最終篇C  〜明日の栄光の為に〜




「…駄目だ、許可できな…」
ルナ艦長代理が言いかけた言葉を、ニキ・テイラーが遮って言った。
「分かった。マーク、君に任せよう」
「ニキ?何を考えている!」
「マークは昔から頑固でね、言い出したら聞かないんです。我々が止めても勝手に行ってしまいますよ」
ニキがあきらめたように、ルナ・シーンにそう言った。
「…しかし!」
「それに、こう見えて、マークのパイロット操縦技術は並じゃない。そこいらの正規生より、よっぽど優秀です。」
「…」
ルナはそこで下唇を、少し噛んだ。
「…分かった。マーク、君に任せる」
「ありがとうございます…ルナ艦長代理」
ニキ・テイラーが、頭を垂れた。
「ジュナス!君もだ!パイロットスーツを着用して、準備しろ」
「はい!」
「行くぞ!ジュナス・リアム!」
ジュナスとマークが、司令室から駆け出して行く。
「我々は後方で補佐する。ギルバート!聞いているか!」
「あいよ!」
ルナがギルバートに呼びかけ、彼が応えた。
「G04の準備は!」
「万全だ。いつでも行ける」
「そのままの状態を維持しておけ!」
少しの沈黙が訪れる。
そこで、2人の女性が、司令室から抜け出した。

場所は、パイロットルームへと移る。
そこでは、ジュナス・リアムとマーク・ギルダーの二人が、パイロットスーツへと着替えていた。
「十中八九、ヅダは途中で空中分解する」
着替えながら、マークはそう断言した。
「しかし、いつのタイミングで壊れるか分からない。そこは賭けだな」
「…何でそんな機体使ってるんです?」
ジュナスは素朴な疑問を持った。
「さっきも誰かが言ってたろう?訓練生が調子に乗って、機体に無茶させない為さ」
「…」
「無茶させると壊れると分かっている機体を、誰が無碍に扱う?ま、そういうことさ」
「…」
「ジュナス」
マークが、彼に呼びかける。
「…何ですか」
「お前と始めて会った時、俺が何を思ったか、教えてやろう」
「…はい」
「旨そうな名前だな」
「はい?」
「熟した茄子。略して、ジュナス」
「は…?」
「肩の力は抜けたか?」
ジュナスは、そこでほんの少しだけ、笑ってしまった。
「面白いですね。マークさんて」
「そうか?至って普通のつもりなんだがな」
そこで二人は着替え終わる。
「さぁて、こんな悪夢も、そろそろ幕引きと行こうじゃないか」
「はい…!」
二人は、カタパルトデッキへと向かった。