エピローグ「……今日も、この空のどこかを飛んでるのかもしれないね」




あの頃と変わらない「カサブランカ」の、大窓の近くの四番テーブルにて…

「それが、アイツを見た最後だったね…
 昨日の事みたいに覚えてるよ…」

ソニアはそう、心から懐かしそうに昔話を締めくくった…
…その話を、最初から最後まで心底興味深げに聞いていたミシェは…
少しの間放心したように黙っていた後、唐突に、思い出したかのように礼を言った。

「あ、ありがとうございます! これで面白い記事が書けそうです!」
「なぁに…こんなオバサンのハナシでも、役に立てたなら幸いさ」
そうソニアは自嘲気味に言った。
もう、あれから二年…いや、まだ二年、か。
あれから時代もさらに移り変わった…ソニアが感慨に耽っていると
ミシェがさらに、質問をしてきた。

「それで……今、彼は?」

その質問を受け…大窓の外に広がる、澄み渡るほどの青空を眺めながら、ソニアは答えた。
「そうだねぇ…
 最近じゃ噂もトンと聞かなくなったしねぇ。
 もう死んじまったのかもしれないし…」

そして…もうGファルコンの飛ばなくなった、眩しい青空を
様々な思い出を噛み締めるように、さらに眺めながら…ソニアは言った。

「……今日も、この空のどこかを飛んでるのかもしれないね」


(了)


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