「シンデレイチェル」
むかしむかし、ある所にレイチェル・ランサムという少女がいました。
彼女には義理の叔母と義理の姉、性別不明のブランドとドク子がいました。
「ウフフフ…今日も美しいア・タ・シ☆
我ながら勝負服も似合ってるわァ〜ん♪」
「おばさまぁぁぁ!!
今日の舞踏会楽しみですわねぇぇえぇぇ!!
踊る、踊るぅぅぅ!! 死ぬまで踊るぅぅぅぅ!!」
「オホホホ! 今年こそ玉の輿に乗ってやるわよォ!
…レイチェル? ちゃんと掃除は済ませておくのよォ!」
「ヒャアーハッハァー!! そんじゃいぃくぞぉぉぉッ!」
「オーホッホッホ!! 首を洗って待ってなさい王子様ァ!!」
そして、二人はそれぞれ戦斗バイクの甲型、乙型に乗って、舞踏会の行われる予定の
キャリーベース城へ向かいました。
残されたレイチェルは一人、星空を眺めて夢見ました。
「王子さま…一回だけでも、あなたに会ってみたい…
そしてできるなら、一緒に踊りたい…私だって!」
その時、空から轟音を上げてMSが降りてきました。
ミノフスキークラフトのMSのマザーマシン「ペーネロペー」です。
降下してきたペーネロペーのコクピットから、髪を異様なまでに盛った少女が降りてきて言いました。
「……その願い、叶えてあげるわ…」
「え、あなたは…?」
「………私はシス・ミットヴィル。通りすがりの魔法少女…」
「魔法少女!?」
「………まずはあなたの着ている、ボロの服を美しいドレスに変えてあげる」
「本当に!? ありがとう…」
そして魔法少女シスが呪文を唱えると、レイチェルの着ていたボロの服は
エゥーゴのダサい黄色いパイロットスーツに変化しました。
「これが、美しいドレスなの…?
なんだかNEOの頃の不評だった服装にしか見えないけど…」
「間違えた………やり直す」
シスはもう一回呪文を唱えなおします。
すると、もっさいパイスーは今度は「月の阪神王子様」こと
ハリー・オード大尉愛用の、黄色と黒のストライプ模様の式典用スーツに変化しました。
ごていねいに、ハリー大尉愛用の赤いサングラスまでついています。
「ねぇ、私はこの格好で舞踏会に行くの…?」
「………久々だから、調子が悪い…」
シスが言い訳をはじめたその時です。
空から不思議な丸い悪魔「ハロ」が降りてきて
その中からピンク色の衣装を纏った少女が降りてきました。
登場人物が増えてきたので、ここからは唐突に人物の発言のカギカッコの左に
発言者の名前が出る「いつもの」仕様となりますがご了承下さい。
???「シスちゃん、苦戦しちゃってる?」
シス「………リコル?」
レイチェル「あなた、この魔法使いさんのお知り合い?」
リコル「そう! 私は魔法少女、まじかるリコルちゃんですぅ!
本日の調子は良好! さっそく私が、あなたの衣装を変化させちゃいます!」
レイチェル「あ、ありがとう…」
そしてリコルが元気に呪文を唱え終わると、レイチェルの激ダサパジャマは
なんと体の線丸見えのファイタースーツに変化しました。
レイチェル「ちょ、な、なんなのこれはぁ!?」
シス「………な、なんて格好を…///」
レイチェル本人よりもシスが照れている点は置いといて、レイチェルがリコルに聞きます。
レイチェル「ちょっと、私にこんな格好で舞踏会に行けって言うの!?」
リコル「あれれ、「武闘会」に一番相応しい服って、それじゃないんですかぁ?」
レイチェル「…そういうありがちなボケはいらないから!」
リコル「むぅ〜…」
流石にイライラしてきたレイチェルです。
そこに、空から謎の巨大兵器「サイコロガンダム」が降りてきて
その中から黒のマントを身に纏ったメガネ男が出てきて、言いました。
???「あははは…まだまだだね、君たちも!」
シス「………貴方は」
リコル「あ〜! 伝説の魔法使い、ライル・ロングボトムさん!!」
ライル「違うよ。ボクは伝説のスーパー魔法使い、ライル・ポッターさ!」
なんと、その男ライル・コーンズは有名な魔法使いのようです。
面食らうレイチェルにライルは言います。
ライル「フフフ…レイチェルちゃんだったかな?
今すぐその服を、君に相応しい服に変えてあげるからね…」
レイチェル「はぁ…」
そしてライルがブツブツと呪文を唱え終わると、レイチェルの着ていた服は
話題の「すーぱーふみな」さながらのメカ娘といった感じのメイド衣装に早変わりしました。
さしずめ「すーぱーれいちぇる」とでもいった所でしょうか。
レイチェル「あの…これがドレスなんですか?」
ライル「フフフフ…その服なら注目を独占できること間違いなし!」
魔法使いは全員が絡み辛いタイプのボケでした。
レイチェル「あなたたち、私を使って遊んでませんか…?」
ライル「いや、そんな事はないよ…」
ライルの言葉には説得力が1mmもありませんでした。
彼は他の二人とは違うベクトルの魔法使いのようです。
しかし伝説の非リア充魔法使いライルさんは、マニア受けならともかく
女子の好む服のファッションセンスなど、当然皆無だったので
レイチェルの服をパンピー達の鑑賞に耐えられるようなドレスに変えることはできませんでした。
レイチェルが呆れる中、三人の魔法使いは緊急会議を行います。
ライル「こんなハズは…これは非常にまずいよォ…」
リコル「ライルさん! ここは私たち三人が力を合わせて、合体魔法で服を変化させましょう!!」
シス「………それがいい」
ライル「そうだね…」
そしてチャレンジすること数時間後。
やっと魔法使い達はレイチェルの服を、ローラ・ローラが着ていたような美しいドレスへと
変化させることに成功しました。
シス「………やった!」
ライル「フフフフ…まぁ、ざっとこんなものさ!」
リコル「お疲れ様ですぅ! 変化終了ですぅ!!」
思わず、レイチェルそっちのけで喜びを露にする魔法使い達。
その光り輝く美しいドレスを見て、思わずレイチェルも感激します。
レイチェル「わぁ…ありがとう、魔法使いさんたち!」
ライル「いやいや、礼には及ばないよレイチェルちゃん…」
シス「………先に警告しておく」
リコル「その魔法は、夜十二時の鐘が鳴ると同時に解けちゃいますぅ!」
魔法使い達の説明を聞いて、レイチェルが彼女らにたずねます。
レイチェル「…魔法使いさんたち、お城の時計は見える?」
リコル「え? すっごくよく見えるよ!」
シス「………見える」
ライル「ボクのメガネは伊達じゃない、10000km先までお見通しさ!」
レイチェル「時計の針、今何時を指してる?」
シス「………夜の十一時五十九分」
シスの回答を聞いて、レイチェルが語調を強めて言います。
レイチェル「一分で、何をすればいいっていうの…?」
シス「……!?」
レイチェル「…ていうか、もう舞踏会終わるんだけど?」
その時、城の鐘が鳴り、レイチェルの着ていたドレスは元のボロ服に戻りました。
そして、バツの悪そうな顔で俯く三人の魔法使い。
シス「…………」
リコル「え〜っとぉ…」
ライル「嫌な…事件だったね…」
MP値的にも我慢強いレイチェルもついにキレました。
レイチェル「…あなたたち、魔法使いやめたら!?」
リコル「えぇ!?」
レイチェル「二度と、魔法使いだなんて名乗らないで」
シス「…………」
リコル「うぅ〜…」
ライル「いやぁ、ハハハハ…」
レイチェル「…っていうか本当に何しに来たのあなたたち?」
ライル「言葉責めされるのも悪くないなぁ…なんて…」
レイチェル「貴方は本当に今すぐ消えてください」
ライル「そこまでかい!? ハハハハ…」
レイチェル「怒る時は怒るんですよ! 私だって!」
朝までレイチェルの怒りは収まらなかったそうです。
ちなみに王子さま(木星帰りのNT閣下であるともっぱらの噂)は
戦斗バイクで城を襲撃してきたブランドらに拉致され
そのまま無理矢理結婚させられて、末永く共に暮らしたそうです。
めでたしめでたし。
総括:温厚な人でもキレる時はキレる