「ハゲさかヒゲさん」



むかしむかしあるところに、(欲望に)正直お嬢様ネリィ・オルソンさんがおりました。

ある日、ネリィさんがオリキャラ軍の仕事でMSに乗り出撃していた時のこと。
マウンテン・サイクル付近でドク・ダームが
「ここほれ、ここほれぇぇい!!
 ここほれわんわぁぁぁんん!!」
などと、一人で叫び声を上げている狂態を発見しました。

相手がネリィさんの好みだった場合はそのまま一からしつけなおしタイムですが
ドクなんかが好みであろうハズも無かったので
ネリィさんは愛機のスピーカーをonにしてドクに
「口を慎みなさい、下賎なお方!」
と手短に言いました。するとドクは
「うぅぅるせぇぇッ!! ここほれって言ってんだよぉぉぉッ!!
 ここほったら何か良い事があるよぉぉぉな気がぁぁぁ…するかもしんないかもぉぉぉッ!!
 オレの頭の中になんかピーンと来たんだよぉぉ!!」
と捲くし立てました。
あまりにもしつこいので、これはもしや本当に何かあるのでは、と考えたネリィさんは
至急戦艦に戻ると、今度はMF「ボルトガンダム」に乗って再び
ドクの待つマウンテンサイクルに現れました。
「もし、これで何も掘り出せなかった場合は…わかってますわね?」
「おぉぉよぉぉぉ!!」
ドクの言葉を聞くと、ネリィさんはボルトガンダムに「炸裂ガイアクラッシャー」を使わせ
マウンテンサイクルを一気に掘りました。
すると、ガイアクラッシャーでできた地割れの割れ目の中から、一機のMSを見つけ出しました。
「こ…これは…まさか、ホワイトドールではありませんこと!?」
「ひゃあぁぁぁッ!! たぁぁぁんえぇぇガンダムだぁぁぁ〜!!」
なんと、ドクが掘れと言った場所には、黒歴史終焉の機体、ターンエーガンダムが眠っていたのです。
「こんなものを掘り出せるなんて!
 この機体さえあれば何だってできますわ!
 …そう、これでワタシは戦場の女王!
 おーっほっほっほ!! 世界はワタシの手の中ですわ!」
「ヒャアーハッハァー!!」
二人の高笑いが、マウンテンサイクルに響きました。


あくる日。噂を聞きつけた悪の空気バンダナことニードルがドクにつっかかりました。
「おいテメェ! マウンテンサイクルでホワイトドールを掘り出したんだってなァ!?」
「そぉぉだぜぇぇぇ!! ヒャアーハッハァー!!」
「なら話ははえェ! オレにも何か掘り出してくれやッ!
 ヒャッヒャヒャヒャ、ネリィだけにいい思いさせんのはシャクってモンだからなァ!」

そして、二人は作業用機械「アッグ」に乗ってマウンテンサイクルに向かいました。
「ヒャッハハハーッ!
 ここ掘れここ掘れぇぇい!! 死ぬまで掘れぇぇぇい!!」
「ヒャッヒャヒャヒャ! いいぜェ、いいモンを掘り出させてくれよォ!」
そして二人はアッグのドリルで手当たり次第に地形が変形する勢いで発掘作業を開始しました。

しかし掘れども掘れども、出てくるMSはボルジャーノンやカプルのようなありきたりのものばかり。
ニードルのメガネにかなうようなMSは掘り出せませんでした。

「ハァ、ハァ…おいテメェどうなってやがんだよォ!?
 ターンXでもでてくんじゃねぇのかよォ!?」
「あれぇぇ、おかしぃぃぃなぁぁぁ!!
 まぁぁ今日はオレの頭の中になぁぁんもピーンと来なかったしぃぃぃ!!
 そりゃなんもでねぇぇぇよなぁぁぁぁッ!!
 こんな事もあるってぇぇぇ!! げぇぇんきだせよぉぉぉ!! …ぐおぉ!?」
その態度を見てキレたニードルが、持っていたスコップでドクを殴ったのでした。
「ざけやがってェ! オレをなめるからそうやって殴られんだぞォあぁん!?
 お、おいドク…テメェまさか…死んじまったんじゃねぇだろうなァ!?」
打ち所が悪いとこういうものか、という話ですね。
「散々ギャグキャラ補正で生き残ってきやがったのに、今更殴られただけで死ぬとか思わねぇよォ…」
すっかり恐ろしくなってしまったニードルはそのままアッグに乗り込み現場から逃走してしまったそうな。
恐ろしい話ですね。


ドクがオリキャラ軍から行方不明になってから、数日が経ったある日。
ネリィさんが、手に入れたターンエーガンダムでさっそく空中散歩を楽しんでいると
以前ドクが「ここほれわんわぁぁぁん!!」と叫んでいたマウンテンサイクルで、ドクの死体を発見しました。
ネリィさんはそこに降り、ドクの死を確認すると、言いました。
「なにがあったか存じませんが…
 ……ホワイトドールのお礼です。せめて私なりに手厚く葬ってさしあげます!」
そう言うと、ネリィさんはターンエーに乗り込んで、「月光蝶」を発動させ
ドクの死体を土くれへと還しました。
「土は全ての命の源と聞きますわ……
 …人は死後、自然に還るのが自然な姿なのです」
などと言うと、ネリィさんを乗せたターンエーガンダムは母艦へ帰っていきました。
恐ろしい話ですね。


それからさらに数日。
ドクが土に還った付近のマウンテンサイクルに、ある少女が現れました。
「これより農耕任務に突入するであります!
 ここの土は質が良さそうであります!」
彼女は最近整備作業の傍ら、部隊内の食事の為の農耕任務も兼任している
そばかすなんて気にしないわ、ハナペチャだって×3お気に入りを地で行く、ミンミ・スミスちゃんです。
ミンミはこのマウンテンサイクルで家庭菜園をはじめる事にしました。

そして数ヶ月が過ぎ、ミンミ農園も新芽で賑わってまいりました。
ミンミが菜園の手入れをしていると、ひとつおかしなものが、菜園に生えているのを発見しました。
「なんでありましょうかこれは!? スイカにしては色が変であります!
 そもそもスイカなど植えてないでありますが…」
などとミンミが言っていると、その肌色のスイカの付近からズボッ、っと音を立てて手が生えてきました。
「な、なななな、なんでありますかぁ!?」
ミンミが驚愕していると、そこからゾンビのように男が一人這い出してきて、叫びました。
「ふ…不死鳥のように蘇るこのオレさまぁぁぁッ!!」
そう。肌色のスイカは、ドクのハゲ頭だったのです。
一度は土くれと化したドクでしたが、その理論では説明しがたい生命力により、復活を遂げたのです。
地面から。
突如自分の菜園から生えてきたドクに驚愕しつつもミンミがドクに尋ねます。
「あ、貴方はドク殿!?
 なにゆえ農園から生えてきたのでありますか!?」
「オレにもわっかんねぇぇぇなぁぁぁッ!!
 でも生き返れて良かったぜぇぇ!! ヒャアーハッハァー!!」

世の中には、理屈では割り切れない事が起こるものなのですね。
枯れ地にハゲを、咲かせましょう。
枯れ地にハゲを、咲かせましょ〜う。

めでたしめでたし。

総括:書き手はきがくるっとる。