めるぜ!! テープは投げんなよ!!」
「おうよぉ!!」

二人の中で、決闘のゴングが鳴らされた瞬間だった。



次の瞬間、空域ではまさに「ドッグファイト」が展開された。
無数の飛行機雲が空中に白い線を描く。

モビルスーツ形態から一転身を翻し、即座にファイターモードに変形したエアマスターが
最大速度でGファルコンに迫りつつ
「コイツは挨拶代わり…ってね!」
機体のバスターライフルでGファルコンに牽制射を放つ。

「悪くねぇなぁジャパニーズボーイ!! そんじゃまぁ…」
Gファルコンもまた、一切速度を落とさないままその射撃をアクロバティックな動きで回避する。
その動きのキレは、エアマスターに決して劣ってはいない…
そしてGファルコンは、空中で急ブレーキをかけたかのように一瞬速度を緩めると
「オレ様の腕前も見てもらおうか!!」
一瞬でエアマスターに機首を向け、拡散ビーム砲を発射した。

「……見える!!」
そう言った直後、サエンはエアマスターを空中で華麗にモビルスーツ形態へと
一瞬で変形させ、自機に向かって放たれた拡散ビーム砲の光を
またもアクロバティックかつ華麗な動きで全て避けきって見せた。

この動きには、流石のバーツも驚嘆する。
「うおッ!? …思った以上にやるじゃねぇか!!」

そしてサエンは…得意げに、こう言ってのけた。
「…今のはベストの動きじゃなかったな!
 悪いけどもう一回頼むぜ!」
サエン・コジマ…小憎らしいほどに、華麗な男である。
さしものバーツもこれには少しカチンときたようだ。
「お前さん、あんま調子乗ってると痛い目みるぜ!?」
「どー痛い目見せてくれんのか…見せてもらおうじゃん!」
さらに、サエンは不適にそう言ってのけた。


先ほどまで大歓声を上げていたギャラリー達も、皆息を飲み
ただ、その戦いの行方を見守っていた。



勝負の流れは、サエンの方へと向いていた。
時にモビルスーツ形態、時にファイターモードへの変形を繰り返し
トリッキーで読みづらい攻撃を繰り出すサエンのガンダムエアマスターに
さしものバーツも、手が出ない様子に見えた。
「ギャラリーの皆!
 オレの華麗な射撃………よーく見やがれ!!」
サエンはそう言うと、またも機体をモビルスーツ形態へとアクロバティックに変形させた後
彼が自称した以上に、華麗にバスターライフルを正確に狙い撃った。

その攻撃を…間一髪、避けたバーツ。
「………ッと! コッチもプロだぜ、当たるもんかよ!」
と強がって見せるが、そこに…
「…今だ!
 チャンス到来ッ! 華麗にキメるぜ!!」
とサエンが言うと同時に放たれたエアマスターのショルダーミサイルが、バスターライフルのビームを
避けたGファルコンの射線上に襲いかかる。
「…ぬぉわぁ!!」
さしものバーツもこれは避け切れない…しかし、黙って直撃してやるバーツでもない。
咄嗟にバルカン砲の引き金を引き、接近するミサイルを撃ち落しにかかる。
間一髪、ミサイルの撃破に成功……したものの、距離が近すぎた。
ミサイルの爆発による爆煙の中に突っ込むGファルコン。
一瞬視界が煙でいっぱいになる…思わず、バーツがコクピットで言った。
「ありゃりゃ………昨日の酒が抜けてなかったのか?」
こんな大事な決闘の前ですら、酒を切らすことがないのがバーツという男である。

そんなバーツに、サエンが陽気に…かつ不適に、通信を送る。
『悪いけど…アンタの動きのパターン、全部読めてるぜ!』
「んだとぉ…!?」
『フッ………またオレのファンが増えちまいそうだな!
 バーツさん! そろそろ降参した方がいいんじゃないの!?』
「…抜かしてんじゃねぇ!! ガンダムボーイ!」
ついにバーツも激昂する。
『空の守り神』と呼ばれるバルチャー、バーツのGファルコンの反撃が始まろうとしていた。



「そろそろキメさせてもらおうか! バーツさん!?」
サエンが勝負を決めにかかる。
残ったショルダーミサイルの全てをGファルコンに向け解放した後、急激に機体を上昇させ
そのまま、機体両手のバスターライフルを、サエンが予測したGファルコンが避けたであろう方向に撃たせた。
「…勝ったな、バーツ!!」
サエンが叫んだ。
これで決まったはず…
しかし。今回ばかりはサエンの鋭い「読み」も外れた。

バーツのGファルコンは、ミサイルを避けずに、バルカンを乱射しながらそのまま直進してきたのだった。
「パ、パターンが違うじゃん!?」
思わずサエンが驚愕する。バーツにセオリーなど通用しないのだ。
そして、バーツはさらに常識では考えられない攻撃法に出た。
「…どつき合いってぇのは趣味じゃねえけどな!!」

「う、嘘だろ!? …どわわッ!!」
と、サエンは彼らしくもない悲鳴を上げた。
それも無理は無い。
バーツのGファルコンは、ミサイルを凌ぎきった勢いそのままに…
…エアマスターに強烈な「体当たり」をかましたのだった。

飛行機による体当たり。
常識では考えられない事だが、「Gファルコン」の堅牢性ならば、それも一応可能な事ではあるのだ。
無論、実行したのはバーツ一人だけだろうが…
「我ながら、ムチャしやがるぜぇ…」
バーツが呟く。全くもってその通りである。

全速力のGファルコンに弾き飛ばされる形でバランスを失い、落下するガンダムエアマスター。
「くぅ…今のオレってすごくカッコわりぃかも!?」
しかしサエンはそう言うと、落下中の機体を一気に操作し
ファイターモードに変形させ、体勢を立て直すと言った。
「さすがに無傷ってわけにはいかないみたいだな!
 でも……ヒーローにはピンチがつきものさ!!」
そう強がるサエンの耳に、バーツからの通信の声が聞こえる。
『そうかい? でもオレはなぁ…
 一度狙った獲物は、逃がしゃしねえぜ!!』
「…!?」
体勢を立て直した直後の、ファイターモードのエアマスターの進路上に…
その進路を読んでいたバーツのGファルコンが、ミサイルを放っていたのだ。
避けきれず、ミサイルにモロに被弾してしまうガンダムエアマスター。
ファイターモードのエアマスターの周りを爆煙が包む。

「…やったか!?」
バーツが叫ぶ。…しかし、その耳に聞こえてきたのは
『こ………このままじゃオレのファンがいなくなっちまうじゃねぇか!!』
という…実に、サエンらしい言葉だった。
「耐えたってかい…さっすが、ガンダムタイプは丈夫だねぇ…」
バーツは感嘆した。Gファルコンも飛行機としては異常なレベルには頑丈ではあったが
どうやら、ガンダムエアマスターはその上をいっているらしい…



とはいえ、確実に勝負の「流れ」は変わった。
風はこっちに向いている…そう確信したバーツはさらに通信を入れる。
「どうやら、勝利の女神は今日はオレをご指名みたいだぜ!?
 …そっちこそ降参したらどうだい、ジャパニーズボーイ!?」
降参を促しがてら、軽い挑発のつもりで入れた通信だったが…
…バーツが思っていた以上に、サエンはそれに反応した。

「降参なんか…してたまるかよ!」
そう言うと同時に、サエンはエアマスターをモビルスーツ形態に即座に変形させ
そのままバスターライフルを撃たせた。
「おっと…」
そう呟きつつ避けたバーツには、その射撃の精度が落ちている事に気付いた。
先ほどまでの、冷静な先読み射撃とは一線を画す射撃…
…どうも、冷静さを欠いた、ムキになってるような射撃に思えた。
「おいおい熱くなんなよジャパニーズボーイ!!
 そんなんでオレを撃ち落せると思ってんのか!?」
『うるさい…!!』
サエンはそう、さらにらしくない言い方で言い
さらにバスターライフルを乱射する。
「おいおいどうしたってんだよ…」
困惑しながらもその射撃の数々を避けるバーツのGファルコン。
その耳に、さらにサエンの声が聞こえる…
『…約束、したんだ!』
「…あんだって?」
『…アンタに勝って、オレは最強の男になるんだ!』
そう叫ぶとサエンは、彼らしくもない直情的な動きをエアマスターにさせながら…ついにぶちまけた
『そして…ソニアさんを、オレが幸せにするんだ!
 死んでいったアイツじゃねぇ! 生きてるオレがだ!』
「……!?」
バーツにとっても、あまりにも意外な言葉だった。
そして、数拍した後…全てを理解したように、がははは!と豪快に笑った後、バーツは続けた。
「お前さん…なかなか熱いじゃねぇか!
 ははッ!! これじゃまるでオレが悪役じゃねえか!」
その言葉を受け…少し冷静さを取り戻した様子のサエンが返す。
『悪いね…でも、そういう事情なモンでね!
 コッチも負けられないんだよ!』
「そうかい…だがな!
 そういう事情なら、コッチだってなおさらそうそう負けられねぇや!」

そして…二人の決闘の、最終ラウンドのゴングが…今、正に鳴らされようとしていた…



その時だった。
拡声器を通じて港の辺り一帯…そして回線をも通じ、バーツとサエンの耳にも届く声で
ドクの叫びが突如、響き渡った。

『みんな聞けぇぇぇ!! れんぽぉぉぉぉのヤツが来るぞぉぉぉ!!』
辺りは一瞬で沈黙で包まれる。
そして、次の瞬間には大騒ぎ…その中で、露店のブランドがドクにトランシーバーで通信を入れた。
「イヤなお客さんだね! アンタのガンダムで追い返してやりなッ!」
しかし、ドクは意外にも冷静に返した。
『無茶だぁぁぁッ!! 逃ぃぃげぇぇろぉぉぉッ!!』
付近に響き渡ったドクのその声…その言葉を切っ掛けに
蜘蛛の子を散らすかのようにギャラリー達は一斉にその場から逃げ出そうとする。


そして空域…決闘中の二人もまた驚愕していた
「な…なんだってぇ!?」
そうサエンが驚愕の声を上げる。続いてバーツも…
「チッ…ブラッドめ、こんなにはやいたぁな!!」

そのバーツの言葉を聞き、サエンは即座に聞いた。
「バ、バーツさん!? アンタ、知ってたのかい!?
 連邦のヤツらが来るのを!?」
「まぁな…ヤツらが来る前にとっとと片付けて逃げちまう算段だったが
 お前さんが手を焼かせてくれるモンだからよ…」
「そ…そういう事はオレにも教えておいてくれないと!
 ……な、何かが来る!? 早いぞ…」
「このスピードは…!?」


ともに戦後世界有数の高速機を操るバーツとサエンすら驚愕するほどのスピードで迫る、謎の連邦の機体…
「ガンダムアシュタロン」モビルアーマー形態…そのコクピットの中で
パイロット、ジェシカ・ラングは…待ちに待ったこの瞬間に感謝しながら、言った。
「バーツ・ロバーツ………覚悟しな!」



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