「浦島閣下」



むかしむかしあるオリキャラ軍に、イワン・イワノフ閣下という木星帰りのNTがおりました。
艦隊司令、ゼノン・ティーゲルをして「チャップリンの尻尾」と言わしめたその男は
生まれながらのコメディリリーフであり、またスべり芸人でもありました。

ある日閣下がMS「メッサーラ」に乗って月面を散歩していると
「サイコ・ハロ」率いる旧ジェネレーションシステム防衛隊にいじめられている
カニもどきMA「ヴァル・ヴァロ」を発見しました。
「うぉぉぉい閣下ぁぁぁッ!! たぁぁすけてくれぇぇ〜いッ!!」
閣下の姿に気付いたヴァル・ヴァロのパイロット、ドクは
閣下の方に近寄りながら、そう助けを求めました。
「や、やめてえぇッ!
 こっちに来るなっての!! ワシは弱いんだぞぉ!」
閣下はそう叫びました。
しかし無情にも、サイコ・ハロ率いる旧ジェネレーションシステム防衛隊は
イワン閣下のメッサーラにもその攻撃の手を伸ばしてきました。
「気をつけろかっかぁぁぁッ!! ソイツら恐ろしくつえぇぇぞぉぉぉ〜!!」
「安心せい!
 ピキ〜ンッ!と光ってパァーッと見えたんで、戦い方を教えてやる!!」
そしてイワン閣下のメッサーラ&ドクのヴァル・ヴァロと
サイコ・ハロ率いる旧ジェネレーションシステム防衛隊の戦闘が始まりました。
今にも唸り声すらあげそうな勢いで閣下達に迫るサイコ・ハロ。
擬音をつけるなら「グララアガア」でしょうか。
それに対し射撃武器で応戦するメッサーラとヴァル・ヴァロ。
ドーン、グララアガア、ドーン、グララアガア。
ところがビームは通らない。Iフィールドで防がれる。
そしてサイコ・ハロは容赦なく、MAP兵器「地ならし」を繰り出します。
「ぐあぁッ!
 ヤ・ラ・レ・タ〜ッッ!!」
「時が見えるよぉぉな気がぁぁ…するかもしんないかもぉぉぉッ!!」
結果、二人の愛機はサイコ・ハロに地ならしされて
もうくしゃくしゃに潰れてしまいました。
メッサーラとヴァル・ヴァロを撃破した事を確認すると、サイコ・ハロ達は去っていきました。
しかし…

「………な〜んて、敵はもう行ってくれたかな?」
「ふ…不死鳥のよぉぉに蘇るこのオレさまぁぁ〜!!」
二人は生まれながらのギャグキャラ補正により
なんとか無傷で脱出できていました。
「やった生き残れた!
 予想通りだ!! 別に嬉しくないぞぉ〜♪」
「ひゃぁぁぁッ!! 死ぬかと思ったぁぁぁ〜!!
 かっかのオカゲで助かったぜぇぇ〜!!」
「そう! ワシのオカゲで助かったんだぞ!……多分!
 流石ワシ! キミもワシに感謝するように!」
そして、ドクはイワン閣下にお礼をすべく、こう言いました。
「ヒャアーハッハァー!!
 オレ閣下にお礼してぇぇかもしんないかぁぁもぉぉ!!」
「お礼なら大歓迎だもんね! 何をくれるのかな?
 どうせなら…お腹空いたし、中華料理をくだチャイナ!!」
「もっとうめぇぇモンがいっぱい喰えるとこに連れてってやぁぁるぅぅ!!
 連れてって連れてってぇ、連れて行きまくるぅぅぅ!!」
「おお、そりゃすごい!!」
渾身のダジャレをスルーされてもメゲない、閣下の心の強さは見習いたいものがありますね。
ともかく、二人は一度オリキャラ軍本部に帰還した後に
深宇宙探査用MS「スターゲイザー」に乗って、ドクが案内する中、深宇宙へと旅立ちました。


そして二人の初期魅力値1の男たちが乗るスターゲイザーは、深宇宙のどこかにある
謎の要塞「リュ・ウグウ・ジョー」へ辿り着きました。

「ヒャアーハッハァー!! 着いたぜぇぇ!!
 ここがリュ・ウグウ・ジョーだぁぁぁ!!」
「竜宮城のパロディとは!? こりゃ美しいエターナ姫かマリア姫ちゃんあたりが
 ワシをもてなしてくれるんじゃないの!? ワクワク…」

そして閣下がドクに案内されるまま進んでいくと
この要塞の最高司令官の美しいオカマ姫さまが、色とりどりのマッチョメンたちと一緒に
閣下を出迎えてくれました。
「ウフフフフフフ…ようこそ、イワンちゃん♪
 アタシはここの主人のブランド・フリーズ姫よォ!」
「えぇ…」
「この度はウチのドクを助けてくれてありがとうねぇ…
 お礼に、要塞の中をご案内してあげるわ!
 どうぞ、ゆっくりしていってねぇ…」
その圧倒的プレッシャーに威圧されたイワン閣下は
「い…嫌だ、ワシは逃げる! なんか悪意がワシの中に流れ込んで来るような気が!!」
と叫び逃げようとしましたが、ブランド姫の従僕であるデニスとギルバートに
すぐに取り押さえられてしまいました。
「ムダな抵抗はおやめ!
 このアタシからは………絶対逃げられやしないんだからねェ!」
「いかん、ワシにも時が見えるような気がするかもしんないかも…」
「ウフフフフ…連れて行きなさい!」
哀れ閣下は、リュ・ウグウ・ジョーの広間ヘ嫌々案内されるハメになりました。



閣下が用意された席に座ると、閣下の席にゴッグやズゴック(のコスプレをしたデニス達)
たちが、次から次へと素晴らしいごちそうを運んできます。
しかし、ムーディな音楽と共に繰り出される、ブランド姫のそれはそれは官能的なダンスの前に
イワン閣下の食欲は完膚なきまでに破壊しつくされてしまい、箸は一向に進みませんでした。
ここはまるで、地獄のようです。
そして、踊りを終えたブランド姫はしきりに閣下にこう言います。
「もう一日、いてください。もう一日、いてください」
「いやワシはもう帰る! 帰るぞい!!」
「…可愛くないわね! いい加減に観念おし!」
「ひィ! ドク助けてくれぇ〜!!」
その叫びは、誰の耳にも届きませんでした。
そうして閣下がブランド姫に言われるまま宇宙要塞で過ごすうちに、数週間が経ってしまいました。

「ワシもう帰りたいんですけどー」
百戦錬磨のイワン閣下も流石にウンザリです。
閣下は意を決して、ブランド姫に言いました。
「ブランド様ぁ、ワシそろそろ地球に帰りたいんだけど」
「もう帰るって? …もしよかったら、このままここで暮しては」
「いやいやいや、ワシの帰りを待つ者もおるので!
 …いやホントにいるんだって!」
するとブランド姫は、さびしそうに言いました。
「…そう。残念だけど、今日でお別れになりそうねェ…
 じゃ、おみやげに玉手ラプラスの箱をあげるわ!」
「玉手ラプラスの箱?」
「そうよ。ウフフフ…絶対に開けちゃダメだからねぇ!!」
こうしてようやくブランド姫と別れられた閣下は、またドクと共にスターゲイザーに乗って
地球への帰路に着きました。


しかし帰り道に迷ってしまい、二人の乗るスターゲイザーは地球に帰るどころか
そのまま外宇宙まで旅立ってしまいました。
「うっひぃぃぃ!! ここはどこぉぉぉ!?
 オレはだぁぁれぇぇぇ!?」
「…聞こえる! ワシにも『宇宙の声』が聞こえるぞ!!」
「えぇぇぇ!? マジでかぁぁぁ!!
 なぁぁんて言ってんだぁぁぁぁ!?」
「いやぁなんと言ってるかまではわからんけど…
 でも何か叫んでる感じがするぞ〜!」
「さけんでるぅぅ〜?」

しかしそれは「宇宙の声」ではなく、母星を失って彷徨っているELS達の叫び声でした。
「ん? なんだかイカみたいなのがいっぱいこっちに向かってくるぞ?」
「ぎゃぁぁぁ!! 同化されちまぅぅぅ!!」
「やられはせぬよ! あんなヤツら、エイっとカレイにサケてヤリイカ!
 ……って当たってるぅ!?」

そんなこんなで来るべきELSとの対話をテキトーに終え
全身をメタル化した上で地球に帰還したイワン閣下とドクでしたが
色々と寄り道をしているうちに、地球では時が流れに流れて
時代は既にターンエーの世界観「正暦」に突入していました。
そうとは知らずに、地球に降下したメタル閣下とメタルドクの二人の乗るスターゲイザーは
ムーンレィスと間違われてミリシャの部隊に攻撃を受けてしまいます。

「こりゃ参ったわい! ザクみたいなのがザックザクおるぞ!!
 …こら、弱いからってワシを狙うな!!」
「ひゃあぁぁあぁ!! ボルジャァァノンがいっぱいだぁぁぁ!!
 そぉぉいや閣下ぁぁぁ、姫さまから何貰ったんだっけぇ!?」
「何だったっけ!? あぁそうだ、この箱だ!」
ボルジャーノンのマシンガンの弾が飛び交う中、メタル閣下はブランド姫に言われた事も忘れて
スターゲイザーのコクピットの中で、玉手ラプラスの箱を開けてしまいました。
すると、玉手ラプラスの箱からもくもくと黒い煙が溢れ、イワン閣下を包みました。
そして…
「……ん? ここは一体…? !? ワタシは…?」
「おぉぉ閣下ぁ!? どぉぉしたぁぁぁ!?」
「…そうか、ワタシは今まで……
 …ドク・ダーム。ワタシは目を覚ましたぞ。そしてワタシの成すべき事がわかった…」
「おおッ!? 閣下何言ってんだぁぁぁ!?」
「…ワタシは時代の立会人として、ニュータイプの…いや、人類の行く末を見守らねばならん!
 人類の革新を見届けるまでは……死んでも死にきれん!」
玉手ラプラスの箱の煙を吸い込むと、イワン閣下はなんと
裏閣下ことG−ZEROイワンに変貌してしまいました。
つまり、今の閣下はただの閣下ではなく、メタルZERO閣下というわけです。
「我々はここで果てるわけにはいかん! ドク・ダーム!
 道を切り開く為……戦うぞ!!」
「お…おおッ!?」

そして、メタルZERO閣下とメタルドクの乗るスターゲイザーはミリシャの部隊に突撃をかけました。
俺達の戦いははじまったばかりだ!

めでたしめでたし。

総括:女性キャラが一切出ない回もある