【世紀末武闘伝 シャイニングガンダム】 Fire氏
未来世紀009X年 地球はDG細胞に侵された
海は涸れ、地は裂け、あらゆる生命体は絶滅したかに見えた
しかし、人類は死に絶えてはいなかった
DG細胞は全ての文明を破壊し尽くし、世界は暴力が支配する恐怖と混乱の時代になっていた
草木が枯れ果てた荒野に砂塵が舞っていた。4輪駆動のバギーに乗った二人組の男女が全速で疾走していた。
後部には、山と積まれた食料や水がある。
そのバギーを追う者たちが居た。爆音を響かせて、二輪駆動の物体が接近する。
デスバイク――DG細胞によって生成されたデスアーミーの新種である。下半身が二輪のバイク形態になっていた。
その他にも、この時代のデスアーミーには、特筆すべき独自の形態があった。
頭部をまるで鶏冠のように、モヒカン型の毛髪が覆っているのである。
それから、このデスバイク隊には更に特徴があった。「Z666」の刻印が体部のどこかに施されているのである。
「オラオラオラオラ!逃げるんじゃねぇよ!」
Z666の刻印がされた何十体ものデスバイク隊の中で、ただ一人、普通の二輪バイクに乗っている者がいた。
真ん中を走るこの男、その名をブラッドという。
「うーむ、このままでは逃げられるな。よし、武器を使え」
ブラッドの命令に従い、デスバイクの一体がボウ・ガンを取り出した。走りながら構え、撃つ。
抜き放たれた矢が、狙いを過たずバギーに突き刺さった。
バギーは見事に横転し、運転していた男女が空中に投げ出される。
ボウ・ガンを撃ったデスバイクのコックピットから声が聞こえた。
「ハハハハハ!やったぜ。やっぱ、生きた人間でやる射的はおもしろいな」
デスバイクのコックピットから、ブラッド隊のメンバーが降りた。どいつもこいつもモヒカン頭である。面倒だから、これからは全員モヒカンと呼ぶことにする。
「ブラッド様、こんなに食料がありますぜ」
モヒカンが戦利品を押収していた。その中にはスーツケースもあった。モヒカンがスーツケースを開けると、中には数え切れないほどの札束が入っていた。
「なんだ、こりゃ。こんなもん、今時鼻紙にもなりゃしねぇぜ」
「まったくだ、ハハハ!」
「ブラッド様、あの二人はどうします?」
モヒカンが男女の処遇を訊ねると、ブラッド歯を輝かせ、快心の笑顔で言った。
「俺がおまえ達に言うことは極めてシンプルだ。男は殺せ!女も殺せ!みんな殺せ!以上だ」
DG細胞の浸食は、地球を完膚無きまでに破壊した。だが、人間の環境対応能力はDG細胞さえも凌駕した。
やがてDG細胞への適応は、新たな人種を生み出していた。このような者達は、異常に筋力が発達したり図体がでかくなったり、怪物化をすることになったのである。
DG細胞への感染を免れて、わずかに残った人々は、暴力と恐怖が支配する世界に怯えて暮らすようになっていた。
自由、それはまさに完全なる自由だった。
正義?そんなものは紛い物だ。偽物だ。正義など、人の数だけ存在するのだ。窮屈な正義など要らない。正義を振りかざす偽善者など消えろ。我々が欲するのは自由だ。
フリーダムがジャスティスを駆逐した世界。それが未来世紀末である。