第三十四回【赤の他人!? 五代目アシスタント登場!!】
助手:カル・クロサワ
料理:回鍋肉(ホイコーロー)
〜収録前日〜
リコル「えっと、あなたがジュナスさんの次のアシスタント役になるっていう…
カルさん、ですか?」
カル「そうだよ。それで、君は…?」
リコル「はじめまして! リコル・チュアートと申しますぅ!
あの番組の前々々アシスタントでしたぁ!」
カル「へぇ…じゃあ先輩ってことになるのかな。」
リコル「そうなっちゃいますねぇ、えへへ…
ところで、ジュナスさんからあの番組の事はどれくらい聞いてますかぁ?」
カル「そうだなぁ…「料理番組にしてはあんまり料理しない」ってくらいしか聞いてないけど。」
リコル「そんな認識じゃダメダメですねぇ。 「ブラッド先生のお料理教室」を甘く見てます!」
カル「そ、そうかな…」
リコル「そうですよ、しっかり事前にちゃんとした認識をしておかないと!
だいたい、アシスタント役というのは
番組の責任者のブラッドさんに気に入られないと、全っ然お話にならないんですよ?」
カル「そうなんだ…
その…ブラッドさんだっけ? どういう人なんだろう?」
リコル「ん〜、そうですねぇ…
まぁちょっと誤解されやすい所はありますけど、優しいいい人ですよ?」
カル「優しい人?」
リコル「はい! 今のカメラマン役のドクさんも、とっても楽しい人ですぅ!
ともかく、あの人に気に入られるにはとりあえず料理が上手ければ上手いほどみたいですぅ!
前の前のアシスタントのパメラちゃんは、その手ですっごく気に入られてましたからねぇ。」
カル「パメラが、あの番組のアシスタントだったの?」
リコル「あれれ、知らなかったんですかぁ? そうなんですぅ!
とにかく気に入られたかったら、事前にある程度のお料理の練習は欠かせません!
何事も最初の印象が大事ですから!」
カル「…でも、料理の練習なんて調理室にいないとできないものだよね?
調理室は今もあの、ブラッドさんって人がいて練習なんかできないと思うんだけど…」
リコル「そこはご心配なく! この装置をご覧下さい!」
カル「装置? …何、これ?」
リコル「よくぞ聞いてくださいました!
この装置は対ブラッドさん用に開発された、お料理練習用シミュレーターですぅ!」
カル「し、シミュレーター!? シミュレーターって、戦闘用以外にもあるの!?」
リコル「昨日完成したばかりの試作品ですぅ!
機械本体はライルさんとミンミちゃんが、機械のプログラム作成はパメラちゃんがやってくれましたぁ!」
カル「へぇ、パメラが…」
リコル「…これさえあれば、調理室にわざわざ行かなくてもお料理の練習ができちゃうってわけですぅ!
ど〜です! 凄いでしょ?」
カル「確かに凄いけど…」
リコル「ちゃんと伝えましたからね、これでしっかり練習してくださいよ?」
カル「うん、わかったよ…」
リコル「あと最後にもう一つ! 最初のアシスタントの回では、アシスタントに選ばれた事に
対する感謝の気持ちを、ちゃんと表すようにしてくださいね!
いいですね? ホントは感謝なんてしてなくてもですよ?」
カル「それはわかったけど……この装置、やたらと重いんだけど…」
リコル「重いですよ〜。デニスさんとギルバートさんの二人に運んでもらったくらいですから。」
カル「ちょっと、部屋まで運ぶの手伝ってくれないかな…?」
リコル「それじゃ、私はこの辺で〜」
カル「て、手伝ってはくれないんだ…」
〜収録当日、調理室〜
ブラッド「……悪い子の諸君! 早起きは三文の得というが…
…今の金に換算すると60円程度だそうだ!」
ドク「寝てた方がマシだなぁぁぁ!!」
ブラッド「…しかし! それを一年続けると21900円だ…」
ドク「うぁぁぁッ! けっこぉぉたけぇぇぇ!!」
ブラッド「ククク…継続は力なり、という事だな……
それはこの番組にも言える事だ! 気づけばそろそろ二年目に突入しようとしている……クククク!!
だがまだ終わらんぞ! ……さぁ、料理教室だッ!
艦内の料理好きのゴミども、せいぜい喜ぶがいい…」
ドク「ヒャアーハッハァー!! 食うぅ食うぅぅぅ!!
食って食ってぇ、食いまくるぅぅぅぅ!!」
ブラッド「食欲先行のカメラマンには黙っていてもらうとしてだ…
……その前に一つ、キサマらに知らせておかねばならん事がある…
アシスタントのジュナスだが……ヤツはこの番組を去ったッ!!」
ドク「オマエまたにげられたのかよぉぉぉ!!
しょぉぉがねぇぇなぁぁぁ!!」
ブラッド「……フン、逃げられた、という言い方には少し語弊があるな。」
ドク「どぉぉこがぁぁぁぁ!?」
ブラッド「フン……所詮、流れない川は腐るというもの……
つまり、ただでさえレギュラー、及び半レギュラーと言える人物が固定化されてきているこの番組…
……せめてアシスタント辺りは定期的に変えねば、番組のマンネリ化は避けられん!
これも起こるべくして起こった人事というわけだ……」
ドク「なんかよくわかんねぇぇけどぉぉ!! ジュナスがいなくなっちまったぁぁぁ!!
さみしぃぃぃよぉぉぉ!!」
ブラッド「…別に我が部隊から消えてなくなったわけではないのだがな。まぁいい…
そのような事よりも……問題は次のアシスタントが誰か、という点だ。
ワタシ自身もまだ聞かされていないのだがな……」
ドク「あたらしぃぃぃの来んのかぁぁぁぁッ!?
そりゃ楽しみだぁぁぁ!! 誰だろぉぉぉなぁぁぁッ!」
ブラッド「フン、例によって今度の新アシスタントも前アシスタントからの紹介だ…
…そして初回は、これもまた例によってアシ役と助手役を兼任してもらうわけだが…
さて。そろそろ時間だがな…」
ドク「迷ってんのかもしんねぇぇぞぉぉぉ!!」
ブラッド「……有り得ん話では無いな。ジョバンニの例もあったことだしな…
ドク、少し辺りを巡回して来い!」
ドク「まっかせぇぇなさぁぁい!!」
〜数分後〜
ブラッド「帰ってこぬな…
……まさか、ドク自身が迷ったのでは…」
プシュー(ドアの開く音)
カル「遅れました、申し訳ありません!!
道に迷ってしまって…」
ブラッド「……何者だキサマ、民間人か!?」
カル「ち、違いますよ!」
〜さらに中略〜
ドク「ひゃぁぁぁッ!! 遅れちまったぁ道に迷っちまってぇぇぇぇ!!
……あぁぁぁ!? コイツ誰だぁぁぁぁ!?」
カル「しょ、紹介が遅れました! ジュナスからの紹介で
今日からこの艦内放送撮影隊に配属されました、カル・クロサワと申します!! はじめまして!!」
ドク「カルぅぅぅ!? かるくろさわかぁぁぁ!?
どっかで聞いた事あるような気がぁぁ、するかもしんないかもぉぉぉ!!」
ブラッド「……いつかのクイズ大会の時に名は聞いたな…
…しかし、こんな顔だったというのか。クロサワというのは…
ワタシは名前から……もっと、グレッグやギルバートのような無骨な男を想像していたのだがな…」
カル「す、すみません、期待に添えない顔で…」
ブラッド「……謝られても困るがな。ともかくキサマが新アシスタントというわけか…
…全く、またも波長が合いそうもないゴミをよこしおって…」
カル「ご、ゴミ…!?」
ブラッド「……ワタシの口癖について聞いてはいなかったのか? 面倒な…
一々気にする必要はない、クロサワとやら…」
カル「はぁ…(とにかく感謝の気持ちだな…)
と、とにかく栄えある艦内放送番組のアシスタントに選んで頂けるなんて、夢のようです!
一生懸命頑張ります!」
ブラッド「……キサマ、さてはこの番組の事をよく知らんな…
まぁいい、知らん方がいい事もある……」
ドク「ハラ減ったぁぁぁ!! さっさとりょぉぉりしちまおぉぉぉぜぇぇぇ!!」
ブラッド「フン、そうするか……
…クロサワ、キサマには今回は番組のアシスタントと……同時に調理の助手役を兼任してもらうぞ?」
カル「はい! 頑張ります!」
『回鍋肉(ホイコーロー)』材料
・キャベツ
・豚バラ肉
・豆板醤
・甜麺醤
・酒
・砂糖
・醤油
・酢
・サラダ油
カル「材料は、こうやって表記するんですか?」
ブラッド「クククク、その通り……
……時にクロサワ、我々は互いにゲーム内での共演はしていない…
…そしてそもそも面識が無い、つまり互いに互いがどういう人間かすら知らんわけだ。」
カル「そうですね… で、でもいくらかここの人達から、皆さんがどんな人なのかは聞いています!」
ブラッド「ほう…どのように聞いていた? 我々について……」
ドク「気になぁぁるぅぅぅ!!」
カル「は、はい! ブラッドさんは「優しい人」で、ドクさんは「楽しい人」だと…」
ブラッド「……何だその評価はッ!? 全く見当違いも甚だしいな……
…いいか、クロサワよ……」
カル「は、はい…」
ブラッド「ワタシの顔と…ドクの顔をよく見てみるがいい!
これが……優しい人間の顔に見えるかね?」
カル「あ、あまり…
正直、聞いていたイメージと違っていて驚いています…」
ブラッド「クククク、それでいい……我々は「悪」だ! この部隊きってのな……
……しかし、誰だこのワタシに対して「優しい」などという見当違いな評価を下したゴミは…
…まさかジュナスではあるまいな?」
カル「いえ、ブラッドさん達についてはジュナスじゃなくて、別の人から聞きました。
ピンク色の服を着た元気な女の子から…パメラの先輩だって言ってましたけど」
ブラッド「……成る程、ヤツか…
…まぁいい、その評価は間違いだったとすぐわかる…」
カル「そ、そうですか…
(それにしても怖い顔だな…こんな人達がいたんだ…)」
ドク「うぉぉぉぉいッ!! そろそろメシつくろぉぉぉぜぇぇぇ!!」
ブラッド「フン、そうするか……
…さぁ、どう料理して欲しい!?」
カル(よし、練習の成果を見せてやるぞ… やってみせる!)
ブラッド「クククク、まずは下準備だ! 何事もな……
まずは豚バラ肉は5センチ幅程度にカットしろ。
そしてキャベツは大雑把でいい…ちぎりつつ冷水に放てッ!」
カル「え? 何で冷たい水の中に…」
ブラッド「…そんなこともわからんか、ゴミが……」
カル「す、すみません…」
ブラッド「一々謝らんでいい……
いいか、キャベツは冷蔵庫などで保存をするとどうしても萎びてしまう…
…そこで、元の食感を取り戻させる為のこの行程なのだッ!
冷水に「放つ」事で元のパリッとした食感が復活する…」
カル「なるほど! それで冷水に…」
ブラッド「感心してる暇があったら手を動かすんだな…」
カル「は、はい!」
ドク「おぉいブラッドぉぉ! ちょっと厳しすぎじゃねぇぇ!?」
ブラッド「フン、何事も最初のしつけが肝心なのだ……」
カル「……(優しい人だって聞いてたけど…なんか、シャノンさんを男にしたみたいな人だな…)
はい、できました!」
ブラッド「フン、水気を切るのを忘れるなよ…
次は甜麺醤、酒、砂糖、醤油、酢を混ぜ合わせて、合わせ調味料を作っておけ…」
カル「え、分量は?」
ブラッド「目分量だ……クククク! 感覚のみである程度のものが作れなくては、所詮三流よ…」
カル「そうですか…じゃあ、やってみます!
(多すぎたりしたら、怒るんだろうな…
頼む、この量で合っていてくれ!)」
ブラッド「…それは入れすぎだッ! しっかりせんか!!」
カル「(やっぱり…)
ご、ごめんなさい…」
ブラッド「フン…まぁいい、調整の利く範囲内だ…
さぁ、まだ下準備だぞ? 次は耐熱ボウルにキャベツを入れ…
…ラップをふんわりかけて、電子レンジで1分30秒ほど加熱だ。
ふんわり……だぞ? 間違えるな…」
カル「はぁ…こんな感じですか?」
ブラッド「違うな……もっと優しくだ!」
カル「は、はい!
(クッ、練習ではうまくいったのに…)」
ブラッド「……今のうちに言っておく、暖め終われば水を切れ…」
〜中略〜
ブラッド「……クククク、ここからが本題だッ! せいぜい気を引き締めてかかるのだな…」
カル「はい!」
ブラッド「…熱したフライパンにサラダ油をひき、そこに豚バラ肉を入れ痛め…ではなく炒め
色がいい具合に変われば、今度は残りの酒、豆板醤を加えさらに炒め続ける……
…その後キャベツを加えさらに炒め合わせ…合わせ調味料を加え、全体に絡まれば火を止め完成だ…
………全て中火だ! さぁ、やってみるがいい!!」
カル「…やってみせます!
(中火で具材を炒めるこのやり方…シミュレーションと同じだ! やってやるッ…)」
〜中略〜
ブラッド「……ほう、急に動きが良くなったな…」
ドク「リミッタァァァでも解除したのかぁぁぁ!?」
カル「いえ、そういうわけでは…」
ブラッド「…手際は悪くないな。どうやら素質はあるようだ…
……炒め終われば皿上に配置すれば完成だ…」
カル「はい! それじゃ、やります!」
ドク「やっちまぇぇぇハラ減ったぁぁぁぁ!!」
カル「……これで完成ですね!?」
ブラッド「そうだが……しかしクロサワ。
何かに気が付かんかね?」
カル「…え?」
ブラッド「…よく見ろ、皿への配置の状況を…
今回は三人分調理したわけだ。
…そして完成した回鍋肉は三つの皿に分けたわけだが…
……具のバランスが悪すぎるぞ。ある皿は肉が多すぎ、とある皿にはキャベツばかりと……」
カル「あ…!」
ドク「ハーッハッハ! この肉いっぱいのヤツはオレのなぁぁぁ!!」
ブラッド「いいだろう……
…クククク、クロサワ。キサマはそのキャベツだらけの皿のものを喰うがいい。」
カル「は、はい…
(最後の最後でこんなヘマをするなんて…
こんなはずじゃなかったのに…)」
ドク「ひゃぁぁぁうめぇぇぇぇ!!」
ブラッド「ええいゴミが、何故いただきますと言えんのだ!?
だが、まぁ…味は悪くない…悪くはないぞ、クロサワ…」
カル「はぁ…」
ブラッド「まぁ……間違いは誰にでもある。もっと酷い助手もいくらでもいた…
あまり気にはせず次の糧としろ、これは命令だ…」
カル「は、はい!
(…もしかして、こういう所があの子の言ってた「優しい」ところか…?)」
ブラッド「ともかく……男三人の食事風景など放送していても何にもならんな。
クロサワ、締めておけ……」
カル「はい! そ、それでは、次回もお楽しみに!」
ブラッド「……違う、「今回はこの辺で」だッ! 二度と間違えるな、ゴミが…」
カル「す、すいません! では今回はこの辺で!」