「三匹の主人公」




むかしむかしあるオリキャラ軍に、熱血教導隊長エイブラム・M・ラムザットさんと
シェルド・フォーリー、ジュナス・リアム、ルーク・ルザートという三人の主人公っぽい少年がおりました。
他にも何人かいたような気がしたが知らんな。


ある日、エイブラムは教導活動の一環として「かわいい子には旅させよ」と
彼ら三人の主人公風少年らに、心を鬼にして一ヶ月の間外の世界で一人一人自活するように命じました。
「自らの力だけで自立した生活ができなければ、戦場では生き残ることはできんぞッ!」
こうして主人公系三人衆の外の世界での自活がはじまりました。

一人目、早熟少年ジュナスは誰にも迷惑はかけまいと
とにかく急いで、不動産屋で手っ取り早く住居を借り
誰よりも早く新生活を始めました。
しかし彼が利用した不動産屋「ニードル不動産X」が悪徳だった為、ジュナスは「いわく付き物件」を借りてしまい
夜は部屋中に悪霊がたびたび出て、時折聞こえる「宇宙の声」とのダブルパンチで彼を悩ませたそうです。

一方、防御能力に定評のある熱血少年シェルドは
とりあえず頑丈で強固な、安全性の高い家に住みたいと考え
整備士としての先輩だったケイさんやライル、ダイス、ミンミらと共にじっくり安全性の高い家を設計し
急ピッチで仕上げ、そこに住み始めました。
耐震構造Lv10です。
しかし肝心の工事を悪徳業者「ニードル建設X」に任せてしまったが為に
耐震用の鉄骨を何本か抜かれてしまった上に
費用は全てシェルド持ちだったので、彼は20年ローンを組まされるハメになりました。
若いうちから大変ですね。

そしてザ・エリートスナイパールークはそのエリートの生まれをフルに活用し
オートロック、最高級の警備、屋上プール、秘書のハワード・レクスラー爺やなど
全て完備された高級マンションの最上階全ての部屋を借りて新生活を始めました。
あまり若いうちからエリートをやっていると金銭感覚が麻痺るようです。
みなさんは気をつけましょう。


そして数週間後。
三人はそれぞれ新しい生活に馴染み、お互い連絡を取り合ったりもするようになりました。
しかしその三人の生活を、突如破壊しようとする者が現れました。

「ヒャアーハッハァー!! ぶっ壊してやぁぁるよぉぉぉッ!!」

絶賛リストラ中のドク・ダームです。彼は今、金欠のオリキャラ軍の資金稼ぎの一環として
ヤーさんに雇われて、地上げ屋のバイトをしていたのでした。
ドクの「恐怖」アビリティを活かした地上げ屋生活は順調で
彼はヤーさん達の間では「地上げの狼」の異名で呼ばれるほどに出世していました。
ジュナス、シェルド、ルークの新しい住居は、それぞれドクの地上げの担当区域に
しっかりと入ってしまっていたのでした。


そしてある日、ジュナスの住む賃貸の前に犬型MS「ラゴゥ」が現れました。
パイロットはもちろん、地上げバイト中のドクです。
ドクはラゴゥのスピーカーをONにして叫びます。
『ひゃっはははーッ!! さっさと立ち退かねぇぇとぉぉぉ!!
 家ごとぶっ潰しちまうかもぉぉぉッ! しんないかぁぁもぉぉぉ〜!!』

その大声は町中に響き渡ったそうです。
非番という事で眠りこけていたジュナスは、ドクの声を聞いて
すぐに飛び起きて家を出て、言いました。
「このプレッシャーは…ドクさん!? 何でこんな所に!?
 というか、何をしているんだ!? あなたはこんな所で…」
『あれぇぇジュナスじゃねぇぇかよぉぉぉッ!!
 どぉぉすっかなぁぁぁ…ジュナスじゃぶっ潰すわけにもいかねぇぇしなぁぁぁ…
 でも仕事だからぁぁ! ぶっ潰さねぇぇとカネもらえねぇぇしなぁぁぁ!!』
「仕事? ドクさんまさか…地上げの仕事を!?」
流石は元NTかつ通信適正もあるジュナス君。
状況把握のスピードは流石の一言です。というかご都合展開です。
『おぉぉよぉぉぉッ!!』
「ぼ…僕だって簡単に立ち退くわけにはいかないんだ!
 ここは僕の家なんだ!」
ジュナスは必死に抵抗しましたが
『んんんんん…まぁぁぁいぃぃぃやぁぁぁ!!
 ぶッ壊ぁぁぁ〜すぅ〜!! ジュナスぅぅどけぇぇい!!』
生身でMSと戦うのは流石にムリでした。
「クソッ、逃げるしかないのか!?」
ジュナスが家から脱出すると同時にドクは
ラゴゥの背中の連装ビームキャノンをジュナスの賃貸に向け発射し、破壊しつくしました。
ガンダム世界ともなると、地上げもなかなかダイナミックですね。
「僕の家が消えていく……それでも生きていかなきゃいけないんだね…
 宇宙の声よ…僕を導いてくれ…」
ジュナスは目の前に広がる現実に呆然としつつ
家がなくなってしまったので、一旦親友のシェルドの家に転がり込むことにしました。



そして、シェルドの新築一戸建て(耐震構造Lv10)に逃げ込んできたジュナス。
ジュナスは事情を一通りシェルドに説明しました。
「まさか、ドクさんの地上げ区域に僕の家が入ってたなんてなぁ…
 あぁ…僕の家財道具一式が…全てが消えていく…」
凹むジュナスをシェルドは慰めます。
「ま、まぁ元気出しなって。
 過ぎた事を言っても始まらない、それよりこれからの事を…」
その時、シェルドの家の前でゴオオオオ、ととても大きな轟音がしました。
「何だこの音!? うるさいなぁ…」
「ま、まさか…」
何かを感じ取ったジュナスを他所に、シェルドは
轟音の発生源を確かめるべく、家のドアを開けました。
ドアを開けると、シェルドの家の前にはMS「ドーベンウルフ」が鎮座していました。
先程の轟音は、ドーベンウルフがシェルドの家に向かってスラスターを吹かせていた音だったのです。

『ヒャアーハッハァー! さっさと立ち退かねぇぇとぉ(ry』
パイロットはやはり必殺地上げ人、ドクでした。
シェルドの家もドクの地上げ担当区域の一つだったのです。
『あれぇぇ、今度はシェェルドじぇねぇぇかよぉぉぉ!!
 ハァーハッハ! 今日は色んなヤツに会う日だなぁぁぁッ!!』
「ジュ、ジュナス!! こっちにもドクさんがぁ!!」
「や、やっぱり!!」
ジュナスの予感は的中しました。
しかし、シェルドは得意げに言います。
「安心しろジュナス、この家の防御力は完璧だ!
 どんなに攻撃されたって、絶対に壊される事なんか有り得ない!」
完全にフラグ発言でした。
次の瞬間、シェルドの家(耐震構造Lv10)は、ドーベンウルフの「八連ミサイルランチャー」を
鉄骨の抜かれた手抜き工事の部分にピンポイントアタックされ、脆くも崩れ去りました。
「こ、壊される事は無いんじゃなかったのかよシェルド!?」
「ウォーズ仕様の八連ミサイルは流石にムリだった…」
二人は命からがら脱出できましたが、20年ローン付きのシェルドの家(耐震構造Lv10)は
ただの瓦礫の山へと姿を変えてしまっていました。
『ヒャアーハッハァー!! 八連ミサイルマジつえぇぇぇッ!!』
ドクが叫びます。ドクが乗っている=最新でもウォーズでのドーベンウルフ、ということで
八連ミサイルの威力は絶大ですね。


そしてジュナスとシェルドは、ルークの高級マンションに逃げ込みました。
くたくたになって辿り着いた二人を受け入れたルークは
二人を安心させる為にこう言いました。
「大丈夫だよ、シェルド、ジュナス…このマンションの防衛設備は万全さ!
 絶対に突破される事は」
「だからフラグ発言はやめるんだ!!」
「何でそうやって死に急ぐんだ!?」
よかれと思って言ったのに総スカンを受けてしまいました。
切ないですね。
そこに執事としてバイトをしていたハワードさんが現れ、焦った様子でルークに報告しました。
「ぼ、ぼっちゃま! 謎のMSの襲撃です!」
「えぇ!? じゃあ、ここにもドクさんが…」
ジュナスの予想は的中しました。
そして次の瞬間、三人の耳にあの魅惑のドクダームボイスが届きました。
『さぁぁッ!! どう料理して欲しいぃぃぃ〜!!??』
言うまでもありませんが、ルークのマンションもドクの地上げ担当区域に入っておりました。
ドクは今度は、マニアの中にはこのMSが一番美しいという者もいる(シャア談)という
可変MS「バウンド・ドック」に乗って地上げにやってきたのです。
「クソ、やっぱりドクさんか…」
「せめて僕らのMSがここにあればなぁ…」
ジュナスとシェルドがもはや諦めている間も、ルークは妙に冷静でした。
そしてルークはやはり冷静に、こう言いました。
「だから、大丈夫だって…
 このマンションは、旧ジェネレーションシステムによって守られてるんだから」
「旧ジェネレーションシステムって…まさかアレ!?」
とジュナスが驚いている間に
『と…時が見えるよぉぉぉな気がぁぁぁ…するかもしんないかもぉぉぉぉッ!!』
ドクのバウンドドックは、危険を即座に察知して地下から発進した
マンション警備用MS、ラスボス仕様Oガンダム(実戦配備型)にボコられて撃墜されてしまっていました。
「え…」
「何、これ…」
呆然とするシェルドとジュナス。そんな二人に、ルークは言います。
「…これが、今日までずっとレベル上げを続けてきた機体の実力だよ…
 君らがワールドとかの新作に出ている間も、ずっとウォーズでレベル上げを続けてきた、ね…」
「………」
「………」
エリートが本気で機体育成をすると恐ろしいですね。


ちなみにその後、不死鳥のように蘇ってキャリベに帰還したドクは
決めセリフを無断使用した門で、後でブラッド先生に訴えられたそうです。

めでたしめでたし。


総括:これ書いてた時点ではシェルド以外生き残れないとは思わなんだ