またまた番外編【無理難題!? ブラッド先生の恋愛指南!?】
〜調理室〜
ブラッド「……フン、Gジェネ「ワールド」か…
魂、戦と続いて今度は「世界」とはな。大きくでたものだ…」
ラ「そ、そうですね…」
ブラッド「ククク…次回作こそは、このワタシの戦線復帰を望む声も多いところだろうが……
……まぁ、現実的に考えれば…ドク、並びに悪役枠は次も存続できるのか…
そこが問題だな……」
ラ「やはりと言うか、その心配はあるんですね。」
ブラッド「まぁな… 次回作で悪役枠が存続できなかった場合、残った連中の中で
悪役枠の後継者を探さねばならん…
……そもそもだ。 最近の作品では我々オリジナルキャラクターだけではなく……原作登場キャラまでも
悪役に関して言えば、扱いは悪くなっている!
宇宙世紀ではギレン・ザビを筆頭に…パイロットではヤザンやラカン等、それこそそのシリーズを
代表する悪役の多くがスカウト不可……
…アナザーやニュー・ジェネレーションに関しても、ウルベやアズラエル等
多くの悪役キャラが「スカウト不可」の憂き目に遭っている……
…つまり、悪役枠は日々…扱いが悪くなっているということだ!
非常に良くない傾向だ…… このままではGジェネは、悪役好きのユーザーにとっては
全く楽しめないゲームになってしまう恐れがあるぞ……」
ラ「(興味ないなーその話題は…)
……それはともかく、今日はどうして私を呼び出したんですか?
…大体予想はつきますけどね、また何か嫌な仕事を押し付ける気でしょ!
もうその手には乗りませんからね!」
ブラッド「……フン、まぁ落ち着け…
今回はな、前回に続き…再びここ調理室にて呼び出しを受けたのだ。匿名でな…
何故かドクやジュナスには来ないで欲しいという話だったのでな、代わりにキサマを呼びつけたというわけだ…」
ラ「…なんでそこで私なんですか?」
ブラッド「……全く、今回ばかりはワタシも予想がつかんからな…
ワタシの暗殺を企む輩からの呼び出しかもしれん、用心にこしたことは無い…
…ククク、いざという時…盾に使えるゴミがいた方がいいからな!」
ラ「た、盾って…あなたって人は、私の事を何だと思って」
プシュー(ドアの開く音)
パメラ「こ、こんにちは…」
ラ「…あれ、パメラちゃんじゃない。どうしたの?」
ブラッド「……今、人を待っているのでな。料理をしたいというのなら後にしろ…」
パメラ「い、いえ… 実は、匿名でブラッドさんを呼び出したのは…私なんです。」
ラ「パメラちゃんだったの!?」
ブラッド「フン……何故、このような事を…?
…キサマのことだ、前回のような下らん理由での呼び出しでは無いだろうがな。」
パメラ「少し事情がありまして…
…でも、何故先輩が?」
ラ「…私も呼ばれたのよ。ブラッドさんに…
もしかして、私はいない方がいい?」
パメラ「い、いえ、そんなことは…」
プシュー(ドアを閉める音)
パメラ「他には誰も…聞いていませんよね?」
ラ「な、何? そんなに重要な話なの!?」
ブラッド「さては……今回こそは、上の者がパメラを通じて…ワタシに特殊任務を伝えようというのだな?
部隊内の他の者には内密に…」
パメラ「いえ、そんな大それた事では…」
ブラッド「またも違ったか……では、まさか……バイスに何かされたのかッ!?」
パメラ「いえ、そんなこともありませんでした…」
ブラッド「そうか……では何だ、用件を言え…」
パメラ「…まず、これから私が聞くことを…
他の人には、他言しないと…約束してもらえますか…?」
ブラッド「フン、他ならぬパメラの頼みだ……約束してやらんこともないぞ?
深海での恩もあるしな…安心しろ、そのくらいの義理は果たしてやる……
……ラ、キサマもわかっているな?」
ラ「…わかってますよ。パメラちゃん、安心して。」
パメラ「あ、ありがとうございます!」
ブラッド「……それで、用件は何だ…?」
パメラ「は、はい!
できればでよろしいのですが… 私の次にアシスタントになった、ジュナスさんの情報を
教えていただきたいのですが…」
ブラッド「……ジュナスの情報、だと?」
パメラ「どんな小さな情報でも構いません…ジュナスさんと、アシスタントとして接する中で
何かわかったことがあれば、教えていただきたく…」
ブラッド「具体的には、何が知りたい…」
パメラ「はい、えっと…例えば好きな食べ物とか、好きな、女性のタイプとか…」
ブラッド「何故そんなことを知りたがる…
そもそも、この程度の用件ならば…そこまでまわりの耳を気にするような事でもなかろう……」
ラ「…もしかして、パメラちゃんって…ジュナス君が好きなの?」
パメラ「…え!? いえ、そんなわけでは…」
ブラッド「……正直に言え。そうではないのならば、何故そのような事を聞く…?」
パメラ「あ、あの…その……ぜ、ゼノン艦長から…」
ブラッド「…キサマは嘘が下手だな。パメラよ…
……ゼノンはな、この部隊の構成員の事など全て知り尽くしている。
ジュナスの情報など、集める必要は全く無い…」
パメラ「え…えっと…」
ラ「へぇ…意外。ああいう子が好みなんだ。」
ブラッド「ならば……そうようなまだるっこしい真似はするな。情報集めなど…」
パメラ「でも…データがないと、とにかく不安で…」
ブラッド「……否定せん所を見ると…図星なようだな?」
パメラ「………はい。
ほ、他の人には…絶対に言わないで下さい! お願いですから…」
ラ「わかってるって、絶対誰にも言わないから…」
ブラッド「しかし…これまで一年以上もの間、一切恋愛要素を排してきたこのSSにも…
…ついに恋愛要素の波が来たか…
その上、よりによって相手がジュナスとはな…… 競争率が高いな…」
ラ「そ、そうですね…」
パメラ「(よりによって、ブラッドさん達に知られちゃうなんて…)
わ、私…少しでも、ジュナスさんのことをもっと知りたかっただけなんです…
私はただ…」
ブラッド「全く、成り行きとはいえ……とんでもない事を知ってしまったな…」
パメラ「………」
ブラッド「…今にして考えてみれば……キサマがジュナスをアシスタントに推薦したのも
ワタシから、ヤツの情報を聞き出すための…計略だったのかね?」
パメラ「い、いえ、そんな意図は…」
ブラッド「……………
………まぁ、ともかくだ…
…いつまでも一人で想い続けていたとて…ただ辛いだけではないのかね?」
ラ(なんかこの人、らしくないこと言い出したし…)
ブラッド「…まずは行動を起こすことだ。キサマが得意な菓子でも持って、想いとやらを伝えてみるがいい…」
パメラ「で、でも…そんなことをして、もし断られてしまったら…
これまでみたいな付き合い方が…できなくなっちゃうし…」
ラ「あぁ、それはあるよね…」
ブラッド「ええい面倒な……
…いいか、パメラよ…所詮、男など単純なものだ。
戦闘に次ぐ戦闘で疲弊しきったところに……笑顔で美味い料理でも差し出してみろ!
…ククク、確実におとせるぞ!」
ラ(そんな単純なものかなぁ…)
パメラ「でも…」
ブラッド「……ここだけの、ここだけの話だがな…
ワタシもかつて、若かりし頃にな……そのパターンで、ある女に惚れてしまったことがある。
……このワタシですらおちたのだぞ? そのくらい確実な手法なのだ…」
パメラ「……そこまでの、確実性が…」
ラ「えっと…誰ですか? その女性って…」
ブラッド「フン、この軍に入る以前の事だ…… ワタシとて、そのような時代はあったという事だな…」
ラ「と、とても意外です…
ブラッドさんにそんな感情があった時期があったなんて…」
ブラッド「人を機械か何かのように言ってくれるな……
…まぁ、褒め言葉として受け取らせてもらうがな!」
ラ「はいはい…」
パメラ「でも…ごめんなさい、やっぱりやめておきます。告白だなんて…
私なんかじゃ、ジュナスさんにはとても釣り合いません。遠くから、憧れているだけでいいんです…」
ブラッド「何だそれは、まだるっこしい……
ええい……恋愛に関してはこうも奥手だったのか、パメラは…」
ラ「そうだったんですね…
どうしましょう、リコルちゃんも呼んだ方がいいんじゃないでしょうか?」
ブラッド「……やめておけ、話がややこしくなるだけだ…
あのゴミなどの耳に入りでもしたら…噂好きのリコルのことだ。ヤツ自身も意識せんうちに…
…部隊の誰かに情報を洩らしてしまうかもしれんぞ?
ワタシが悪ではないなどという噂を流した時のようにな…
それこそ、最悪の事態だ…それだけは避けねばならん……」
ラ「流石にそんなことはしないと思いますけど…
…でも、ブラッドさんがそういう気の回し方するのは珍しいですね。」
ブラッド「フン……これがキサマやリコルだったら、ワタシとてこんな真似がせんがな…」
ラ「そうでしょうね…
では何でこんな事を? 深海での恩、というものですか?」
ブラッド「それもあるが…
…パメラはな、この年にして、キサマらと違って料理の腕がある… こと菓子作りに関してはワタシを上回る程だ…
それによく気の付く娘だ。 ……いずれは、いずれはだがな…
……この隊の調理担当の座を譲ってやってもいいとすら考えている!」
ラ「そ、そこまでですか!?
ではいずれあの番組も「パメラ・スミス先生のお料理教室」に…」
ブラッド「……我が番組より、数字はとれそうではあるな……」
パメラ(別にそんなことは望んでないんだけど…)
ブラッド「…そんなことはいい、ともかくパメラには……将来がある!
……その人材をここで傷つけ、人生を歪ませるわけにはいかんだろう…」
ラ「歪ませるって、何もそこまで…
……でも、確かジュナス君って…」
ブラッド「…あえて言うな、ゴミが…… わかっている…」
パメラ「…誰か、好きな人がいるんですか!?」
ラ「し、知らなかったの? 周知の事実だと思ってたけど…」
パメラ「そ、そうだったんですか…」
ブラッド「全く…知識が有るのか無いのかわからんな、キサマも…
……ともかく、データからだけではわからんこともあるということだ……」
パメラ「好きな人が、いたのですか…
それじゃ、私なんかが邪魔しちゃ…」
ブラッド「……いかんな、キサマほどの者がそんな考え方では…
…何を迷うことがある奪い取れ! 今は悪魔が微笑む時代なのだ!」
パメラ「そんな、奪い取るだなんて…」
ラ「ブラッドさん、パメラちゃんを悪の道に引きずり込むのは…」
ブラッド「キサマは黙っていろ……
……パメラよ、確かにキサマはまだ、あまりに若過ぎるというハンデはある… だが相手も同様だ!
相手がマークやバイス等のような男なら倫理的に問題があるが……この場合、特に問題もない!
違うかね…?」
パメラ「はぁ…」
ブラッド「ジュナスのような年齢の男は、年上の女に惹かれやすい傾向はある……その点での不利は否めまい…
…だがキサマの場合、ラなどと違って…セールスポイントが数多くある!
料理もできる、周囲に気も配れる、何より器量もいい……自信を持てッ!」
ラ(なんで今、私がこきおろされたんだろ…)
パメラ「そんなことはありません、私なんか…」
ブラッド「ええい、だから自信を持てと……」
ラ「…大体パメラちゃんは、何でジュナス君を好きになったの?」
ブラッド「そうだ……ヤツはワタシの見立てでは、ドクと並ぶほどの電波なのだがな…」
パメラ「…ジュナスさんは、そんな人じゃありません!!」
ブラッド「…ええい、面倒な…恋は盲目とはよく言うが…
……では、ラが聞いたように…キサマがヤツに惚れたきっかけでも言ってみろ。
何か足がかりになるかもしれんぞ……」
パメラ「え…好きになった、きっかけ…ですか?」
ブラッド「そうだ、きっかけだ…
それを知らんことには、どうしてやることもできん…」
パメラ「は、はい…
好きになったきっかけ、ですが…正直、どのタイミングだったかは、私自身よくわかっていません…
でも、一番古いジュナスさんとの思い出は…
……私がこの部隊に、はじめて入隊した時期だったと思います。」
ラ「そんな前から!? パメラちゃんが配属されたのって、ネオからだよね?」
パメラ「はい、その時期のことです…」
ブラッド「……パメラ、続けろ…」
パメラ「…は、はい。
当時の私にとっては軍に入るなんて、はじめてのことだったので…
…あの頃の私は、正直…不安でいっぱいでした…」
ラ「大変だったんだね…」
パメラ「はい…
…そんな私に、ジュナスさんは…すごく優しくしてくれたんです!
以前からオペレーターもやっていたらしくて、本当に優しく、親身に通信設備や
まわりの方々がどういう方なのかを教えてくれて…」
ブラッド「………それで?」
パメラ「はい、それ以外にもジュナスさんは…人手不足で、私がパイロットとして出撃しなくちゃいけなかった最初の時も…
…守ってくれました。私の事を… でも私、怖がりだから…戦闘があまりに怖くて、戦闘終了後に…
恥ずかしい話なんですけど……泣いてしまったんです。」
ラ「その気持ち、すごくわかる…」
ブラッド「…害虫駆除の一件の時のようにか?」
パメラ「はい…
その時にジュナスさんは…もう大丈夫だよ、って…よく頑張ったね、って言って…私の頭を……」
ブラッド「………頭を?」
パメラ「…撫でてくれたんです。優しく…
そ、その時に…なんと言えばいいのでしょうか、胸が、キュンとしてしまって…」
ラ「…キュンって……しちゃったんだ…」
パメラ「キュンと……してしまいました…」
ブラッド「……噂に聞く「胸キュン」と呼ばれる現象か…」
パメラ「その時のジュナスさんの手が、暖かくて…優しくて……
その時だけではなくて、ジュナスさんといると、なんだか…とても暖かい気分になれるんです!」
ラ「…大丈夫? 顔真っ赤だよ?」
パメラ「え!?」
ラ「わかりやすいんだね、パメラちゃんって…
…私が初めて出撃させられた時には、そんなに優しくしてくれた人はいなかったけどなぁ…」
パメラ「そ、そうだったのですか?」
ラ「そうよ。ここにいるこの人に、「メソメソするなゴミが」って怒鳴られただけだったんだから…」
ブラッド「そんなこともあったかね……」
ラ「あの時フェイ先輩やフレイ先輩が慰めてくれなかったら確実にグレてましたよ、私…」
ブラッド「キサマの過去などどうだっていい……
……しかし…成る程、そういう事だったか…
おのれジュナスめ… 高い魅力値をもって、その魅力を振りかざし、純真無垢なるパメラを弄ぼうというのか…」
パメラ「そ、そんな意図はありません、ジュナスさんは優しい人です!」
ブラッド「いや、ヤツは悪だ! 女たらしのジゴロというものだ……
ええいジュナスめ、なんという悪だ……
………悪? そうか、ヤツを悪役枠の後継者にするという手も…」
ラ「議題ズレてますよ…心配してるのかしてないのかどっちなんですか?」
ブラッド「そうだったな……
……ともかく、そこまで入れ込んでいるというなら…
…やはり、何かしら行動を起こした方がいいのではないか?
恐らく現段階では…ジュナスはキサマの事など、ただの手のかかる妹分程度にしか思ってはおらんぞ……
いや、そう思っているかすら微妙なところだ… ワタシの見立てでは、ただの同僚の一人としか思われてはおらんだろう。
…キサマは、それでいいのかね?」
パメラ「………」
ラ「行動を起こせと言っても、そんな簡単なことではないんですよ?
パメラちゃんみたいな年頃の子には特に」
ブラッド「…黙っていろと言った筈だがな。」
ラ「…わかりましたよ。」
ブラッド「いいか、パメラよ…… ここだけの話だ。
ジュナスはな…ウォン程極端では無いが、チョコレートが好きな傾向がある。」
パメラ「そ…そうなんですか!?」
ブラッド「そうだ…… キサマとて、チョコ料理は得意だっただろう? ワタシ以上にな…
キサマ渾身のチョコ菓子を…戦闘終了後、疲れきったジュナスに……笑顔で差し出してみろ。
それでおとせる……と、断言はせんが……揺らぎはすると思うぞ?」
パメラ「………あ、ありがとうございます!!」
ラ「ブラッドさん、無責任にそんな事を言ってしまっていいんですか?」
ブラッド「フン…… 無責任かもしれんがな、これがワタシに言える精一杯だ……
そもそも、こんな事は専門外なのだからな……」
パメラ「い、いえ…とても参考になりました!
…私も、ブラッドさんと先輩と話して、決心がつきました!
いつまでも、うじうじと悩んでるだけじゃ…結局、前には進めないんですよね…
明日…ブラッドさんが言った方式で、想いを伝えてみたいと思います!」
ブラッド「明日…だと?」
ラ「それは急ぎすぎじゃないかな…?」
パメラ「でも、そうやって問題を明日へ明日へと引き伸ばしてしまうと…
…またこれまでみたいに、自分から動けなくなってしまうような気がします…
……私、決めました! 明日、絶対に想いを伝えます!!
どうなるかは…わからないけど……」
ラ「…本当にいいの?」
ブラッド「……最後の決断は、本人が下すものだ。我々がとやかく言う事では無い…」
パメラ「では…さっそく、調理を開始したいのですが…」
ブラッド「……わかった、今日一日、調理室を貸そう…」
パメラ「あ…ありがとうございます!
本当に何から何まで……今日ブラッドさんと話せて、本当に良かったと思います!」
ブラッド「そうかそうか…では、せいぜい頑張れよ…」
パメラ「…はい!」
〜調理室前、廊下〜
ラ「…本当に今日のブラッドさん、どうかしちゃったんですか?
頭でも打ったんですか…?」
ブラッド「何だその言いようは…
………ガラではないが…たまにはいいだろう。このような事があってもな…
この一件は一切他言無用だぞ? パメラの事についても、ワタシの事についてもだ……」
ラ「わ、わかってますよ。
でも、あのパメラちゃんが恋なんて…意外でしたね。」
ブラッド「全く…… しかもよりによってジュナスなどに…」
ラ「でも、うまくいくといいですよね。」
ブラッド「うまくいくといい、か……
仮にうまく事が運んだとしても……あのパメラが、電波少年ジュナスと付き合う事となってしまうのか……
……それはそれで口惜しい話だな。パメラ程の娘が…ジュナスごときの嫁になるなど…」
ラ「よ、嫁って… そんな事まで考えてるんですか!?
しかもジュナス君をそこまで言っちゃって…
じゃあ、誰ならパメラちゃんとぴったりだと思うんですか? ブラッドさんは…」
ブラッド「フン…… 誰だろうな…」
ラ「…例えば、マークさんみたいな人とか」
ブラッド「バカな! そんな事は有り得ん! 有り得んのだ!」
ラ「何もそこまで…じゃあ誰ならいいんですか?」
ブラッド「……誰だろうな。ともかく、今思いついた我が軍の若い連中には…相応しい者は一人もおらんな…
条件を付けるとすれば、最低でも……頭脳明晰かつ容姿端麗、品と常識があり、料理洗濯何でもござれの
清潔感のある……優しく、かつスポーツ万能でもあり、浮気もせず、社会性もある
高収入かつ、驕り高ぶらない…心に闇の無い……その程度の条件は満たす、パメラと同年代の若者でなければな!」
ラ「そんな人実在しませんよ… 結局誰とくっついても嫌なんじゃないですか。
何だかブラッドさん、父親みたいな目線になってますよ。」
ブラッド「フン…… 家庭など欲しいと思ったことは、一度も無いがな…
……娘を持った父親というのは、こういう気分なのかもしれんな…」
ラ「貴方の目指す「悪」のイメージには全く合わないセリフですね…」
ブラッド「な…何だと!? ワタシとした事が…」
〜翌日〜
リコル「せんぱぁい、パメラちゃんの様子がおかしいんですぅ!」
ラ「おかしいって…どうおかしいの?」
リコル「はい、なんだかよくわからないんですけどね〜…
さっき戦闘終了したじゃないですかぁ。その時にどこかに行ったと思ったら
しばらくしたら、なんだか呆然として帰ってきて…
それからは、調理室にこもったまま、出てこないんですよぉ!
私とも話したくないって言うんですよ、ひどいですよね〜」
ラ「………」
リコル「何か知りませんかぁ?」
ラ「わ、わからないなぁ…」
リコル「そうですかぁ。心配ですねぇ…」
〜中略〜
ブラッド「……そうか、報告ご苦労だったな。」
ラ「報告くらいは義務かなと思って…
…それにしても…やっぱりダメだったみたいですね…」
ブラッド「…………」
ラ「こうなるって思ってたんですよ、最初から…
大体ジュナス君には…」
ブラッド「……ラよ、パメラの様子を見に行くぞ…」
ラ「…もうやめましょうよ。そっとしておいてあげた方が…」
ブラッド「ゴミが、パメラのような生真面目なタイプの人間はな…こと、挫折すると弱いものだ…
何か、変な気を起こしていなければいいがな…」
ラ「…変な気って、そんな!」
ブラッド「そうだ…… 万が一、パメラがショックでグレて…キリシマ嬢のような女になってしまったらどうする…?」
ラ「そうはならないと思いますけど、確かに心配ですね…」
〜調理室〜
ブラッド「何ィ…!? 言えなかった、だと…?」
パメラ「は、はい…」
ラ「それで、チョコはどうしたの?」
パメラ「そ、それはちゃんと渡しました…
ジュナスさんは……ありがとうと、言ってくれました。
そして、みんなで食べると…」
ラ「みんなで…ねぇ…」
ブラッド「……ええい、ジュナスめ…… いつもはああも人の心に敏感だというのに
何故このような事態になると、こうも鈍感なのだ…!
これだから主人公系キャラは好きになれん……」
パメラ「確かに、主人公と呼ばれる方は恋愛には鈍感な方が多いですね…」
ブラッド「…冷静に分析しとる場合か! キサマ……
いいのか、それで…」
パメラ「ダメなんです、私…いざジュナスさんを目の前にして、そういう話をしようとすると…あがってしまって…
やっぱり…怖いんです。告白することで、この先気まずくなってしまうのが……」
ブラッド「クッ…… また振り出しか…
あの数レスに及ぶ説得はなんだったのだ……」
パメラ「それに……私、私なりに、告白した場合に、ジュナスさんが私の気持ちを受け止めてくれる可能性を計算してみたんです!
今まで集めた、ジュナスさんの行動データ等を基準に…
それで計算してみたら、成功率12%と出て…」
ラ「そんなに低いの!? どんな計算法で出したのその数値…」
ブラッド「…だがGジェネ、特にスピリッツではその程度の命中率でも当たることはある。
試してみた方がいいのではないか?」
パメラ「…無理です! 現実世界ではリセットはきかないんですよ!?」
ブラッド「クッ…」
パメラ「…もういいんです。私は、今のままで…
遠くから、憧れているだけで…私は満足なんです…」
ブラッド「ええい、バカな…… キサマほどの者がそんな」
ラ「…もうそっとしておいてあげましょうよ。
そういう、恋の形だってあるんですから…」
ブラッド「キサマ…ラの分際で、恋愛について語ろうというのか…」
ラ「なんですか「ラの分際」って!?
大体あなただって魅力値たったの3しかないのに、パメラちゃんに恋愛のこと偉そうに語っちゃって…」
ブラッド「黙れ! 魅力値は関係ない!
…そもそもZEROの頃は4あったわ! つまり、マ・クベやカロッゾと同等の魅力値というわけで
それは悪役として必然的な…」
ラ「どーでもいいですよ! ホントに!」
ブラッド「フン! …まぁ、つまり……我々程度の人間が、パメラほどの魅力値と器量を持つ人間に
偉そうにアドバイスなどをするのが、そもそもの間違いだったのかもしれんな…」
ラ(魅力値なら私もパメラちゃんと同じくらいあるんだけどなー…)
パメラ「いえ、ブラッドさん達の意見は…本当に、参考になりました。
本当に有難く思っています…
でも、ジュナスさんには、好きな人がいるんですから… 私なんかが邪魔するわけには。」
ブラッド「しかしだな……」
パメラ「ジュナスさんはいつでも健気に…仲間の為、皆の為だって言って、無理をして戦っているんです。
…本当は誰よりも戦いなんて嫌いな、優しい人なのに…
だからジュナスさんは…ジュナスさんが本当に好きな人と、幸せにならないといけないんです。
そうじゃなきゃ、あまりに救われません…
だから…私は、これからはジュナスさんと、その好きな人が幸せになれるように…
…影ながら応援していきたいと思います。」
ブラッド「……どこまでも…報われん女だな、キサマは……
キサマがそれでいいというなら、これ以上特に何も言いはせんがな。
……最後に一言だけ言っておこう。ストーカーにはなるなよ…」
パメラ「……気をつけます。」
ブラッド「しかし……先日のミンミの件といい、結局は何も変化は無しか…
やはりワタシには、人に変革をもたらすことはできんということか……」
ブラッド「まぁ…ともかくだ。調理室にこもるのはやめてくれぬかな?
ここはワタシの場所だからな…」
ラ「別にブラッドさんの場所というわけではないと思いますけど…」
パメラ「申し訳ありません…でももう少しだけ、使わせてもらえませんか?
まだ、クッキー作りの途中なんです。」
ラ「クッキー作り? なんでこんな時に…」
パメラ「お菓子作りをしている間は…なんだか、とても気が休まるんです。
気が紛れるというか…」
ブラッド「わからんでもないがな……
…ついでに言っておくが、ワタシはキサマの為にこんなものまで用意していたのだぞ?」
パメラ「え…? なんでしょう?」
ブラッド「ネオ・ホンコンに伝わる、伝説の媚薬を配合したクッキーだ…」
ラ「び、媚薬…!?」
ブラッド「そうだ…… 薬はウォンのつてで手に入れたものだ。
これを喰ったゴミはその後、最初に見た者に惚れてしまうという…悪魔のクッキーだ。
これを使えば、誰とて虜にする事ができるのだがな……」
ラ「………」
パメラ「…せっかくですけど、私は遠慮しておきます。
そんなもので、ジュナスさんの気を引いたって…何の意味も無いから。」
ブラッド「そうか……残念だな。
ではこれはどうしたものかな… 処分に困るものを手に入れてしまったようだ…」
ラ「………」
ブラッド「……キサマにはやらんぞ?」
ラ「わ、わかってますよ!」
〜翌日、調理室〜
ブラッド「おい、女たらし……」
ジュナス「…それ、僕のことですか? なんでそんな呼ばれ方されなきゃ…」
ブラッド「いいから答えろ、ゴミが……ここに保管してあったクッキーを知らんか?
ブランドに売りつける事になったのだがな…」
ジュナス「…そこにあったクッキーなら、さっきドクさんが持っていっちゃいましたよ。
あれ、ブラッドさんのだったんですか?」
ブラッド「ドクが…持って行った……だと!?
いかん……まずい……非常にまずいぞ……」
ジュナス「そんなにまずいクッキーなんですか? なんでそんなものを…」
ブラッド「そうではない…… しかし、これはいかんぞ…」
プシュー(ドアの開く音)
ニードル「ブラッドォ! 助けてくれよォ!!」
ジュナス「あれ、ニードルさんどうしたんですか?」
ドク「うほぉぉぉぉッ!! ニィィィドル好きだぁぁぁぁ!!
付き合ってくれぇぇぇい!!」
ニードル「なんかドクが急に目覚めやがったんだよォ! 何とかしろよブラッドォ!!」
ブラッド「フン…あのクッキーを喰って、最初に見た相手は…どうやらニードルだったようだな。
被害は最小限に留められたようだ…」
ニードル「な、何言ってやがんだよッ!?」
ドク「ヒャアーハッハァー!! こころから愛してるぜぇぇぇ!!」
ニードル「うわッ! こっち来んじゃねぇよォ!」
ジュナス「ブラッドさん、これはどういう…」
ブラッド「クククク、よく見ておけジュナス…
新たなカップリング、誕生の瞬間だ……」
ニードル「なんだそりゃ!? 誰が得すんだよこの…」
ドク「逃がさぁぁぁん!!」
ニードル「来んなァァァ!!」
ブラッド「ククク…ワタシには人の変革は起こせなくとも…… 新たなカップリングを作り出すことはできたようだな!
……などという冗談はさておき、媚薬の効き目はどの程度まで持つものなのか…
まぁ、ともかく…こんなオチも悪くはなかろう?」
ジュナス「最悪ですよ…」