最終篇@ 〜絶望の宇宙〜
訓練再開日、クルー全員が、司令室に集まっていた。
この日、パメラの状態は最悪と言っても過言ではなかった。
それでも、彼女が訓練に参加したのは、
一時でも、ジュナスのことを忘れようとしたため。
先日の深夜訓練の一件を払拭するため。
マリアとクレア、ミリアムは、すぐに異変に気がついた。
パメラを問い詰めても、ジュナスに訊いても、二人は何も言おうとはしなかった。
パメラを乗せ、小型観測艇は出発した。
絶不調のパメラは、観測艇の空間座標が狂っていることに気がつくことができなかった。
長距離砲撃訓練のため、数十分かけて、観測艇は移動する。
「現在位置を伝えます。X67 Y54 Z92…」
パメラの言葉に、司令室に動揺が走る。
その時、通信用のインカムを付けていたアヤカ・ハットリは、
「キャリー・ベースで示す座標位置と異なっています!」
と、ルナ・シーン艦長代理に告げる。
「落ち着け!ただちに観測艇は座標位置を修正…」
瞬間、司令室に警告音が鳴り響く。
「宇宙ゴミが…」
アヤカが呟く。
「宇宙ゴミが、観測艇めがけて接近中!」
「パメラ・スミス通信訓練生!軌道を変えろ!ぶつかるぞ!」
「衝突まで、あと、12秒…!」
「何でそんな位置に来るまで把握できなかったんだ!」
「回避、不能!ぶつかります!」
パメラ・スミスの乗った観測艇を、多数の宇宙ゴミが射抜いた。
「観測艇、大破!」
「通信訓練生の情報を!」
「スーツ内気圧、酸素量、異常なし。衝撃で宇宙に投げ出されていますが…奇跡的に無傷です!」
「救護艇を出せ!」
「了解、準備を」
「無傷?」
「奇跡だな」
「え…?」
「どうした」
「…まさか、いや、そんな!聞こえますか!?パメラさん、聞こえてますか!」
「どうしたんだ!」
「パメラ…?」
「応答ありません…パメラさん!…聞こえますか!パメラさん!」
「何だ!?」
「徐々に、地球に、落ちて…います…」
「…何だと?」
「パメラが」
「このままだと、40分後に…」
「40分後に…?」
「大気圏に、落ちる…!」
複数の声が入り乱れる中、
「パメラァッ!」
ジュナスが、叫んだ。