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第九話「…コイツはちょっとばかり強烈だぜ!」



エアマスターは主武装のバスターライフル、そしてショルダーミサイルの両方を使い切り
Gファルコンもまた、ミサイルの全てを使い切ってしまった。
万事休すか…サエンがそう思った、その時。
その耳に、バーツからの通信が入った。
『くそ、一対一じゃ勝ち目はねぇか…
 …おいサエン!』
「どうしろってんだい!?」
『ハナシは簡単だ……エサになってくれ!!』
「え、エサ!?」
『そうだ、エサだ!! …オレはちょっくら武器を調達してくっからよ!』
「武器を調達って…どういう事だよ!?」
『説明してる暇はねぇ! とにかく時間稼ぎよろしくな!』
「ちょ…ちょっとバーツさん!?」
混乱するサエンに構わず、Gファルコンは地上の港へその機首の向きを変え
そのまま港へと向かってしまった。

しかし、それを見逃すジェシカではない。
「バーツ・ロバーツ!!
 敵に背を向け逃げるとは、貴様は戦士ではないな!」
アシュタロンが最大推力で、機体のシザースビーム砲を放ちながらGファルコンを追う。
その様子を見て、サエンも一念発起し
「仕方ねぇ…今更逃げ出せねぇし………頑張るしかないな!」
と言うや否や、ファイターモードのガンダムエアマスターをアシュタロンの方向へ向け最大推力で向かわせる。

そして…
「悪いなバーツさん…アンタの技、借りるぜ!」
「な…何だと!?」
その時、ファイターモードのエアマスターが、そのままアシュタロンに対し…
…先程の「決闘」でバーツがサエンにしたように、強烈な最大推力による体当たりをかました。
流石に弾き飛ばされるアシュタロン…その場でモビルスーツ形態に変形し、なんとか落下を免れる。
その様子を見てサエンは、エアマスターをモビルスーツ形態に変形させ、決めポーズを取らせた後
得意げに言った。
「…型破りな魅力だってアピールしなきゃな!!」
「ええい、往生際の悪いヤツめ…」
完全に憤った様子のジェシカは…アシュタロンのアトミックシザースを展開させ
「…そんなに死にたいのか?
 なら………望み通りにしてやるよ!!」
そう言った後、アシュタロンをエアマスターに接近させる。しかし…
ガンダムエアマスターはアトミックシザースをギリギリで回避して見せた。
「な…何だと!?」
驚愕するジェシカ。そこに、ガンダムエアマスターの蹴りが
アシュタロンの腹部に炸裂する。
そして即座にまたエアマスターをファイターモードに変形させ、接近戦の間合いから外しつつ
サエンがまたも得意げに言ってのけた。
「こういう戦い方は、美学に反するんだけどね!」
「なるほど、少しはできるな…」
今度は憤るでもなく、素直にその実力を認めた様子のジェシカ。
改めて、エアマスターにその攻撃の目標を絞り込んだようである。
そして、自機を挑発するように飛び回るファイターモードのエアマスターに向けシザースビーム砲を次々と放つ。
それらの攻撃を、サエンはまたもエアマスターを
モビルスーツ形態に空中変形させる事でアクロバティックに回避し
その後少し挑発的な決めポーズをとらせながら、サエンはガンダムアシュタロンに通信を送った。
『どうしたゲテモノガンダムさん!? オレはまだ生きてるぜ!!』

その通信を聞き、ジェシカは
「…面白い。このアシュタロンをコケにしたこと…
 …その身で償ってもらうよ!!」
と返した後、アシュタロンをまたモビルアーマー形態へと変形させ、ガンダムエアマスターを追う。
その前に既にファイターモードへの再変形をし回避行動に移っていたサエンのエアマスター。
そのコクピットの中で、サエンが呟いた。
「バーツさん…こっちだっていつまでももたないぜ!?
 武器の調達だかなんだか知らないけど…ちゃっちゃとやって欲しいもんだよ!!」



その間にバーツのGファルコンは地上…港のとある地点に迫っていた
その地点は、ドクのレオパルドとブラッドのヴァサーゴが激戦を繰り広げているまっただなか…

気付けば、ガンダムヴァサーゴからガンダムレオパルドが必死に逃げ回っている構図となっていた
その戦闘地域のガンダムレオパルドに向け、バーツが通信を送る。
「…おいドク!聞こえるか」
『お…おおッ! バァァァツかぁぁ!? 助けてくれんのかぁぁぁッ!?』
ヴァサーゴから逃げ回りながら、ドクがやはり威勢良く助けを求めてきた。
しかし、そんなドクにバーツから返された言葉は意外なものだっただろう。
「ちょっとばかし違うなぁ!
 ちょいと火力が足んねぇ、手伝ってもらうぜ!!」
『???どゆことぉぉぉぉ〜!?』

その時、逃げ回るレオパルドを追っていたガンダムヴァサーゴを駆るブラッドも
こちらに接近するGファルコンの姿に気付き、思わず毒づいた。
「…Gファルコンだと!?
 おのれバーツめ、わざわざ死にに来たか…!」
そんなブラッドに対しても、バーツは気軽に通信を送ってきた。
『悪いなブラッド! ちょいとドクを借りていくぜ!!』
「な…なんだと!?」
ブラッドがそう言った刹那、Gファルコンからガイドビーコンのような光がレオパルドに伸びる…
続けざまにバーツがドクに対しさらに通信を送る。
『ちょいとじっとしてなドク!
 少しばかり強引だが…ドッキングさせてもらうぜ!』
「ド、ドッキングだぁぁぁぁ!?」
突然すぎる提案に当然、ドクは困惑する。しかしバーツは構わず、続けて言った。
『ダイス爺さんはできるって言ってた…イチかバチかやってみるぜ!!』
イチかバチか…ギャンブルを愛して止まないバーツが、これもまた愛して止まない言葉の一つである
「お…おおッ!!?」
そしてドクも、状況が理解できてはいないにしても…とりあえずレオパルドの足を止めさせた。

「…させると思ったか!」
その隙を見逃すブラッドではない。足を止めたレオパルドに対し、ガンダムヴァサーゴに
ビームサーベルを抜かせ、滑空しながら接近すると、トドメの一撃を振り下ろしにかかった。
「……これで終わりだ!」
その時だった。
そのヴァサーゴの進行方向上に、頭を破壊された、バイスのドートレス改が立ちはだかった。
「な…なんだと!?」
減速が間に合わず、そのまま激突するガンダムヴァサーゴとドートレス改。
頭の無いドートレス改はそのまま吹っ飛び、地面へと落下した。
辺りに轟音が響く…同時に、ブラッドが驚きの声を上げていた。
「貴様…まだ生きていたのか!?」
『ま〜だメインカメラがやられただけってね♪』
そう、わざわざ律儀に通信を介して返事をしたバイスに対し、ブラッドは…
「…相手ではないわ!」
『ですよね〜♪』
ドートレス改の両腕と両足を、ストライククローを操って一瞬で引き裂き
今度こそバイスのドートレス改をダウンさせたのだった。
「街中でさえなければ、こんなゴミどもは爆発させて終わりなのだが…」
そしてブラッドはそう毒づいた。
その耳に、今度はバーツからの通信が入った。

『ブラッド、お勤めご苦労さんだなぁ!』
「バーツ! 貴様ァ…!!」
『そんじゃ、ドクは借りてくぜ!!』
そして、ブラッドが気付いた時には…「何か」が、港から空中へと離陸した後だった。
そのいびつな形をした「何か」に対しクロービーム砲を放ちつつ、その姿を確認したブラッドは…
…驚愕した。
「な…なんだというのだ、アレは!?
 ガンダムと……Gファルコンが…合体しただと!?」

イチかバチかのドッキングは、まさかの成功。
「す…すげぇぇぇッ!! ホントにドッキングできちまったぁぁぁぁ!!」
「喜ぶのはまだはえぇ、あのジャパニーズボーイを助けねぇとな!」
ガンダムレオパルドとGファルコンがドッキングした機体…言うなれば
「Gファルコンレオパルド」とでも言うべき機体は、そのまま空へと消えていったのだった…



飛翔し、サエンが一人戦う決闘空域へと馳せ参じようと突き進む…Gファルコンレオパルド。
なんとか力技でのドッキングを成功させたものの、この合体の仕方は本来の仕様とはまた違った形のもの。
本来なら、ガンダムレオパルドとGファルコンがドッキングする際Gファルコンの「Aパーツ」は外されているべきであり
これは機体の本来の仕様を無視した強引極まりないドッキングであり、また調整も全くしていない状態であった。
そんな不安定なことこの上ないような状態のGファルコンレオパルドを力技で制御しながら、バーツが興奮気味に叫んだ。
「へへッ! 処女飛行にしちゃ、上出来って所だなぁ!!」
レオパルドのコクピットの中でも、ドクが興奮の叫び声を上げていた。
「お…おおおおッ!! のわぁぁぁ〜!!
 と、飛んでるぅぅぅう!! オレはぁぁぁぁぁぁッ!!
 この空を飛んでるぅぅぅぅぅ〜!!」
そんな声をやかましそうに聞きつつ、バーツはドクに簡単な指示を出す。
「おいドク!! あのカニさんが見えるか!?」
『おおぉぉ!! なぁぁんだあのバケモンはよぉぉぉぉ!?』
「なんだっていいじゃねぇか!
 んなことより…お前のガンダムの残りの弾丸、全部アイツにブチ込むぜ!
 準備はいいかぁ!?」
『お、おおぉぉぉ〜!!』


その時、さしものサエンも流石にピンチに陥っていた。
ガンダムエアマスターの右腕は、既にアシュタロンのアトミックシザースにより引きちぎられた後だった。
しかし、サエンはまだ、諦めてはいない。
「やられるもんか…大勢のファンの女の子を泣かせたくないからな!」
そんなサエンのガンダムエアマスターに今、正にトドメの攻撃をしかけようとする、ガンダムアシュタロン…
「もう遊びは終わりだ!
 ………本気で行くぞ!!」

その時、サエンの耳に、Gファルコンからの通信の声が聞こえてきた。
『離れてなジャパニーズボーイ!!』
「ば、バーツさん!? 遅いよ全く!」
安心した声でそうもらしたサエン。続き、ジェシカもその到着に気付く。
「フン、今更ノコノコと現れたか、バーツ・ロバーツ…!
 ……!? なんだ、アレは…!?」
と同時に…接近するGファルコンと何かが合体した「何か」の威容に、流石のジェシカも驚愕する。

そして…その驚いている間の隙を見逃すバーツではない。
ジェシカの耳に、バーツからの通信が入る。
『アンタもまぁ、いいパイロットなんだろうが…
 ……オレに狙われたのが運の尽きだったな!!』
「な…!?」
『よしドク今だ! 全弾発射だ!
 ケチケチせずに撃ちまくれ!!』
『おうよぉぉ!!撃つぅぅ撃つぅぅぅぅッ!!
 撃って撃ってぇ、撃ちまくるぅぅぅぅぅ〜!!』
そして、Gファルコンレオパルドから、モビルアーマー形態のガンダムアシュタロンに向け
一斉に発射される弾丸やミサイルの数々…
ジェシカの技量とアシュタロンの機動性も持ってしてもそれは…
「…避けきれんだと!?」



爆発、硝煙に包まれるガンダムアシュタロン。
その馬鹿デカい爆発を確認すると、バーツが叫んだ。
「コイツは…ちょっとばかり強烈だぜ!」
「やったかぁぁぁぁ!?」
続きドクもそう叫んだ。
また、その様子を、バーツに言われた通りに咄嗟に離れ
なんとかやり過ごした後に見ていたサエンも
「こりゃなんっつーか…キレイな花火だね全く」
などと呟いていた。


しかし、彼らは少し迂闊だった。
というより、ドクが迂闊だった。
戦いの場で「やったか!?」などとは言ってはいけない。
そう言われた場合、大抵の場合は「やってない」事が大多数だからである。
今回の場合も、やはりやってはいなかった。

レオパルドの全弾射撃により生まれた爆発による爆煙…
その中からモビルスーツ形態のガンダムアシュタロンが現れ、ビームサーベルを構えてGファルコンレオパルドに接近する。
「………ええい!キサマなど!キサマなど!」
ジェシカがそう叫ぶ。
Gファルコンレオパルドはその全推力を使って、なんとかギリギリの所でその斬撃をかわした。
そのコクピットの中で、流石にウンザリした様子でバーツが毒づいた。
「…ま〜だ動けるってかい!?
 これだからガンダムタイプは嫌なんだよ!!」
続き、ドクからの悪い知らせもバーツの耳に入ってきた。
『おいバァァァツよぉぉぉぉ!! こっちはもぉタマ切れだぜぇぇぇ!!』
「ソイツは困ったな…」
流石のバーツも、もうお手上げといった所だろうか…
Gファルコンも…当然だが、重量の重いガンダムレオパルドとドッキングした事により
そのスピードはかなり落ちている……モビルスーツ形態のアシュタロンでも追いつく事は容易だった。
そして、再びGファルコンレオパルドを接近戦の間合いに捉えたジェシカが
勝ち誇ったような声で、言った。
「なかなか梃子摺らせてくれるな、バーツ・ロバーツ…だがこれで最後だ!」
それで最後…そうなるかと思われた。
しかし、そうはならなかった。
Gファルコンレオパルドに、ガンダムアシュタロンがビームサーベルを振り下ろそうとした、その時…
急激にガンダムアシュタロンがその高度を下げ、落下を始めたのだ。
その異変に、ドクが最初に気づいた。
「お…およよッ!? どぉぉしたってんだぁぁぁぁ!?」
続きバーツも、不思議そうに状況を確認する…
「わからねぇが…お姉ちゃん、急に落ちていっちまったなぁ…」
そしてその二人よりもさらに状況が理解できず、かつ困惑しているのがジェシカ本人である。
「な…なんだ!? 何が起こった!?」
彼女らしくもなく、焦るジェシカ…

この状況を理解している者は、この場でただ一人…
ジェシカがGファルコンレオパルドだけに気をとられている
そのスキに、アシュタロンの主要バーニアを、エアマスターのバルカン砲で破壊した
ガンダムエアマスターのサエン、ただ一人である。

落下していくアシュタロンを尻目に、得意げにサエンは言ってのけた
「こういう時にこそ………頼れる男がいい男だろ?」
その声が通信として、ジェシカの耳に届いていたか届いていなかったか…それは定かではない。だが…
「クッ、スラスターが…高度を維持できん!」
ともかく、ジェシカにはアシュタロンの落下を止める事はできない。
「バ………バカな!? このワタシが………!!」
ただそう呟き、重力の流れに身を任せるのみ…



バーツとドクもようやく状況が飲み込めた様子だ。
ドクが歓喜の叫びを上げる
「おぉぉぉッ!! サエンのおかげだったのかぁぁぁぁ〜!!」
一方バーツは冷静に状況を確認すると、言った。
「アイツ、もうカニさんには変形できねぇみたいだな…
 今日はここまで!総員トンズラだ!」
その耳に、自由落下の真っ最中のジェシカからの通信が入る
『ま…待て、貴様! それでも戦士か!?』
「戦士? ま〜たまたご冗談を!
 オレはただのさすらいの飛行機乗りってね!」
その言葉を最後に、Gファルコンレオパルド、そしてファイターモードに変形したガンダムエアマスターは
空域を猛スピード、最大推力で離脱し…そのまま「トンズラ」してしまったのだった。


さらに落下を続けるアシュタロン。この高度から地上、もしくは海上へ叩きつけられれば…
…機体はともかく、乗員はただではすまないだろう。
ジェシカは、死の覚悟をした。そして、呟いた…
「…アタシもここまでか。
 バーツ・ロバーツ…なるほど、最後には相応しい相手だったな…」
そして、最後に最高の「戦士」と戦う事ができた事を、ただ、天に感謝した…


一方…
ブラッドのガンダムヴァサーゴも、Gファルコンレオパルドを追って空域まで辿り着いていた。
一応飛行も可能とはいえ、空戦用の機体というわけではない。辿り着くまでに時間がかかってしまった。
「クッ…! どこだ!? バーツ!!」
その耳に、テンザン級のパメラからの緊急通信が入る。
『ブラッド少佐! ジェシカ准尉のガンダムが!』
「バカな、あのジェシカ・ラングが……旧式相手に!?」
『そこからなら回収に間に合います、急いで!』
「…言われるまでも無い!
 アシュタロンは……?
 …まさか、これほど近くとは…!!」

そして、上方…落下するアシュタロンの姿を確認すると
ブラッドはガンダムヴァサーゴの機体推力をフルに使わせ、その落下方向へ先回りするように
機体を動かした。
そして、機体両腕のストライククローを展開させ…すんでの所で
ガンダムヴァサーゴは落下するアシュタロンを、クローをアシュタロンの機体背面にめり込ませるという
強引極まりない方法でキャッチしてみせた。

助かった事を理解すると、ジェシカが…彼女らしくもなく、弱々しげな声で
感謝の意を告げた。
「……すまん、礼を言うぞ」
返事をするブラッドにも、作戦開始時の威勢は既に無い。
「礼など必要無い…
 …しかしバーツ、またも取り逃がしたか…
 おのれバーツ…いずれ捕らえてやるぞ!」
そして、ブラッドから「バーツ」の名を聞いて…先程の戦いを
頭の中で振り返ったジェシカは…感慨深げに、言った。
「バーツ・ロバーツ……中々の戦士だったぞ」
その声を聞いて…ブラッドが訊ねた。
「そうか……それで、貴様は満足か?」
「いや、まだだ……ヤツをこの手で、仕留めるまでは満足はできん!」
そう返事したジェシカの声は、先程の弱々しげな声とは違い
再び「戦士」としての目標を見据えた、女戦士そのもののような声だった。
その声を聞いて、ブラッドは一言
「……それでいい」
とだけ呟き、アシュタロンを抱え、テンザン級への帰還に向かった。
その耳に、グレッグからの通信が入る。
『ダメですぜ少佐、ガンダム無しじゃあバルチャーどもを押さえ切れませんでしたぜ!
 投降してきたヤツらは確保できましたが、他のは大分逃げられちまいましたぜ…』
「…致し方あるまい。
 多数を確保できただけでも、収穫と思うほかなかろう…」
そう返したブラッドの脳裏には、一昨日のソニアとの会話が思い出されていた。


「……いいか、バーツは我々が逮捕…若しくは、最悪の場合その場で処分する。
 いいな…」
「できるもんならねぇ」


やはりソニアは、いまだニュータイプか…ブラッドは改めて、そう感じた。



その頃地上では…
大多数の観衆らが逃げてしまった後の港街。
しかし、中には残って観戦を続けるつわものもいた。

そのうちの一組が彼ら…ダイス工房の面々である。

「結局決着は付かずじまいとは!
 なんとも拍子抜けじゃのう…」
「あの二機、また我々の工房に修理にきてくれるでありましょうか!?」
「当たり前じゃろて!
 しかしバーツのヤツめ、あんな所でドッキングを使うとはのう…」
どこまでも機械バカ…戦いが終わった後の港街で
こんな事を語り合ってる二人の姿を眺めながら、付き添いのコルトは心底そう思った。
そして大きな溜息をついた後、呟いた
「んな事言ってる場合じゃねぇよったく…
 死傷者出てねぇだろうなオイ?」

幸い…というより奇跡的にも、今回の戦いでの民間人の死傷者はゼロで済んだという。
正に、不幸中の幸いとでもいったところだろうか。


…とはいえ、街…というよりは、港への被害はそれなりに甚大だったようだ。
カサブランカに帰った後、店の窓を全開に開けて
双眼鏡を片手に持ち、戦いの後の港の様子を眺めていたパティは言った。
「コイツはま〜たハデにやってくれたもんだねぇ」
「ったく、だから決闘なんてのはキライなんだよ…」
店の食器類を洗いながら、ソニアがそう返した。
そんなソニアに対して、何故か少し楽しそうにパティが言う。
「でもまぁ…楽しかったじゃん? 久々に賑わったしさ」
「アンタも…たいがいタフな子だよ」
「当然! なんせ、戦後生まれなモンでね!」
戦後…アフター・ウォーという時代は、タフでなければ生きてはいけないのだ。


タフ、といえば…
一時期まで、通信でドクを叱咤していたブランドと
時間稼ぎの為にドートレス改を失ったバイスの、二人のタフガイはどうしているだろうか?

答えは…「騒ぎに乗じて奪取したジープで内陸部を逃走中」であった。
その車中、ジープを運転しながらバイスがボヤいていた。
「…ったくよぉ♪ オレ様ぁ命を投げ出してまで戦ったんだぜェ?♪
 運転くらい代わってくれたっていいんじゃね〜の♪」
「うるさいわね、黙って運転おし!
 …ったく、連邦が来るなんて聞いてないわよ!
 でもなんとか逃げれたし…まぁ良かったわね」
「ドクはどっかいっちまうし♪
 アンタの艦も大ダメージじゃねぇかど〜すんだよ♪」
「うるさいわね! 出直しよ出直し!」

そんな会話が為されながら、ジープは夕焼けの空を背に走っていった…



「ここまでくれば安全ってとこだな?」
ここは、かつてグレッグが教えてくれた「安全ルート」…
なんとか逃げ出してきた、満身創痍のGファルコンレオパルドとエアマスターは
正に命からがらこのルートに辿り着いたのだった。
そして…不意に、サエンがバーツに、こう語りかけてきた。
『いやバーツさん…オレ、まだまだアンタにゃ敵いそうもねぇや』
その言葉を受け、上機嫌そうにがははは!と笑った後、バーツはさらに続けた。
「ようやくわかったってかい? まぁ安心しな! すぐに超えられるさ…
 …オマエならな!」
『ま…そうかな?』
そう満更でもない様子で返したサエン。続いて、レオパルドの中のドクがまたまた叫びを上げた。
『ヒャアーハッハァー!! 最高の祭りだったなオマエらぁぁぁぁぁッ!!』
その声を聞いて…思い出したかのように、バーツが言った。
「やべ、ドクの事忘れてたぜ…」
『バァァツおまえぇぇぇ!!
 オレをどこに連れてくつもりだよぉぉぉぉぉ!?』
「ど〜しますかね〜…ま、そのウチブランドのヤツのところにでも
 送り返してやっから、勘弁な!」
『なんだそりゃぁぁぁぁぁッ!?』
と、ドクが大声で叫んだ後…サエンの通信がそこに割り込んだ。
『…そんじゃ、この辺でお別れだなバーツさん』
「…おう」
少し寂しげに、バーツがそう返した。
続けてサエンは一言
『もうしばらくは…アンタの背中を追っかけ続ける事になりそうだよ』
とだけ言うと、エアマスターの機体をバーツ達とは別方向に向けて
彼の居城への帰路へとつき、エアマスターは夕焼けの空へと消えていった…


その後ろ姿を、しみじみと眺めていたバーツ…
その風情に水を差すかのように、またまたドクの叫び声が聞こえてきた。
『オレ達はどこに帰るってんだぁぁぁぁ!?』
急に現実に引き戻された感覚…でもまぁそれも悪くない、と
バーツは、少しだけ上機嫌そうに言った。
「ま…一旦オレのアジトに戻ろうぜ。
 いい果物がたっぷりあるからよ」
『おおぉぉぉぉッ!! ソイツは楽しみだぁぁぁぁ〜!!』
「そのガンダムもよ…オレに知り合いにいいメカ屋がいるからよ?
 その爺さんに見てもらえ。まだまだ、ソイツは強くなれるぜ?」
『なんだってぇぇ!?
 ハァーハッハ!! なにからなにまですまねぇぇなぁぁぁ!!』
「いいってことよ…
 や〜れやれ………にしても」
そして、バーツは…オレンジ色の夕焼け空と
その日に照らされ、美しい色で輝く海を眺めながら、しみじみと呟いた。
「…何とか今日も生き延びれたぜ!」

こうして「祭り」は幕を閉じたのだった。



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